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【標本No.4】長寿の呪い

作者: 湯琉里羅
掲載日:2026/03/23


――永遠の命、ほしいですか?




我らエテルナにとって、時間は川の流れですらない。


それは、ただそこにある果てしない湖だ。


命の終わりを知らぬ私にとって、人間の百年など、瞬きをする間に消える残像に過ぎなかった。


だが、彼女――あのひび割れた声で笑う、儚い娘だけは違った。


彼女の心臓が刻む鼓動は、私の静止した時間の中で、あまりに激しく、あまりに脆く鳴り響いている。


一秒ごとに、彼女は確実に死へと向かって歩いている。


その残酷なまでの「速度」に、私は初めて、永遠という名の孤独を呪ったのだ。



彼女は何度でも私に同じことを聞いた。


はるか昔の、この国の話を。


私が嘘つきかも知れないだろう?と言っても、彼女は私の話したことをすべて信じた。


それどころか、学術記事を持ってきて「これは本当?」と聞いてきたこともあった。


今日も彼女はエテルナの基地にやってきた。


いつものように、たくさんの本と写真を持って。



彼女は嬉しそうに言った。


「昨日、焼肉を食べたの」と。さぞ美味しかったのだろう。


しかしそれよりも、写真に映る彼女の笑顔に私の目線は釘付けになっていた。


見ないふりをしていたその気持ちに気づいてしまった。その瞬間、人間の死というものを何度も見てきたからこそ、私はどうしようもない無力感に襲われた。



我々エテルナにとって、時は川の流れですらない。


私は、彼女と同じ感覚を共有することはできなかった。


このとき、はじめて後悔というもの噛み締めた気がする。



きっと、彼女もいままでと同じようにいなくなってしまうのだと、そう思っていた。



ある日彼女は、私にこう言った。


「私を殺して。あなたと一緒にいられないのなら、この心臓がひとつしかないのなら...いっそあなたが私の体を引き裂いて。」と。


私は首を振った。


「まだ早いよ。」と震える声で言った。


予想外の申し出だったのだ。



しかし数分後、私の手は赤く汚れ、瞳は濁り、醜い生物へと成れ果てた。



どうして、私は...。


私は長い人生の中で、二度目の後悔をした。



私が彼女に出会わなければ、彼女は今も生きていたのだろうか。



出会わないほうが、よかったのだろうか。



私は長い人生の中で、三度目の後悔をした。



時の流れが、川の流れのようだ。



彼女の鼓動が止まり、その温もりが冷え切っても、朝日が昇る。



鳥は歌い、世界は美しく回り続ける。



私は残された。



この胸を抉る痛みを抱えたまま、終わりのない時を、彼女のいない世界を、永遠に生き続ける罰として。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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