表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

朝起きたらおすすめ動画の紹介をする中の人になっていた

掲載日:2025/11/06

 あたしは死んだ。


『お餅を何個まで口の中に詰められるか』という企画動画を生配信している最中に、窒息死したのだ。


「はっ!?」

  

 意識を取り戻すと、真っ白な部屋にいた。

  

「よくぞ来た」

  

 杖をついた長い白ひげの、神様っぽい老人があたしの前に立っていた。


「あたし……死んだんじゃ……」

「ウム。視聴者に恥態を晒して死んだぞ」


 白い空間にパソコンが浮かんでた。

 そこにあたしの部屋が映ってる。

 画面の中に足が二本、天井を向いて立っていた。

 どうやらあたしは座椅子ごとひっくり返った格好で死んでいるようだ。


 フォロワーさんたちのコメントが高速で上から下へ流れている。

 速すぎて読めないが、どうやら心配してくれているようだ。


「コメに返信しなきゃ!」


 キーボードで「死んだンゴ、グエー」と入力しようとしたが、キーを叩いても何も入力されない。


 神様が言った。

「死者が現世の者と連絡を取ることは御法度とされておる」


「じゃ、あたしは傍観するしかできないの?」


「いや……おめでとう。おまえさん、この動画配信でフォロワー数が10万人を超えたんじゃ」


「やったぁ!」


「それを記念して、わしから素敵なプレゼントをおまえさんにやろう」


「わっ! 何、何? トロフィー? それとも現金?」


「動画サイトを閲覧しておったら『あなたへのおすすめ動画』が紹介されて来ることがあるじゃろ?」


「あるある」


「あれ、じつは、動画サイトに命を捧げたユッテューバーの霊がやっておるんじゃよ」


「へぇ〜」


「死者が現世の者とコミュニケーションを取ることは禁止されておるが、そんなふうに関わりを持つことはできるんじゃ。どうじゃ? おまえさんもやってみるか?」


「やらなかったらどうなるの?」


「このまま天国へ昇って、なんにもせず、なんにも考えず、ただ植物のように永遠にぼーっとすることになる」


「なんかやだ」


 そういうわけで、あたしはおすすめ動画の紹介をする中のひとになった。





 朝、起きると、あたしはパソコンの中にいて、みんなにおすすめ動画を紹介する中のひとになってた。


 でも少しだけ話が違う。


 基本的にそれをするのはAIの仕事だった。


「あたし……これ、必要ないんじゃ……?」

 最初はそう思った。


 みなさんは経験したことがないだろうか?


 AIさんが紹介してくれる、自分の視聴履歴を参照しておすすめしてくれる動画の中に、『どうしてこれがおすすめとして出てきた?』と思うようなものが入っていることを?


 お金を払っておすすめに出てきやすいようにしているものもあるのだろうが──


 お金を払ってるわけもない、再生回数ゼロの、まったく無名なユッテューバーさんの動画が脈絡もなくおすすめに出てきたというようなことは、ないだろうか? そして見てみたらすごく気に入ったというようなことは?


 あるいは知らないアーティストのミュージック・ビデオが紹介されて、聴いてみたらものすごく刺さったみたいなことは?


 あれはあたしがやっているのだ。


 あなたの好みを、人間の感性で察して、人間のカンでおすすめを選びだし、人間の人情で人気のない動画をスコップしている。


 まるで縁結びの神のようなあたし──

 しかし、これは人間にしかできないことだ。


 あたしはこの仕事にとてもやり甲斐を感じている。


 報酬はあなたの笑顔だ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 まるで残留思念の憑依霊。  良い話に纏めていますけど、実は単に神様の天国への選別から体よく弾かれただけかも。(笑)  今は好くても、飽きのきた時にこれを受け入れたことを悔やみそう……。
発想が凄く面白かったです。 んー。 ( ・∇・)っ 何か、降りてきて創作意欲が湧いてきました。
おもち喉につまらせて「死んだンゴ」してもかっこよくないのよ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ