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軽犯罪ろろろ

作者: 七宝

「キャアアーア・アーアア!」


 突如街に響いた某鼻毛のアフロを意識したような悲鳴が、昨夜ダニに噛まれた下腹部を掻きながら歩いていたガンダダの耳にも入耳(にゅうみみ)した。


「む×2、女子(じょし)()悲鳴乙wwwひめいおつわらわらわら!?」


 ガンダダはすぐさま声のした建物へ向かって走り出そうとしたが、靴のバッテリーが切れかかっていたためそれを躊躇ったが、そんな場合ではないと思い改め、あの真っ白い洋館に向かって走り始めたはいいものの、そんなことどうでもよくなるぐらいに下腹部が痒かったので、1回だけ渾身の力で掻いて向かった。


「はぁ×2、やっと着いたぞ!」


 洋館の扉には()ーがかかっておらず、すんなり開けることが出来た。


「はぁはぁ、はァ⋯⋯はァア!?」


 玄関には全て片方(())だけの靴が9つ置かれていた。


「まぁそういうこともあるか」


 多様性を認める広いココロを持つガンダダは、それらを全く気にすることなく悲鳴の匂いを辿っていく。


「クンカクンカ、こっちぞぬ⋯⋯?」


 まあまあ自信の無い音嗅覚(おんきゅーかく)で悲鳴がした部屋を目指すガンダダ。


「ええい、ここだァー!」


 適当に部屋を開けると、中には着替え中のセクシー女優がいた。


「キャアアーア・アーアア!」


「失礼しましま!!!!」


 慌ててドアを閉めて次の悲鳴部屋を目指す。


「キャアアーア・アーアア!」


「失礼しまっしゃ!」


 次を目指す。


「キャアアーア・アーアア!」


「しましま!」


 目指す。


「キャアアーア・アーアア!」


「しもしも!」


 目指す。


「キャアアーア・アーアア!」


「しまじろう!」


 目薬。


「シマウマ!」


「キャアアーア・アーアア!」


 そしてついに、最後のドアにおててを掛ける。


『⋯ってなるし、僕が殺す理由なんてないだろ!?』


 中からは事件の匂いぷんぷんの会話が漏れている。


「どうしよう、めちゃくちゃ途中だ」


 火サスの35分40秒くらいの会話ということもあり、なかなか中に入る勇気の出ないガンダダ。


「でもまぁ入るか」


 多様性を認める広いココロを持つガンダダは、お母さんが50歳の誕生日にウルトラマンになってから毎日歯医者の前で欧陽菲菲(オーヤンフィーフィー)の物真似をしているのを微笑ましく思っているが、先日訴状が届いた。


 ドアを開けると、中には胸にナイフの刺さった遺体と、全身ショッキングピンクコーデのババアと、ショッキングババアコーデのピンクと、ロン毛の男と、ツルッパゲ4人と、袖口に赤いシミのついた男の姿があった。


「こんなちっちゃい部屋にこんなにも人が⋯⋯」


 驚きを隠せない様子のガンダダ。いくら多様性の申し子である彼といえど、狭い空間に男子と女子がひしめく光景には驚きを隠せない様子のガンダダ。驚きを


「あの⋯⋯」


 袖口に赤いシミのついた男が口を開いた。


「皆さん落ち着いて聞いてください。おそらくですが、この中に探偵がいます」


 ハゲ4人も口を開いた。


「バレちまったら仕方がねェな」


 そう言って4人は手を繋ぎ、ノーハンドでズボンを脱ぎ、履いた。


「何が起こったんだ!?」


 驚きを隠せない様子の壁。


「壁がしゃべったァ!?!?」


 驚きを隠せない様子の壁の様子に驚きを隠せない様子の100円玉と50円玉と300円玉とガンダダ。


「誰だいあんた!」


 人差し指でガンダダの喉仏を突き、問い詰めるババア。


「ガンダダです!」


「ガンダダだぁ? 蜘蛛を殺す以外の悪行を全てやってそうな名じゃないか」


「そっスか? カンダタよりガンダムに近くね? と思うんでスーガ⋯⋯」


「そうかね?」


「えっ?」


「だってあんたほら、カンダタは濁点2個の違いだけども、ガンダムなんて丸々1文字違うじゃないか」


「違う箇所1個ならガンダムの方が近いんじゃないですか?」


「濁点1個と文字1個を同列に見てんのかい!?」


「そッス」


「濁点なんて10個集まっても文字1個違いより違わないさね!」


「なわけ(ヾノ・∀・`)ナイナイ」


「遠くから見たらガンダダもカンダタも一緒だけど、ガンダムは違うだろ? 形が全然違うんだよ」


「ほんとだ」


「なんて素直な若者なんじゃ⋯⋯」


「違うんです。さっきスズメバチに頭を刺されてから、なんか意識が薄れてるんですよ」


「人格乗っ取られる感じ?」


「そう」


「そっか」


「つらい」


「そだね」


「かなしい」


「そだね」


「会いに来てね⋯⋯」


「ぅん、ぜったい行くょ、、」


「俺じゃないぞ!?」


 いつの間にか警官5人に取り囲まれている袖口に赤いシミのついた男。


「え、違うの?」

「マジ?」

「令状間違ってたか」

「あちゃー」

「コチャ!」


 男に敬礼して帰っていく警官一同。


 平和な1日である。


 が、問題は山積みであった。


 ガンダダは以前、人気YouTuberだった。主にカブトムシを舐める動画を毎日投稿していたが、65万本目の動画でカブトムシのツノを陰部と誤認したAIによってアカウントがBANされたことでYouTuber人生を終えることを余儀なくされた。


 毎日足の指全部毛虫に刺される。


 海水浴場に行くと水がない。


 ゴルフ場に行くと雨が降る。


 パンツを履くと穴が空く。


(こんちく、こん、こんちくしょうめ。こんな人生やめてやら。)


 そう思った瞬間、ガンダダは床に倒れた。腹の下から血が広がる。深い引っ掻き傷がついていたのだ。


「来世はずんだもんになれますように⋯⋯」


 そう言って起き上がり、ガンダダはコンビニのトイレで消えていった。


 脳とは、宇宙である。――チモリネヘラグ・サジ

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― 新着の感想 ―
全てが謎に満ちていますが、いつか恐らく中くらいに良いことがありますように
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