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229  作者: Nora_
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 夏休みが終わって元気よくではないけど普通に学校に行っては帰るを繰り返していた。

 お泊まりの件は夏休み限定になっているため、いつもの決めたことを守っていると隆美といられる時間は全くないかあっても三分とかそれぐらいになる。

 でも、やはり普通はそんなものだから大して気になってはいなかった――のは私だけだったみたいだ。

 日曜日の朝、人の気配を感じて目を開けるとギャグアニメみたいに涙を流している隆美がいた。

 朝からよしよし大丈夫だからねと慰めることになった、どちらが大人なのかは私でもわからない。


「……なかったことになっているわけじゃないんだよな……?」

「当たり前じゃないですか」


 寧ろなくなっていたらこちらが嫌だと言える。

 適当に一緒にいたわけではない、なかったことにされたら彼女よりも傷つく自信がある。


「なのにどうしてここまで花子といられないんだっ」

「それは隆美のためですよ」

「もうあたしの家に住んでくれっ」


 と言われても困ると考えた数分後、当たり前のように母が参加してきて当たり前のように移動することが決まってしまった。

 ムイが玄関のところまで来てくれたから愛でてから出ると少し暑くて気になったものの、ささっと移動をする。

 見られる可能性もあるのだから動くなら昨日の夜にするべきではと言ってみると「昨日は悲しくて酒を飲んでいたんだ」と本当に悲しそうな顔で言われてしまってそれ以上は駄目だった。


「あれ、なんか前よりも汚くなっていませんか?」


 ゆっくりする前に掃除をしなければならない。

 そこまで広い家ではないし、どこになにがあるのかはずっと泊まっていたときに把握してあるから引っ張り出してきて始めることにした。


「ああ、最近は帰ったらご飯を食べて寝るを繰り返していたからな、洗濯物だって畳まないで放置しているだけだからこんな感じなんだ。まあ、本当のところを言うと花子とかが帰ってしまったからだが」

「勝手に人のせいにしないでください」

「いやだってほら、あたしがいない間にやってくれていただろ? それに一人だともうやる気が出ないんだよ」


 それでもある程度はやるしかなかった結果がこれということか。


「遼のことを求めていたら住むように言っていましたか?」

「そりゃ好きになったならそうだろ、あたしは花子のことを好きになったんだから意味のない話だがな」


 出てきた変な感情からは意識を逸らして畳んだり掃いたりを繰り返して休める場所にする、で、前よりは気になるというだけでそこまで酷くはなかったから一時間も経たずに終わらせることができた。

 いまのこの状態ならムイが来てもいいぐらいだ、ペット可の物件ではないらしいから実際には無理ではあるけど。

 問題なのは掃除が終わって座った瞬間に甘えてきたこと、こちらが甘えたいぐらいなのに彼女はそれを許してはくれない。


「学校にいるときは上手く切り替えることができるが、もう帰るとなったときに駄目になるんだ」

「それなら爆発する前にちゃんと言ってください」


 せっかく交換をしたのにメッセージを送ってくることすら全くしないのは何故なのか。

 ポチポチ画面をタップすることが面倒くさいなら学校にいるときにボソッと吐いてくれればこちらから行動をした、気になっていなかったのは本当のことだけど相手がわかりやすく求めてくれているのなら任せてばかりにはしない。


「だ、だって年上が甘えるとかダサいだろ?」

「ならこれはどうするんですか?」


 仰向けではなくて私の足を抱きしめるようにしてくっついてきているぐらいなのに。


「本人を目の前にしたら我慢なんて無理だよ」

「そういうものなんですね」


 わー乙女だーと言っておけばいいのだろうか。

 この点の残念なところはこちらがくっつけないこともあるし、くっつくだけで満足してしまえるのか口数がわかりやすく減るということだ。

 だから静かになる、気まずいというわけではないけどどうせなら話していたい。

 だってせっかく誰かといられているのだ、一人で黙っていることなら学校でもできるわけだからこうして過ごせているのなら、ね。


「というか、あたしの前でわざと片平のことを出すなよ」

「わざと? 私はただもしもの話をしていただけです、友達は遼しかいませんからね」

「ほらまたっ、まだ気にしているんだからな……?」

「疲れるだけだからやめた方がいいですよ」


 こうして私がいるときに少し落ち着けばなんて無駄なことをしていたのかとすぐにわかるはずだ。


「……またしてくれないのか?」

「そもそもこれは隆美がきっかけで始まったことです、なんでも生徒にやらすのはどうかと思います」


 そういうことを求めてくるのはまだ飽きられていないということだから精神的にはいいけどね。

 でも、すぐに「い、いや……あたしが積極的にああいうことをやっていたらやばいだろ」となって結局は私が動かなければならない連続だった。

 別にそれが嫌だというわけではないけど、やっぱりこういうのは私の方が求めることのような気がするのだ。


「ありがとな、これで仕事をもっと頑張れる」

「はい」


 いい顔をしているな。

 問題なのはこういう顔を見られるだけで別にいいかとなってしまうことだった。




「いらっしゃいませー」

「二人で」


 相談したいことがあるということで彼と飲食店に来ていた。

 もうご飯も済ませてしまうつもりでいたからそれなりに考えて注文をして対面に座った彼を見る。


「私とどういう関係なのかと聞かれた?」

「うん、友達なんだとそのまま答えんだけど信じてくれなくてね」

「ということは遼のことを気にしているんだね」

「そう……なのかな、昔、こっちのことを気にしてくれた子は真っすぐにアピールをしてきていたからよくわからないや」


 まあそうか、ただ近づいてきただけでこの子は自分に興味を持っているんだとは普通は考えない。

 ある程度は一緒に過ごして、わかりやすく動いてくれてからならわからなくもないけど。


「それで実は外にいるんだよね」

「なんで一緒に行動をしなかったの、別行動をしたらそれこそ誤解されるでしょ」

「僕もそれじゃあ意味がないでしょって言ったんだけど花子が怖いからってことで断られちゃったんだよ」

「私が怖い?」


 なにを考えているのかわからない、不思議ちゃんとは多く言われてきたものの、怖いと言われたのは初めてだった。

 つまらなさそうな顔に見えるとよく言われてもずっと真顔というわけではない、私だって笑うからある程度いてくれればわかるはずなのだ。

 問題なのはそのある程度一緒にいるということが他の子と比べて難しいことだ。


「でも、見ていると思うし、連絡先を交換しておいたから後でメッセージを送っておけばわかってもらえるよね」

「簡単に交換しちゃうんだね」

「わかってもらうためには仕方がないよ」


 こういう子が一人でいるのは気に入らなかったりもする。

 一緒にいたくてもいられなかったこちらと、求めればすぐに誰かが近づいてきてくれる彼みたいな存在と、その差が最近は気になるのだ。

 正直、前と比べて贅沢な思考をしていることは認めるしかない。


「あれ、珍しく連絡がきた」

「あの人ってわかりやすいよね」

「学校では隠せていると思うけどね」


 内容は『なるべく寄り道をしないで帰るように』というそれ、教師らしいけど別に圧をかけてこなくてもいま帰る家は先生の家なのにね。

 両親やムイと会うのに一旦自宅に寄るという変なことを繰り返しているのが現状だ。


「付き合ってくれてありがとう」

「うん、じゃあまたね」


 一人でいるところに急襲されるなんてこともなくいつも通りに行動することができた。

 そして連絡をしてきたときは酷く甘えん坊であるため、ずっと頭を撫でることになって手が疲れた。


「花子のお母さんと何回もやり取りをしているんだがな、基本的に花子任せでいいと言われるんだ」

「え、ならこれは隆美とお母さんのせいということですか」


 なんてことだ、ただ勇気がなかっただけではないらしい。

 これならまだ緊張するからとかそういう理由の方がよかった。


「でもな? 流石に任せてばかりなのは違うから頑張ってみようとしたんだよ、あ、中に入るまでは実際にそうだったんだ」

「つまり、一瞬で消えてしまったんですね」

「ああっ、花子の母性が凄くてな!」


 母性なんてものが本当にあるのかどうか、出ていなければならないところだって出ていないのに。


「一人でいることしかできなかった私によくそんなことを言えますね」

「こっちが少し積極的になった頃から変わったんだよ」

「ふーん、自分じゃよくわからないですけど」


 馬鹿にされているわけではないし、求められているぐらいだからいいけど。


「残念なのは片平も変化した理由に含まれているということだっ、油断ならない相手だよっ」

「教師って厳しいイメージがありましたけど隆美は違うのでよかったです」

「ま、待て、少し馬鹿にされていないか?」

「そう聞こえますか? はは、不安にならなくて大丈夫ですよ」

「益々不安になってくるんだが……」


 厳しかったら何回も近づくことはできないからいいのだ。

 だからいまも言ったようにごちゃごちゃ考える必要はなかった。

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