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トレーシング・ユア・ワールド  作者: あやめ康太朗
第1章 始動

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    招待状⑦

「つ、創も、選ばれた、のか」


 勝元が独り言のように言った。それに、動けないままでいる創が「う、うん」と答える。


 景山に促されて、創が柚たちの方に寄ってきた。その途中、何もないところで派手につまずいて机と衝突。気まずそうに立ち上がると、ぎこちない足取りで歩いてきて、柚たちの席の、少し前で立ち止まる。


「えっと、三人も選ばれたんだ」


 誰も、答えられない。


 どういう反応をすればいいのか困っている勝元。目を見開いたままで、驚きが処理できないでいる凪沙。柚もそろそろ開きすぎて目が痛かった。



「……電車の事故って聞いたけど、創、電車で来たの?」


 ようやく喋れるようになった凪沙が、気遣うように聞いた。


「うん。電車で」

 そう答える創の笑顔が心なしか固い。顔色も悪く見えた。


「顔色悪いよ。大丈夫?」

 柚が声をかけると、創はにっこりと笑った。


「うん、大丈夫。ありがとう」

「無理するなよ」


 勝元が手を伸ばして創の頭をくしゃっと撫でた。


「あ、そうだ」


 撫でられて照れ臭そうにしていた創が、慌てて他のメンバーの方を向いた。その異様な雰囲気に戸惑いながら、ぺこりと頭を下げる。


「遅れてすみません。蒼柳創です。よろしくお願いします」



 返事は、ない。


 創が恐る恐る顔を上げる。怯えたような顔をしていた。



「やっぱり、そうなりますよね」


 はあ、と盛大なため息をついたのは景山だった。それに柚たちも大きく頷く。


 彼を見つめる皆の顔は、驚きを通り越して魂が抜けたような表情だった。見惚れる、という表現が正しいのかもしれない。仕方がない。どんな人だってはじめはそんな反応をする。柚だって例外じゃなかった。


 困ったように柚たちを振り返る創の顔。

 この世に存在してはいけないくらいの超絶美少年。



 華奢な身体に、温度を感じさせない、透き通るような白い肌。サラサラで艶やかな黒髪。くりっとした大きい目と儚げな長い睫毛が印象的。パーツ一つ一つが秀麗でその配置も秀麗。天然物とは思えないけれど天然じゃなければ生み出すことができないであろう天然記念物。眉目秀麗だの容姿端麗だのじゃ足りないくらいで、絵にかくことだって困難であろう美しさ。これはもう人間じゃないレベル。本当に生きているのか疑わしいほどに、この蒼柳創という人物は。



「天使だからねー」


 凪沙が苦笑いをする。何か悪いことをしでかしたのではと肩を縮こませている創を横目で見て、勝元も笑った。


「会う機会、すぐにあったなー」


「すぐに移動するって聞いたんだけど……」


 立ったまま動けないでいる創がうろたえている。どうしようもないことに、彼は自分の美貌に気が付いていない。少しくらい自覚があってもよさそうだけれど、驚いたことに自分の顔は普通だと思っている。

 

 勘違いされがちだけれど、気が付かない振りなんていうあざといことをしている訳じゃない。そんなことができるほど器用な人だったら、創はもっとまともな人生を送っていただろう。



「えーっと」

 見惚れ地獄から魂を取り戻した天瀬が柚たちの方を縋るように見た。


「て、天使ってこの子っすか……?」


 柚たちは同情を感じながら大きく首を縦に振った。天瀬は、意味不明な数式を見ているような顔をした。

 その気持ち、わかります。



「あ、ごめんなさい。名前聞き逃しちゃって」


 天瀬が創に笑いかけた。他の人たちも、魂を取り戻しつつあるようだった。創は慌てて二回目の自己紹介をした。


「蒼柳創です。お願いします」

「学年は?」

「高校二年生です」

「お、同い年……」


 それを聞いた皆ががっくりとうなだれる。どう見たって中学生だろ、というツッコミが聞こえてきそうだった。


「皆さんの名前も、教えてもらえると嬉しいです」


 童顔で幼く見られることを気にしている創は、俯き加減にそう言った。それから、一回目と同じ順番で名乗っていく。創は、驚くべきポイントではその反応を微かに見せたけれど、ほとんど気にせずに熱心に自己紹介を聞いていた。



 一通り自己紹介が終わったのを確認すると、景山が「では」と呼び掛けた。


「皆さん、復活したようですし、そろそろ寮に移動しましょう」

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