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    『道』②

一話分の文章量ミスりました。

この話だけ二話分くらいの長さになってます。

すみません。

 自分の部屋の鍵を受け取った柚たちは、指定された部屋番号の部屋に向かった。


「二階フロアには、階段から見て右側に二〇一から二〇六号室までの六部屋、左側に二〇七から二一二号室までの六部屋があります。部屋は大体、小さい部屋番号の方から、男子の五十音順、女子の五十音順に割り振られている感じです。


 ルリは『道』の設定の準備をするのでさっきの地下室にいます。従業員はルリ一人だけなので、何かあればルリに声をかけてください。部屋が確認でき次第、また地下に集まってほしいです」


 そう告げたルリは、跳ねるような足取りで地下へ続く階段を駆け下りていった。柚たちは、各自部屋を確認することにした。


 階段で二階まで登る。階段を上がった正面には、共用のトイレや水道があった。部屋は、それを挟んで両側に並んでいた。


「私たちの部屋はこっち側だよ。行こう、柚」


 何故か逆の方に進もうとしていたらしい柚は、襟首を凪沙につかまれて引きずられる。無意識っていうのは恐ろしい。


「柚を見ていていつも思うけど、方向音痴っていうのはどういう原理でそうなっているんだろうね」

「さあ、多分、本能が……」

「間違った方向に進んでいるとしたら、生物に備わっている本能としてはちょっと問題があるような気もするけど」

「……そう、ですね」


 引きずられたまま、柚は壁に並んだ扉を見た。少しくすんだ白い壁に、浮き上がるようにして並んでいる明るい茶色の扉。それらは、廊下の両側で、向かい側の扉がちょうど目の前に来るように対称だった。


 扉の横には、それぞれの名前と部屋番号が書かれたプレートが貼られていた。柚の部屋は二〇九号室。部屋番号が大きい方の側を、階段の方から見たときに、右手側の一番奥にある部屋だった。


 柚の部屋から部屋を一つ挟んだ、手前から一つ目にある二〇七号室は凪沙。凪沙と柚の間にある部屋、二〇八号室が桜草樹。そして、凪沙の向かい側の二一〇号室は三ツ花の部屋だった。


「一番隅の部屋かあ」

 柚は小さな声で呟いた。向かい側の部屋には誰もおらず、かつ隣が桜草樹というのは、何となく不安だった。


「凪沙ちゃんの隣が良かったな」

「隣じゃなくても面倒は見てあげるから」


 凪沙は、柚の部屋の手前まで来て、柚の襟からパッと手を離した。準備をしていなかった柚は、バランスを崩して背中を床に打ち付けられた。息苦しい衝撃に、バフッという効果音がついた気がする。痛い。離すなら教えてほしかった。


「大丈夫?」

「うん……」

「そっか。じゃあ、また後で」


 凪沙は涼しい顔で自分の部屋に入ってしまった。それを恨みがましく見上げていると、「あの」と頭上から声が降ってきた。見上げると、そこには心配そうな顔をした桜草樹と三ツ花が立っていた。


「大丈夫ですか?」

 桜草樹が柚に手を差し出す。白い、きれいな手だと思った。


 いや違う。そうじゃなくて。


 柚が戸惑っていると、柚の顔を覗き込んでいる桜草樹の顔が、更に心配そうに歪む。かなり心配してもらえているみたいだ。


「あ、はい、大丈夫です。ありがとうございます」

 柚は桜草樹の手を取って立ち上がった。こんなふうに手を差し伸べられるなんて、私は少女漫画の主人公みたいだな、と勝手に思う。


 柚は、まだ心配そうにしている桜草樹に笑いかけた。


「何ともないですよ。よくあることなので」

「そうですか」

 桜草樹は安心したように表情を和らげた。そして、ふと目線を斜め上の方に向けた。


「白葉、柚さん……」

「は、はい」

 呼ばれて、思わず返事をした。それに、桜草樹は少し驚いたような顔をすると、「ああ、いえ」と言った。


「すみません。お名前、プレートで確認させてもらいました。まだ、全員の名前を完全に把握できていないので」


 プレート。柚は、先程桜草樹が目線を向けていた方を振り返る。なるほど、彼女はプレートに書いてある名前を読み上げたのか。


 だから返事をしたとき、桜草樹は驚いていたのか。かなり恥ずかしい。柚は「いえ、お気になさらず……」と、使ったことのないような言葉で答えた。


 他の参加者の名前は、柚だってまだちゃんと覚えられていないし、これから関わっていく中で自然と覚えられるだろうと思っていた。けれど、彼女はもう全員の名前を完璧に覚えようとしているのか。純粋にすごいと思った。


 それに、こうして後から話しかけてくれるのはありがたかったし、話すきっかけができたのもよかった。柚は、小さく息を吸うと、桜草樹に笑いかけた。


「白葉柚です。高校二年生です。よろしくお願いします」

「桜草樹一華です。よろしくお願いします」


 柚の挨拶を受けて、桜草樹も丁寧に答えた。本当に、礼儀正しい人だ。


「あ、ちなみに、私の後に自己紹介をしたのは入月凪沙ちゃんで、高校三年生です」


 一応、付け足しておく。彼女の場合、道ですれ違ったら皆が振り向いたっていいくらいの美人だから、もう既に覚えられているのかもしれないけれど。


 桜草樹は、軽く頷くと「ありがとうございます」とお礼を述べた。そして、柚に一礼すると、サッと背を向けて、自分の部屋に入っていってしまった。


 閉まった扉をしばらく眺めると、柚はその視線を隣へ移動した。そこには、ずっと近くで様子を窺っていた三ツ花が、居心地が悪そうにして立っていた。柚たちの会話を無視して部屋に入ることもできずに、それでも会話に加わることもできずにいて、戸惑っているようだった。


 彼女は、柚と目があった瞬間、サッと目を逸らした。それから、そのまま柚に対して軽く頭を下げると、くるりと背を向け、自分の部屋へと向かおうとした。


 思わず一歩、足が前に出る。足の部分に、熱がたまっているようだった。


「あの」

 呼び掛ける。すると、三ツ花は素早く振り向いた。驚いた顔をしていた。


「白葉柚です。よろしくお願いします」

 柚は三ツ花に笑いかけた。


「あ、三ツ花穂乃です。こちらこそ、よろしくお願いします」

 落ち着いた表情で、それでもたどたどしく、三ツ花は答えた。


 気まずい沈黙が満ちる。話しかけたはいいものの、その先のことを考えていなかった。


 よし、これは、ただの挨拶だということにしよう。


 柚は「じゃあ」みたいなことを曖昧にぼかして言うと、いそいそとポケットから鍵を取り出した。取り出した拍子に少し離れたところまで鍵を飛ばしてしまったので、慌てて拾いあげる。扉の前に戻って、震える指で鍵穴に差し込んで回すと、カチャリ、と心地良い音がした。うん、うん、と頷きながら、扉を開ける。


 なんて挙動不審なんだ、私は。

 自分のコミュニケーションの下手さに泣けてくる。

 絶対引いたよな、三ツ花さん。


「あーもうダメかも」

 扉を閉めた後、呟いてみる。しんとしたプライベート空間の中に、それは思った以上にはっきりと響いた。自分で言っておいて虚しくなる。


 右手の手のひらをそっと撫でる。はあ、とため息を吐いて、その後改めて深呼吸をする。溜まっていた不安をできる限り吐息と一緒に吐き出すと、柚は部屋の中を見た。


 入ってすぐのところは、廊下のように細くなっていて、右には入り口の扉を少し小さくしたような扉、左には靴箱やハンガーラック、クローゼットなどがあった。

 

 少し奥の、広くなった空間まで進むと、まず、正面の大きな窓が目に入った。白いレースのカーテンの隙間から差す昼の日差しは、部屋の中を暖かく照らしている。右側にはベッド、左側には書棚と机があった。外観が西洋風であるだけに、内装も、その柔らかい色使いから可愛らしい雰囲気が感じ取れた。


 なんということでしょう。

 部屋のど真ん中に立って、足が動かなくなる。


 ぐるぐると、柚は何度も部屋の中を見回す。何度確認してもそれは消えることはなく、涼しい顔でそこに存在していた。


 なんと。

 こんな部屋に、私は住めるのか。

 無料で。


 嘘だ、こんな話があるわけないだろう。こんな、良い話があるわけない。だってこの部屋、私の自宅の部屋の二倍はあるぞ。何か裏があるに違いないじゃないか。


 ふらふらとおぼつかない足取りで、窓に近づく。カーテンをそっとめくると、その向こうには、白い柵で囲まれた小さなベランダがあった。外から白馬の王子様が駆けつけてきそうな風景である。その背景にある鉄筋コンクリートの建物を無視すればだけれども。


 そう言えば、入ってすぐにあった扉は何だろう、とふと思って、柚は夢見心地のままそこに移動する。開けてみると、そこは清潔感のある白い壁のユニットバスだった。


 おお。

 …………。

 思考停止。そして。

 この衝撃を何とか自分の中で処理するべく、柚は心の中で、大きく息を吸って、叫んだ。



 お兄ちゃあああああああああああああああんっ!

 都会ってすごいぞおおおおおおおおおおおおおおお!



 理解できる範囲を完全にオーバーしている。追いつかない。この状況を私はどのように受け止めればいいのだろう。こんな世界が同じ国に存在していたとは。ていうかここは一体どこなんですか? 私はどんな反応をすればいいのですか?


 タダより高いものはない、だよ、という兄の言葉が浮かんできたが、どこかへ飛んでいった。今だけはちょっと静かにしていてほしい。


 はあ。

 息をゆっくりと吐きだす。

 よし、落ち着いてきた。大丈夫だ。



 結局何を確認すればよかったのか分からないまま、柚は部屋の外に出た。廊下には、凪沙が立っていた。


「凪沙ちゃん! すごい部屋綺麗だね!」

 凪沙に近寄りながら、はしゃいでそう言うと、凪沙は微笑んで「そうだね」と答えた。


「柚は、ここに住むつもりなの?」

 凪沙の質問に、柚は「うーん」と唸る。


 五科社長は、ここに無理に住まなくてもいいと言っていた。『道』は、この寮、『家』ともう一つの一点を繋ぐことができる。それを自宅に設定すれば、自宅から『家』、そしてすぐ近くの会社に通うことも簡単だ。『家』に住む場合は、『家』が自宅代わりになるわけだから、『道』を通っている学校と繋げばいい。会社と『家』をワンセットで考えれば、どちらの選択をしても不便はない、ということだった。


 柚は少し考えてから、口を開いた。


「いい部屋だし、せっかくなら住んでみたい気もするけど、まだ、取りあえずは自分の家に住もうかな。何か、怖いし」

「そうだね。私もそうしようかな、とは思ってる」

 凪沙が軽く目を閉じて、撫でるように瞼に手を当てた。

「まあ多分、創もそうだと思うよ。不安も多いだろうし。勝元はどうか知らないけれど」


 そのとき、向かい側の扉が開いて、中から三ツ花が顔を覗かせた。柚たちを見て、安心したように表情を和らげる。


「地下に、向かうんですか」

「うん。行こうか」


 凪沙が歩き出した。柚の手首を掴むのを忘れない。


「あの、桜草樹さんは」

 三ツ花が心配そうに彼女の部屋の扉を見た。それに、凪沙が答える。

「大丈夫。先に行ったよ」

「そう、ですか」


 柚たちの足音が、板張りの廊下にくぐもって響く。


「そういえば」

 と、柚は三ツ花を見た。

「三ツ花さんは、ここに住むんですか?」


「……え? あ、えっと」

 少し間を開けて、三ツ花は答えた。

「まだ、決めてないです」

「そっか。そうだよね」


 じゃあ、住む人は少ないのだろうか。


「高校一年生になったばかりなのに、大変だね」

 凪沙が言うと、三ツ花は少し困ったように笑った。

「はい。でも、滅多にない、機会なので」


 階段に差し掛かる。と、その瞬間、何か重い衝撃音が、二階フロアの床を揺らした。振動が、足の裏を通って身体の中を突き上げる。震える不安定な床。倒れないように何とか踏みとどまる。


 しばらくすると、パラパラと軽い音を響かせながら、その衝撃が徐々に引いていった。


「……地震?」


 不意打ちの出来事に、床に踏ん張ったまま完全に動きが固まってしまった。三ツ花も身動きが取れずに目を見開いている。凪沙の顔を見ると、彼女もまた、少し驚いた顔をして、「何が起こったの?」というように柚の顔を見つめ返した。


 パラパラという音が、微かだけれど鳴り続けている。それが意外と近くから聞こえることに気が付いた。


 今の振動は、何か大きな音がしたのとほとんど同時に起こった。ということは。


 柚は、固まった首を無理矢理ガクンと動かして、その衝撃の震源であるだろう方向を見た。柚たちの部屋のある側とは反対の、番号が若い部屋が集まる方。つまりそこは、男子の部屋がある方だった。


 もしかして。


 一つの予想が柚の頭の中に掲げられる。明確な根拠はないけれど、それはおそらく正解だと思う。予想というよりも、確信だった。


 それは、凪沙の様子を見ても分かった。嘆くように息を吐くと、凪沙は音のした方に呼び掛けた。


「創、大丈夫―?」

「こんな音がして大丈夫なわけないだろ」


 返事はすぐに聞こえた。それは、呼び掛けた相手ではなく、勝元の声だった。


 勝元は、等間隔で並んだ扉の一つから姿を現した。困り果てたように、それでもどこか楽しそうに苦笑する。


「まあ、怪我人はいないから、それは大丈夫」

「そっか」


 呟きながら、凪沙はその方に歩き出した。彼女に手首を掴まれたままでいる柚も当然その方向に進んでいく。その足はまっすぐに勝元の方に向いていて、足を進めることに何の躊躇いもないようだった。


「凪沙ちゃん。勝手にこっちに来ちゃってもいいのかな」

 手を引かれるままに歩きながら、柚は慌てて気になったことを問いかけた。自分の部屋がない方だし、男子と女子で分けたうちの男子側だから、少し心配になる。それに対して凪沙は、どうでもよさそうに「まあ、いいでしょ」と答えた。いいのか、と柚は思う。


 柚は、階段近くで固まったままの三ツ花を振り返る。彼女は、どうしていいのか分からずに迷った末、柚たちの方に駆け寄ってきた。一緒についてくるみたいだった。


 勝元の前まで辿り着く。彼が背にして立っていた扉の横には、『赤羽勝元』の文字ではなく、『蒼柳創』の文字のプレートが張ってあった。勝元は、さっきまで創の部屋、つまりは事件現場にいたようだった。


 近くの部屋から次々と皆が顔を出す。下の階にいた桜草樹や景山、ルリたちも階段を上がって、この部屋に駆けつけてくる。


「何が起こったのですか? 怪我人は?」

 景山が動揺を見せずに、冷静な態度を崩さないで尋ねた。それに、勝元が無言で部屋の中を手で示した。


 中を覗く。そして、驚愕する。


 床を埋め尽くす、散らばった木の板や破片。倒れた書棚。元あった位置から移動した家具。埃の舞う空間。泥棒が入った後、というよりも地震が起きた後、という方がふさわしいほどその部屋は荒らされていた。


 天井に黒々と開いた穴を見て、天井が落ちてきたんだということに初めて気づく。


「天井が、落ちた……?」


 誰かが代表して呟いた。俄かには信じられないけれど、それ以外の捉え方は、できないようだった。天井の大穴と、それに相当する量の木の破片は、幻覚じゃない限り見間違えることはないだろう。


 天井って落ちることあるのか。

 手抜き工事、みたいなやつか。


「ありゃー、派手に壊れちゃいましたね。最近雨漏りがひどくて不安なところがあるって言っていたからその部屋は補強したんですけど、まだあったんですかー」


 あ、消しゴム落としちゃった、みたいなノリで、ルリが顎に人差し指を当てた。


「あ、あの」

 真っ青な顔の創がよろよろと部屋の中から出てきた。

「ごめんなさい。天井落としちゃって」


「え、君が落としたんですが?」

 ルリが目を丸くして言った。この小柄な男子高校生がどうやって、という目を向ける。


「君、ビームでも打てたんですか」

「あ、いや、そういうわけではないんですけど」


 本気で焦って手をバタバタと振る創。どんな会話だよ、これ。


「打てないなら君のせいではないですよ。天井はたまたま落ちてしまったのです」

「えっと、それも少し違って、これは多分僕のせ――」


 前に進み出た創の姿が消え、同時に声が途切れた。


 視線を下に向けると、そこには、顔から床に倒れ込んだ創の姿があった。


「……えっとー」


 皆が言葉を失って、床から身体を起こす美少年を見ていた。ゆっくりと立ち上がった彼は、俯いて、何か思いつめた表情をしていた。


「もしかして、蒼柳さんは――」

 景山の言葉を引き継いで、「はい」と創は答えた。


「……僕、いわゆる不運体質、みたいな感じなんです」

 そして、えへへ、と笑って頭を掻いた。


「だから、さっきのことも、多分僕が引き起こしたことです。だから、気にしないでください。それと、その、これからもみんなに迷惑をかけると思うので、ごめんなさい」


 創は深々と頭を下げた。伏せられた表情は、よく見えない。


「そうそう。こいつ、いつもどこかで転んだり濡れたり汚れたりしてるから、傷が絶えなくて」


 勝元が快活に笑った。今日最初に会った時と同じように、くしゃっと頭を撫でる。それに創は力なく笑ってみせた。


「そうなんですか。まあ、それでも責任は私たちにあります。偶然とはいえ、それは管理不行き届きだったということですから。大丈夫ですよ」


 景山が淡々とそう言って、最後、注意していないと分からないくらいだったけれど微笑みを浮かべた。今までの景山からは想像できないような優しい雰囲気に、柚は密かに息を飲む。


 創が、ようやくホッとした顔をした。景山に対して、真っ直ぐなお礼の言葉を述べる。

「ありがとう、ございます」


 そして、天使スマイル。太陽のような光が柔らかく創の周りに落ちた。


 破壊力が凄まじい。

 見慣れている柚でさえ倒れそうだった。というよりも、神聖すぎて存在ごと浄化されそうだった。


 これだけの天使が、よくあの片田舎の地域の中だけで生きてこられたな、と柚は改めて思う。あの地方に収まってきたのが奇跡だ。


 創の隣に立つ勝元は、まともにその光を浴びたにもかかわらず、涼しい顔をしている。彼は創と一緒にいることが多いから、もう感覚が麻痺しているのかもしれない。慣れというものは恐ろしいと感じた。


「はいっ。では皆さん」


 ルリが、その小さな両手でパンっと乾いた音を鳴らした。皆の注目が自分に集まったことを確認して、弾けるような笑顔を作る。


「ちょうど全員集まっているみたいですし、この問題は後で何とかするとして、今から地下にレッツゴーなのです。『道』の設定をするですよ」

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