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第3話 庭師 酢矢貴将

砂糖元家の娘、希美の執事は体重130kgと少し大きな執事である。

そんな大きな執事と屋敷の住人、学友、探偵、様々な人を巻き込むドタバタコメディ。

「はぁ、お腹空いたなぁ」

時刻は11時15分、1時間前に朝食を食べ終えたばかりなのに、『大きな』執事が飼っている腹の虫は激しく暴れている。

10分ほど中庭で食べ物がないか散策して、疲れて腰を下ろしていると、後ろから聞きなれた声がする。

「よう脂元、こんなとこで何してるんだ?」


声の主は砂糖元家の庭師の酢矢貴将であった。

砂糖元家は例にもれず中庭や裏庭、他にも多くの植物があり、それを管理するのに庭師を雇っている。

酢矢は若くしてこの大きな邸宅の庭や植物の管理を任されている。

察しの通り、『大きな』執事とは旧知の仲である。

出会いは高校からであるが、まるで小さい時から一緒であるかのような仲であると周りは思うかもしれない。

この『大きな』執事が砂糖元家に雇われたのは、この酢矢の存在が大きい。

今まで希美の世話をしていた執事が辞職するにあたって、後継者を探しているときに酢矢が『大きな』執事を推薦したのである。


「やぁ酢矢、何か食べ物持ってないかい?」

『大きな』執事はまるで挨拶のように食べ物を要求する。

「食べ物か、ちょっと待ってろ。良いのがさっきあったから、塩見さんに調理してもらって持ってきてやるよ。」

酢矢はそう言うと、嬉しそうに調理場の方に向かっていった。

『大きな』執事は持つべきものは気心の知れた友達だなと感じるとともに、空腹を満たせると分かったことで腹の虫がさらに騒がしくなっていた。

その音は邸宅全体に聞こえるほど大きなもので、砂糖元家の人たちは、その音でだいたいの時刻が分かるようになっていた。

腹時計とはよく言ったものである。


ー15分後ー


「待たせたな、揚げたてを持ってきてやったぞ。」

酢矢はそう言うと、一口サイズの揚げ物が乗ったバットを手渡してきた。

『大きな』執事は助かるよと言ってそのまま手づかみで食べ始める。

火傷するなよ、と言う酢矢の気遣いの中、『大きな』執事はむしゃむしゃと揚げ物を頬張っている。


「うん、美味いなぁこれ。なんかカリカリしてて塩加減が最高だね!これ何を挙げたやつなの?」

『大きな』執事は残らず完食するとともに、自分が食べたものについて酢矢に問いかける。

「逆になんだと思う?正解したらもっとやるよ。」

酢矢は美味しそうに食べる友人を見て、満面の笑みを浮かべながら問いかける。

「なんだろうな、肉っぽい味はするけど、このカリカリ感は?あ、海老かな?殻付きの海老じゃない?」

「良い線言ってるね。でも海産物じゃないんだな。ヒントは夏の代名詞で、大嫌いな人も多いね。」

『大きな』執事は夏の代名詞と大嫌いという交わることのないようなヒントに逆に分からなくなってしまった。

夏といえば夏野菜やトウモロコシ、うなぎ。大嫌いな人もいると言えばセロリやパクチー。でも夏ではないか。

二つの条件を満たすものはなかなか浮かばない。

「かえって分からなくなったよ。もう分からない、教えてよ。」

『大きな』執事はたいして考えることもなく答えを求めた。

酢矢はしょうがないなぁと嬉しそうにポケットに手を突っ込んで揚げ物の正体をさらす。

「お前が食べたのはこれを揚げたやつなんだなぁ」

酢矢がポケットから出してきたものは親指サイズの黒茶色の物体。

なになに、と『大きな』執事は近寄って確かめようとするが、その存在を認識したところでわぁ!としりもちをついて倒れる。

「うわぁ、なにこれ気持ち悪い!ゴキブリ!?」


予想通りの反応を見せる『大きな』執事を見て、酢矢はケタケタと笑いながら正体をばらす。

「よく美味そうに蝉を食べるよな。どんなにお腹減ってても俺は食べたくないよ。」

『大きな』執事が美味しそうに食べていたものは、セミを揚げて塩を振って味付けしたものであった。

「中学生みたいなことするなよ。信じた俺がバカだった。お前はそういうやつだったな。」

『大きな』執事は高校時代に毎日のようにいたずらをされていたことを思い出した。

感慨深いとともに、また高校の時のようにいたずらされるのかと憂鬱な気持ちも混在していた。


「塩見さんに作ってもらったから、美味いのは美味いだろ?」

『大きな』執事は塩見さんも一枚嚙んでいたことを知り、逃げ場はないと悟った。


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