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第3章 [14]

 


「あっ…そうだったね…。」

 ふたりの勢いに呑まれて思わず答えるサティアナ。



 サティアナの背後では、リリーがそんな3人を穏やかに見守っていた。サティアナが帰宅する前からこうなるであろう事は予想していたかの様な穏やかな笑顔である。



「コホン…それで、この場ではどんな報告がいただけるのかな?」

 サティアナは仕方なく改まると、瞳を輝かせるふたりに向かってたずねた。



 ふたりは目配せし合った後、何やら部屋の隅に行きそれぞれの手帳を持って席に戻ると、まずはキャロラインが口を開いた。



「ではまずはわたくしから。今回、わたくしは、パッカー商会の情報網を使いまして、ポリッシュ家の基本的な情報を集めましたわ。まずポリッシュ家は、チゼル王国南部、王都から南東の方角に位置するポリッシュ領都エスペールに本拠地を構える侯爵家でございます。エスペールの利益基盤は、港町の利点を活かした交易にございます。諸外国との交易や国内への流通に強みを持っておりますわ。それと地元原産の葡萄を使った葡萄酒がとても有名で、国内外を問わず流通しております。また領都エスペールは国内屈指の観光地となっており、季節を問わず賑わっております。

 観光の目玉は何と言ってもその街並みで、高台に建つポリッシュ家の大邸宅を見上げる坂には白い壁の家々が並び、その白い壁が内海に反射した日光を浴びるとキラキラと輝くのです。そしてその麓の港付近の市場では国内外のあらゆる物が揃うといった、素晴らしい街。その街を膝下に配した高台に建つポリッシュ侯爵家の素晴らしい建築物。私共パッカー商会も、大変お世話になっている侯爵家様ですわ。その侯爵家の誇る双子のスターホルダーである御子様方が、ミゲル・ポリッシュ様とラウラ・ポリッシュ様でございます。」



「ふむふむ、良く分かったよ、ありがとうキャロル。エスペールとは、こうやって聞いただけでも美しいのだろうなと思わせられる街なのね。行ってみたいなあ。」



「コホン。では次はわたくしが。わたくしはミゲル様とラウラ様の人柄などを少々調査いたしましたわ。」



「ありがとうソフィー。でもひとつ質問させて。それはどうやって調査したの?ご本人の後をつけたりとか……」


「まさか!ご安心を、姉様。」


「ええ、そのあたりはわたくしも証言出来ますわ。ソフィーとはこの数日、休み時間になると食堂に入浸っておりましたの。そこで得た情報ですわ!」



「なるほど食堂で…。ふたりにはきっと苦労をかけてしまっただろうね?なんだか申し訳ないな。それで情報と言うのは、噂話ってことかな?」



「いいえ姉様お気になさらず、…まぁ噂話もありますが、ポリッシュ侯爵家直属の貴族の子女の方々から得た情報などもありますわ。ミゲル様やラウラ様と面識のある方々から得た情報です。そこそこ信憑性は有るかと思います。」



「そう、でも貴女も騒がれてしまう立場なのだから、あまり無理をしないで?ソフィアナ。」

 と、心配そうにサティアナはソフィーの手を取った。



「姉様ったらわたくしを心配してくださったのですね!嬉しく思いますわ。ですが、無理はしておりませんから安心してくださいませ。」

 と、自分に重ねられた姉の手を取り返し、笑顔で答えた。



「もう……姉妹愛はそれくらいにして、報告をなさいませ、ソフィー。」

 と、キャロラインの横槍が入り報告会は続く。



「ええと、では……。ミゲル・ポリッシュ様とラウラ・ポリッシュ様は、姉様よりも2つ歳上の男女の双子でございます。ポリッシュ兄妹のクラスにはあと2人、クラスメイトがおりまして、男性3人女性1人の、全4人のクラスでございます。クラス仲は良さそうですわね。しかし、姉様方の様にクラスメイトが揃って、いつも4人で行動しているというわけでは無さそうです。ポリッシュ兄妹がお二人で行動している事が多いようです。ポリッシュ兄妹の行動範囲ですが、お二人でいる時の放課後は、魔法訓練場にて研鑽を積んでおられる事が多い様です。ラウラ様おひとりの時は図書館に寄ってから帰宅される事が多い様ですわね。」



「ふむふむ。ミゲル様は図書館には興味がないのかしらね…」



「お二方のひととなりですが、ミゲル様は明朗快活ですが少々負けん気の強い性格。とても妹思いの兄君だそうで、成績は満遍なくこなし、3期生の中では上の中あたり。ラウラ様はあまり人前に出る性格ではないものの興味のあることには一生懸命になる方で、成績の方は少々ムラが有りますが、得意な科目に於いては3期生の中でも5本の指に入るそうです。…また引き続き調査を進めてまいりますが、初回の調査報告は以上になりますわ、姉様。」



「すごい!たくさん調べてくれたね、ソフィー。キャロルも、二人ともありがとう。」



「喜んでいただけてわたくし達も嬉しく思いますわ!」


「あ。ちなみに王都のポリッシュ邸は、こちらのお屋敷のある東区から、王城のある中央区を挟んで反対側に当たる、西区にあるとの事でしたわ。」



「どうりで登下校の時にお見かけしないワケですわね、姉様。」



「そうだね。西区ならアカデミーの裏門からの方が便利なのだったね?西区には行ったことがないから良く知らないのだけれど。どんな街なの?」



「西区には有名な菓子屋がありますわ。そこでは美味しいケーキとお茶が飲めますの。」


「確か、サティアナ様のお好きな林檎のパイも有りますわよね!」


「そうですわね!姉様、今度ご一緒に参りましょう?」


「良いね!案内してくれる?」


「ええ、ええ!いつにしましょうか?キャロルの予定とも合わせて――――」



 その後は西区の話題でお茶会は幕を閉じたのである。

 結局サティアナが西区に足を踏み入れたのはそれからだいぶ後の事であった。





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