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第3章 [10]

 

 校外実習後はじめての休日。



 その日は朝からサティアナ周辺が慌ただしかった。

 それは主に彼女のお世話係であるリリーと、勝手にお世話係を申し出た妹であるソフィアナのことである。



「ソフィー様、そちらをおさえていてくださいませ。」


「良くてよ、リリー!」


「ぃよいしょ!」


「う!」



「……はい、できたー!!サティー様。お綺麗ですよ。」


「ありがとう……でもこのリボン、ちょっと派手じゃない?」


「問題ありませんわ、姉様。とても良くお似合いですわ!ドレスで王城に召し上がらないのであれば、せめて御髪を飾るというのは間違っておりませんもの。それに、姉様の仰るほど派手でもありませんわよ?」


「そう…?」


「そうですそうです。とってもお綺麗ですし、素敵です!」


「ええ、どの御婦人や殿方にも負けませんわよ!」



「ねー!!」とお互いの掌を合わせて称え合うお世話係のふたりに向かって、サティアナは困ったように微笑んだ。




 ―――――――――――――



「ありがとうソフィー、行ってくるね!」



 待ち合わせの王宮門外の近くまで馬車で送ってもらい、一緒に乗ってきた妹に感謝の言葉を贈るサティアナであるが、ソフィアナが何故一緒に乗ってきたのかは質問しない。例え彼女がそのまま馬車で自宅に帰るだけなのだと分かっていても。



「帰ったらたくさん、お話お聞かせくださいませね〜!」


 馬車の窓から顔を見せ、そう言いながら去って行くソフィアナを見送ると、サティアナは待ち合わせの門まで歩く。

 滅多にしない編み込まれた髪に少し居心地を悪くするが、慣れるしかないとサティアナは諦めた。



 門の近くまで歩くと、ちょうどナギア・レンジと鉢合わせた。


「ごきげんようサティアナ、あら?今日の髪、可愛いねえ〜。」


 そう言うナギアも、制服の下から覗く服がちょっとお洒落だし、髪型もいつもより清楚なので、普段の彼女とは印象が違っていた。



「そう言うナギアこそ、いつもと印象が違うね。とても可愛らしいよ?」


 そう彼女を褒めるサティアナに対して、「もっと褒めて!」と主張してくるナギアである。



 二人で門の前に着き少し待つと、「ふたりとも早いのね」とエミリー・スパイラルが到着した。


 エミリーもいつもより少し豪華な印象である。普段しない耳飾りを付け、髪型も可愛らしく整えていた。


「今日のエミリーすごく可愛い!耳飾り付けてるのね。毎日して来ればいいのに。」


 ナギアがそう言うと、少し照れくさそうにエミリーが答えた。


「ローブに引っ掛かるから嫌なのよ。同じ理由で髪留めも面倒なのよね。」


「その理由、とてもエミリーらしいね。」


 普段は制服の上にローブを羽織っているエミリー。普段の彼女がまったく飾らない理由に、ふたりとも成程と頷くのであった。



 約束の時間になると普段閉まっているその門の扉が開き、シャルロッテ王女の侍女と言われる女性が現れた。


「ごきげんよう。シャルロッテ王女殿下のご友人方でお間違いございませんか?」


「ごきげんよう。はい、お見せする様にとこちらの物を殿下から戴いております。」


「失礼……はい、確認出来ました。ではこちらへどうぞ。」



 前もってシャルロッテから渡されていた物を侍女に渡すと、無事王城の中に入る事が出来た3人であった。


 いわゆるお忍び用の門の内側は、正門外から見える王城内の風景とはまったく違い、とても質素であった。転ばぬように整えられている石の階段は歩きやすいが狭く、周りを木々に囲まれ木陰から時々差し込む太陽の光が心地よかった。

 迷路の様な、また下町の様な王城下層を、侍女の後にくっついて歩く3人であるが、サティアナにとってはすべてが新鮮であり、反面また故郷の城を思わせるような雰囲気がとても懐かしかった。


「皆さま、こちらからは王宮でございます。回廊は左側通行、辻では一旦停止となっておりますのでお守りくださませ。」


「「「はい。」」」


 王宮内はそれまでの王城内とはまるで異なり、豪華なものであった。天井は高く回廊も広い。ところどころで掃除をしている人を見かけた。


 侍女の後をついて中庭に面した通路に出ると、外はとても良い陽気で真っ青な空が広がっていた。中庭は王城の中階層にあるため、いつもより少し、空が近いと感じるサティアナであった。



 4人はそのまま通路を進むと温室へ着いた。温室の中では綺麗な花々や珍しい樹木がバランス良くそれとなく整えられており、とても素敵な場所に3人はうっとりしていた。


「こちらで少々お待ちくださいませ。」


 そう言って去って行く侍女を見送ると、3人はベンチに腰掛け、「さすがは王家の温室だね」と感嘆し合った。


 サティアナがそれとなく周囲を観察すると、指示されたベンチは前室の様な場所になっており、温室の奥の方にお茶会の卓が用意されてあった。




「あ、ナギア。リボン曲がっているわよ。」


「え。お願い直して、エミリー!」


「仕方ないわね…」


「あは!くすぐったいよう〜。」


「こらっ!ンもう、動かないの!」


「怒られたぁ〜。」


「誰がいけないと思ってるわけ?」


「へいへい、ワタクシめですョ……」


「分かれば宜しい……まあ、こんなものでしょ!」


「よかった、ありがとエミリー!」


「ほんと、世話が焼ける子ね。」



 えへへ、とエミリーに笑いかけるナギアと、ナギアに対して悪態つきながらも楽しそうなエミリー。

 サティアナはそんなふたりを見て、良い組み合わせだなと目尻を下げた。


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