第3章 [4]
「じゃあ集めた枝をこの辺りに移し終えたら僕達の準備は完了だ!」
「了解です!」
野営地の設置はおおかた終わり、手の余った者たちが雑談を始めていた頃、サティアナ達が担当した煮炊き場の準備も完了したのだった。
「向こうには川が流れていて、こっちの奥は崖になっているんだ。それから――――――」
サティアナがノーズ班長から近隣の地形を教えてもらっていると、テンパー隊長からの号令がかかった。
「全員こちらへ集合せよ!」
隊員たちが集合すると、すぐに次の号令がかかった。
「まもなく本隊が到着する!諸君らは本隊を迎えるにあたり、出発前と同じように第一班から順に並んで待機せよ!自分の馬はなるべく己の近くにつないでおくように!では、始め!」
愛馬ヨルを迎えに行く途中、サティアナはラウラ・ポリッシュの近くを通らなければならず、ドキドキとうるさく主張してくる鼓動にフタをして彼女の姿を見ないようになんとかやり過ごしたのだった。サティアナがそんな様子だったので、ラウラがチラリとサティアナに視線を向けた事に本人はまったく気付いていなかったのである。
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本隊が合流すると、再び班ごとの行動に変わった。
ひとつの班はおよそ10人で構成されており、サティアナの配属された班にはもう一人の女子隊員で先輩のリンダ・チェルシーがいた。リンダは魔法師養成部の三年生である。
班ごとの時間帯、女子同士ということもありサティアナはリンダと一緒に行動しながら先輩である彼女から校外実習にまつわる色々なことを教えてもらった。
王立アカデミーにて毎年行なわれる校外実習には2種類、一般学部の校外実習と騎士養成部ならびに魔法師養成部合同の校外実習がある。
騎士養成部ならびに魔法師養成部の校外実習では、朱旗隊・黄旗隊・青旗隊・紫旗隊の4つの隊に分かれ、各隊ならびに各班の実力にはあまり差異が出ないように構成されているらしい。
「隊を編成される際の先生方の御苦労がどれほどのものか、お察し出来ますね〜。なかなか大変だと思いませんか?」
「はい、これだけの人数を上手に分けるというのは大変な事だと思います。我々の順位を付けるようなものが、…なにか点数制などがあるのでしょうね。そう言えばリンダ先輩は今年でアカデミーをご卒業されるのですか?それとも上級クラスへの編入をお考えで?」
リンダは先輩の立場でありながら、サティアナに対して敬語を使うことを止めようとしなかった。彼女曰く、これは貴族に対してのものではなく、ビッグスターホルダーであるサティアナに対する敬意なのだそうだ。
敬語を使う以外にも、庶民でありながら育ちの良さをうかがわせる点が多い先輩にサティアナは興味を持ったのであった。
「私は今年アカデミーを卒業して、来年からは騎士団で働くことが決まっているんです。母子家庭なので少しでもお母さんを楽にしてあげたくて。」
「そうですか、それは素晴らしいことですね!就職先は地元の騎士団に?」
「ええ、運良く騎士団の見習い魔法師に空きが出たので入団試験を受けたところ、幸いにも合格することが出来たのです。なので、就職して周りに遅れをとらない様に卒業までに少しでも腕を上げておかなければならないと思い、今は無詠唱の特訓中です。」
「なるほど。無詠唱はコツをつかめれば自分なりの発動が出来る様になって、そうしたらだいぶ時間を省ける様になりますからね!」
「ちなみにサティアナさんはどの程度の魔法まで無詠唱発動できますか?私は初級を終えて中級の魔法を特訓中なのですが……。」
「私は…そうですね、中級までは頑張りました。上級は、もう諦めています。」
「本当に?!……やはりビッグスターホルダーである方は素晴らしいですわね!……あの、サティアナさん。恥を承知でお願いしたいのですけれど、今度、放課後あなたのお時間のある時にでも私の魔法をみてもらえませんか?実はいま、特訓が少し行き詰まっていまして。」
「ええ。もちろん私で良ければ大丈夫ですよ。リンダ先輩、ではこの休み明け、というのはどうでしょう?あまり間が空いてもアレですし。」
「まあ嬉しい!ではこの休み明け、放課後魔法訓練場でお待ちしておりますね。」
「私も魔法訓練場にお邪魔したいと前から思っていたので、嬉しいです!よろしくお願いします。魔法の得意なクラスメイトがいますので、都合が付けば一緒に見てもらえるかお願いしてみましょうか?」
「え、そんな!私なんかの……でもせっかくなら…お願いしてもよろしいでしょうか?今はどなたのご意見でも参考にしたいので!!」
「はい!先輩にとってもきっと良い経験が積めると思います。彼女は私よりも知識が豊富ですから!」
クラスメイトのエミリー・スパイラルは、こと魔法に関してクラスの中では頭一つ抜きん出て優秀である。一般的に体力と魔力はおよそ比例するため、魔力量自体はサティアナの方がエミリーよりも上であるが、エミリーは自分の魔力量を良く理解しており、かつ魔力操作の技術が抜群であるためとても効率の良い魔力の使い方を知っている。無詠唱魔法は、詠唱時間を短縮出来るが反面魔力を余分に使う。騎士団所属の魔法師としてはどの様な戦い方が良いのか、自分よりも魔法に通じている彼女ならば、たくさんの選択肢をリンダに授ける事が出来るかもしれない。
サティアナはまだ行ったことが無かったが、おそらくエミリーはすでに魔法訓練場に出向いたことがあるかも知れない。エミリーに声をかけたらきっとナギアもついてくるだろうな、とサティアナは想像したのだった。




