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第3章 [2]

 

 集合予定時刻となり、サティアナたちが配属された紫旗隊を監督する教師たちが続々と登場すると、1人の生徒が号令台に駆け上がり叫んだ。



「全員、こちらへ集合せよー!」



 号令を聞いてサティアナも樹木に繋いだヨルから離れ、号令台へ向かって駆け出した。



 号令台に向かって生徒達があらかた集合すると、先ほどの生徒が再び叫んだ。



「我が声に傾聴せよ!!

 今回、この紫旗隊(しきたい)の隊長を任された幹部騎士養成修養クラス3期生オルシュ・テンパーである!

 これから諸君と共に校外実習に向かうわけであるが、その前に班割りを確認する!

 隊員諸君は、こちらの右手から第一班とし、最終第十班まであらかじめ指定された班へと合流、整列せよ!

 騎馬にて参加の者は最後尾に並ぶべし!以上である!

 では、始め!!」



 隊長であるオルシュ・テンパーの号令がかかると、全員速やかに移動し始めた。

 サティアナは第十班、ホセは第九班の、共に最後尾へ。先ほどの美しい彼女はおそらく第一班か第二班あたりへ移動したのだろう事をサティアナは視界の端で確認した。



(ダメダメ!あの人の事は気にしない気にしない気にしない……)



 サティアナはそう心の中で唱えた。明らかに今の自分は意識が乱れている。いつもはこんな風ではないはずである。ふと気がつくと目で探してしまう。見つけると目が合わないように逸らし、少し経つとまた探す。それを何度となく繰り返しているのである。落ち着けなければ、自分を。取り戻さなければ、いつもの自分を。

 今日はこれから校外、しかも王都の外壁を抜けるのであるのだから。



 バチン、と自分の両頬を両手で叩いて喝を入れたサティアナを、少し気遣う様な顔でホセが見ていたのだった。




 しばし間が空き、隊長であるオルシュ・テンパーが再び叫んだ。

「全員整列!―――ただいまより各班の班長は、渡された名簿をもとに己が班の点呼を取れ!なお、班長は腕章をしているので隊員諸君は己が班の班長をしっかり覚えるように!では始め!」



 少し待つとサティアナの前にも班長が現れた。

 中肉中背だが少し幼さを残したとても爽やかな印象の殿方である。

「おはようございます、私はピーター・ノーズ。第十班の班長だ。君は、サティアナ・アンハードゥンドかな?」



「はい、サティアナ・アンハードゥンドです。ノーズ班長、どうぞよろしくお願いいたします。」



「今年一年間君は僕の班員になるからね!どうぞよろしく!」

 ピーターが右手を差し出したので、サティアナも右手を差し出し握手を交わした。



 ピーターが先頭に戻り少し経つと、再び隊長からの指示が出た。




 まず騎馬隊員は騎乗し広場の入口付近で待機とのこと。そのまま騎馬隊としてが先に目的地に出発する。その際、騎馬隊員はアカデミー側が用意した荷物を分担して自分の馬に積み目的地まで運ぶという任務を預かったのだった。

 サティアナもヨルを連れ入口付近に向かった。自分に与えられた分の荷物をヨルに乗せると「ヨルも頑張ってね。一緒に頑張ろう!」と彼の首筋を撫でた。

 そしてヨルに騎乗すると、サティアナはホセとともに出発したのだった。




 ――――――――――――




 オルシュ・テンパー隊長と引率の教師数人を先頭に紫旗隊の騎馬隊は王都東門をくぐり、都外へ出た。

 そこから東の街道を進み、途中街道を右へ折れしばらく進むと『東の森』と呼ばれる森林地帯の入口に到着した。



「目的地に到着!これよりこの場所に野営地を設営する!順番で荷物を降ろすので一列に並ぶように!荷物を降ろしたあとは自分の班長と合流し指示を受けるように!始め!」


 隊長の号令を受けて皆なんとなく一列に並んだ。サティアナは自分の少し前にあの美人がいるのをすかさず確認し、次に班長のピーター・ノーズを探した。




「――――今日はラウラ様の美しいお姿を見れるなんて光栄だな。しかもお前隣の班じゃないか、この幸せ者め!」



「ふん、羨ましいのだろう?」




「せいぜい見惚れて怪我しないようにすることだな!」




「ああ、せいぜい気をつけるとするさ!」




 サティアナは、自分の後ろに並んでいた隊員がその後ろの隊員と話している内容から、あの美人の名前がラウラと言うらしいということを知った。



(ラウラって……確かキャロルとソフィーが話していた双子のスターホルダーだったかな?………そうか、あの人はスターホルダーなんだ。)




 そう思った途端、込み上げて来るものがあり、慌てて制した。




(……危なかった……ホントになんとかしなくちゃ。私が怪我しちゃう!)




 ラウラのことは極力見ないし考えないようにしようと改めて思うサティアナであった。

 預かっていた荷物を降ろしノーズ班長と合流したあと、彼とともに煮炊き場の設営に回されたサティアナであったが、班長の指示のもと地属性の魔法を駆使し立派な煮炊き場を作り上げようとしていた。

 それを見ていたテンパー隊長がサティアナ達に声をかけてきた。



「なるほど君がサティアナ・アンハードゥンド君だね?見事な魔法の技だな。ピーター、君には楽をさせてしまった様だな。」


「オルシュ隊長!」

 ノーズ班長が振り返り目を丸くした。


「テンパー隊長、お褒めにあずかり光栄です。始めまして、サティアナ・アンハードゥンドです。よろしくお願いいたします。」

 サティアナは驚きつつも自分の隊長に対して丁寧に挨拶を返した。



「ん…おや?君は……。もしかして君は入学したての頃、運動場で剣舞をしてはいなかったか?君によく似た人を見たのだが。」



 まさかとは思ったが、言い逃れは出来そうに無いと観念したサティアナは正直に白状することにした。


「ああ…ええ、はい、それはおそらく私です。あの時はお見苦しいものを…」


「いやいや、あれはとても素晴らしい舞だった!アーサー殿下も大層感心なさっていたのだ。君は恥ずかしがってそそくさと逃げてしまったけれどね。」



「え?も……もしかして、あの時私にお声がけくださったのは、アーサー王子殿下であらせられました……?」



「ああ。アーサー殿下だよ。」



(ええぇ〜、なんか高貴そうな人だったけれどまさか王子様だったなんて!どうしよう、無礼だったよね…)


「…田舎者ゆえ王子殿下の御尊顔を拝見したことがありませんでして、とんだご無礼を……」



「ああ、気に病むことはない。アーサー殿下はああやって入学したての新入生を驚かせては楽しんでいるのだから。あの時の君の反応が皆とは一味違うものだったので、あの御方はとても喜んでいたのだぞ。」




「な、なるほど……お喜びいただけた様なら良かったです。ですが…」




「んむ、だがこうして君の名を私が知った以上は、殿下にも君の名を報告申し上げなければならぬかな。殿下は本日朱旗隊(しゅきたい)を率いていらっしゃる。今日の事を聞いたら残念がられるだろうな。」



「はい、もちろんでございます。…テンパー隊長、どうかよろしくお伝えお願いできますでしょうか?」




「ああ、それは任せてくれ。悪い様にはしないから。…じゃあアンハードゥンド君、今日はピーターをよろしく頼むよ。彼とは親戚なのだ。」




「はい、頑張ります!」


 サティアナは思わぬ御縁が繋がってしまったなと思ったが、悪い事では無さそうなので今回の事の成り様を見守ることにした。




「隊長とは御親戚なのですか?」


 なんとなく気まずそうにしているノーズ班長にサティアナの方から話しかけた。



「そうなんだ。母親同士が姉妹なのでね、小さな頃からお互いの家を行き来したりしていた。君にもそういう親戚がいないかい?」



「私の母の姉妹は遠国にいますのでなかなか会うことはかないませんが、叔父の息子とは良く会います。しかし年が離れているので……」



「そうなんだね。では一緒に遊んだりはなかなかしないかな?私とオルシュ様は幼い頃から年に数回遊ぶ仲だったのだよ。今では私の目標とする方でもあるんだ。」



「良き御縁があったのですね。」



「そうなんだ。ありがとう、では作業に戻ろうか。君のおかげでおおかた準備は終わったけれど、まだあるんだよ。最後の仕上げ。」



「なんですか?」



「薪集めさ!今度は僕が活躍しなければね!」




 そうしてサティアナはノーズ班長とともに薪を集めに森へ入って行くのであった。



遅くなってしまいすみません。なかなか亀さんですがこれからもお付き合いいただければ幸いです。

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