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第2章 [25]

 

 人だかりはサティアナ達のいるテーブルから少し距離を置いてその周辺をぐるっと囲んでいた。明らかに彼女達を目当てに出来ているものであった。


「手でも振ってみるか。」

 エイデンがそう言って女子達に向かって手を振る。すると途端にキャー!!という黄色い声が上がる。その反動の大きさに手を振った本人も少々驚いていた。

 予鈴が鳴ったというのにキャーキャーザワザワと人だかりは増えつつあった。


「この状況、どうやって収拾したら良いだろうな?」

「まあ、とにかく我々がここを離れなくちゃならなそうだね。」

「食器を片付けに行きたいけれど、無理かなあ?」

「う〜ん、どうやってあの人だかりを抜けたら良いだろうね?」


 皆で相談話を始めたところ、シャルロッテが発言した。


「ここはわたくしが先頭に出るのが良いと思うわ。皆はわたくしの後ろに続いてちょうだい。ソフィアナさん、キャロラインさん、今日は楽しかったわ。機会があればまたぜひね。…ではガイ、お願いしますわね。」


 ガイが頷き、シャルロッテの前に出た。


「では、ガイ殿の食器は私がお持ちいたしましょう。殿下に無礼を働く者がいるとは思いませんが、一応食器を持つ者と持たない者で役割分担しましょうか。」


「そうしてくれると有り難い。」


 サティアナとガイの会話を聞いて、なんとなく食器は女子3人が受け持つ流れになった。


「シャル様、お心遣い感謝いたします。我々も食器を片付けたら参りますので。」


 サティアナの言葉に頷き、ソフィアナとキャロラインに笑顔で手を振ると、シャルロッテは歩き出した。


 シャルロッテに引きずられる様に周囲の人だかりも移動し始め、サティアナ達はそれによって生まれた隙間を縫ってそそくさと食器を片付けに動いた。


 やっとの事で食器を片付けるとそのまま食堂を出て、人が少なくなった廊下の隅でソフィアナ、キャロラインの二人に別れを告げ、サティアナ、エミリー、ナギアの3人は次の授業へと急いだのだった。


「今まであんまり考えた事なかったけど、うちのクラスの男子達って人気あるんだね!」


「そうよね!でも一番はやっぱりシャル様ね!着いたらもう一度お礼を申し上げないと!」


「ほんと!あの方が人だかりを連れて行って下さったからね!」


 と3人は急ぎ足で校舎の外へ出ると、めざめの神殿へと駆け足で向かったのだった。



 ――――――――


 サティアナ達が神殿の前に着くと、ちょうど本鈴が鳴った。

 ほんの少し先に着いていたシャルロッテに感謝を述べていたところ教師達が神殿の前に到着し、午後の授業のはじまりである。


 神殿内に入ると、サティアナはまず数回深呼吸をして精神を整えた。

 前々回の修行中に意識を失い、前回は念のためこの授業を休み、そして今日である。

 サティアナは、霊気を使い過ぎて意識を失うことに対する恐怖感というものは感じていなかった。が、それにより周りの人たちに心配をかけることに心苦しさを感じていた。

 しかし、それはスターホルダーである己には付いて回る事なのだと割り切る事にした。周りに心配をかけてしまうのはある程度仕方のない事なのだと。その分、己が必ず回復すれば良い。しかもなるべく早期に。

 そうなればやはり修行あるのみである。

 そういう考えにたどり着き、それでも感じるであろう心苦しさには目をつむることにして、それについては悩むのをやめたのであった。



「―――――ふう。うん、始めようか。」


 今日からは、より現実的に直立姿勢で霊力の発動に取り組むことにしていたサティアナは、壁にもたれるようにして立ち、両の掌を合わせ祈るような姿勢を保つ。

 生徒達にはそれぞれ思い思いの修行の仕方が有り、決まった型の有る生徒もいるし決まった型の無い生徒もいる。

 今までとは違う姿勢で修行を始めたサティアナを、二人の教師も静かにそれぞれの視線の隅に入れ見守っていた。


(今日の目標は、この姿勢で霊気を探り当てること。できたら霊穴を開くまでいきたい!)


 そう決めて挑んだ修行であったが、やはり霊気の流れを見つけることが上手く出来なかった。上半身の循環だけで霊気の流れを見つけるコツが、分かりそうで分からない。目標に届きそうで届かない、めざめの神殿に来たばかりの頃を思い出した。


(もっと集中して…霊力は命の源…いのち…心の臓…こころ…)


 そう考えながら集中していると、サティアナの両掌は自然と胸の真ん中、心臓辺りに動いていた。

 己の掌の温かさを己の胸部で感じる。


(あの光を、見つけたい!)


 意識を失うまで感じていた、あの輝く光の粒と、それを編んで作り出した自分の霊気。あの時の感覚を心の底から呼び起こさんと、サティアナは必死にあの時の感情と感覚を心の中へたぐり寄せた。


 その瞬間、自分の胸のあたりがパアッと光るのを感じ、同時に掌がグッと熱くなりチリチリと痛みを感じた。実家の神殿でトージさんの短刀に初めて触れた時に感じたものと同じような感覚であった。

 そして、それは自分の星印(スター)と霊穴が直接繋がったことを意味していたのだと初めて理解した。


(これは!……そうか、あの時の私。トージさんのお手引で知らず知らず霊穴に触れていたのですね。…この感覚を忘れないようにしないとね。)


 サティアナが今の感覚を覚えようとした途端、霊気が消えて代わりに少々の疲労感がやって来た。


「あれ?……消えちゃった。…よし、もう一度!」


 先ほどの工程を思い出して、同じようにやってみる。

 するとまた自分の星印と霊穴を繋げることが出来た。

 しかし意識をほんの少し逸らしただけでまた霊気は消えてしまった。

 その後何回か繰り返したが、何回試しても同じ結果になったのであった。


「う〜ん、霊気を発動させるっていう目標は達成出来てると思うんだけどな。いかんせん続かないなぁ。発動方法は今までのよりも早いし、これで良いと思うんだけどな。」


 疲労感が増してきたので、サティアナは一旦休憩することにした。

 壁にもたれながら他の生徒の様子を観察する。

(いま霊気を発している人は…)生徒の掌付近を見てみたがサティアナには分からなかった。

(そういえば、先生は私の霊気を感じ取ったという様なことおっしゃっていたっけ…人の霊気を探知する技とか有るってことかな……まあ今の私では到底無理ってことだよね、自分の霊気さえままならないのだから…。)

 思いながら少し落ち込んだサティアナであったが、しかしそう落ち込んでいても仕方がない。


「主様もおっしゃってた。私の霊気をどうにか出来るのは私だけなんだ。主様をいつまでもお待たせする訳にいかない!よし、頑張ろう。」


 サティアナは自分を鼓舞し再び修行に励むことにしたのだった。


投稿が遅くなってしまっていて申し訳ありません!

閲覧くださり、いつもありがとうございます!

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