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第2章 [24]

 


 それから3日後のお昼休み。

 いつもならば混雑する時間帯を終えたはずの大食堂は、とても混雑していた―――――――




 ―――――サティアナ達が大食堂に着くと、すでにソフィアナと彼女の親友キャロライン・パッカーが手頃な席を準備し終えていた。

 ビッグスタークラスの面々が食事を選んでいる間にサティアナはソフィアナに挨拶しに行く。


「ソフィー、お待たせ。席の準備ありがとうね。ちょっと食事を選んでくるね!」


 サティアナは以前ソフィアナから教えてもらった甘辛炒めに決めていた。


 受付に行き甘辛炒めの札を受け取るとクラスの皆に合流した。


「サティアナは何にしたの?」

 ナギアに質問され、札を見せる。


「あ、私も同じー!たまらなく美味しいんだよね!」


「あ、そっか。ナギアの地元の方の料理だったね。」


「うん!よく作ってもらったな。懐かしくて選んじゃった。」


「ナギアはもうずっとこっちに住んでいるの?」


「うん。こっちに来てもう5年くらいかな。中等部からこっちだからね。」


 ナギア・レンジは貴族の生まれではない。レンジ侯爵領内で生まれた庶子だった。父は冒険者兼町の防衛団員、母は魔法師兼町の薬師である。これはスターホルダーとして少々異例なことである。しかし例が無いわけではなく、一定数出現する事案であり、庶子からスターホルダーが出た場合はその土地の領主が後見となり保護するか、その分家筋の貴族に養子縁組されることが王国令により決められていた。

 ナギアは10歳を迎えると王国令によりレンジ侯爵家の分家へ養子縁組され、レンジ姓を名乗ることになったのであった。



 話しているうちに二人の料理が用意出来たので、サティアナとナギアはそれを受け取ると皆に続いてソフィアナの待つ席へと移動した。


 ガイが椅子を引き、まずはシャルロッテが上座に座る。シャルロッテが座ると残る面々が適当な席に着いた。


 皆が席に着くと、コホン、とサティアナが咳払いをした。


「殿下、紹介いたします。こちらが私の妹、ソフィアナ・アンハードゥンドです。そしてこちらは妹の親友であるキャロライン・パッカー嬢です。……非公式な場なので簡単な自己紹介になりますがご了承くださいませ。皆さんも、同様によろしくお願いします。」


「…ご紹介にあずかりましたソフィアナ・アンハードゥンドでございます。シャルロッテ殿下、お目にかかれまして恐悦至極にございます。どうぞよろしくお願いいたします。そして……ビッグスタークラスの皆様にもお目にかかれまして大変光栄にございます。どうぞよろしくお願いいたします。」


「み、右に同じく、シャルロッテ殿下、そしてビッグスタークラスの皆様にお目にかかれまして、大変光栄なことで恐縮しております!キャロライン・パッカーと申します。皆様どうぞよろしくお願いいたします!」


「ふふ、可愛らしいこと。」

 シャルロッテが女神のごとき微笑みをふたりへ返すと、ソフィアナとキャロラインはその笑顔に見惚れ、しばし思考停止となる。


「ふふふ、あるあるだね。」とサティアナの反対側に座っていたベンジャミンがサティアナに笑いかけ、ベンジャミンの隣のホセも口元を和らげた。


 その後ビッグスタークラスの皆が一人ずつ自分の名前を紹介し、最後にシャルロッテが紹介を終えると、やっと食事をとり始めた。


「皆さんせっかくの食事が冷めてしまいましたね、段取りが悪くて申し訳ありませんでした。」とサティアナが詫びると、


「気にすんな。それにここの食事は冷めても美味いように出来てるから大丈夫だ。…うん、美味い!」とエイデンがわざとらしく笑顔でおどけてみせ、それで皆が朗らかになった。


(エイデン・クエンチ……最初はうるさい奴だと思ったことを謝ります。ありがとう。)

 サティアナは心の中でエイデンに対して謝罪と感謝を示したのだった。


 ソフィアナとキャロラインは一足先に昼食を済ませた後だったので、誰ともなく彼女達にたわいのない質問をしそれを彼女達が答える形でその場は流れていった。

 彼女達に対する質問がひと区切りしたところで、オリバー・カットがサティアナに投げかけた。


「アンハードゥンド。すまんがちょうど良い席なので皆に聞きたいことがあるんだが、良いかな?」


「うん、どうぞ?」


「合同実習の話なんだが……。皆はもう馬を用意出来てあるのだろうか?私はまだ用意出来ておらず、用意する伝手さえなくて実は困っているのだ。それで皆の知恵を借りたいんだが、誰か良い馬商人などを知らないか?」


 オリバーの発言を受けて、それぞれ馬の用意が終わっているかどうかを話し合う。


 シャルロッテとガイは準備中、ベンジャミンとホセは持ち馬があり、エイデンは自宅の馬を使うとのこと。

 エミリーとナギアはアカデミーに申請して借り馬することになっているのだとか。


「私達とりあえず今回はアカデミーから馬を借りることにしたの。来年はどうするか分からないけれどね!」

 ナギアがエミリーの方を見ながらそう言った。


「それに、自分の馬を持っても今の私にはあまり必要性が感じられないのよね。」

 エミリーもナギアの方を見ながらそう言った。


「なるほどね〜、借りるという選択肢も有りだよね!…ちなみに私は次の休みに隣町にあるという馬商人の所へ行く予定だよ。もし馬を買うつもりなら私達と一緒に行っても大丈夫か、うちの執事に聞いてみますか?」

 サティアナはオリバーに提案した。


「それは助かるな…こちらも執事に聞いてみよう。」


「でも、もし連れて行けなかったらどうしよう?他に策を練らないと。」


「そうだな…」


「…あの~、そういう事であれば私、キャロライン・パッカーがお役に立てるかも知れません。うちの商会でも懇意にしている馬商がありますので!」

 少々控えめにキャロラインが挙手しながら言った。彼女の実家は商家である。貴族同士の話し合いに口を割り込ませるつもりはなかったのだろう。ソフィアナにしても、まだ知り合いとも言えない目上の人たちが話し合う場に口を挟むつもりもなかったのだろう。

(私が気づくべきだったな)とサティアナは一瞬反省をした後、キャロルに助け船を出した。


「キャロル!そうだよごめんね、私が気付かなくて!…皆さん、この子はパッカー商会の御令嬢なんだよ。最初からキャロルに聞いてみたら良かったんだよね。」


「いいえ、いいえ謝らないでくださいまし、サティアナ様…ただ、お悩みの様だったので差し出がましくも挙手させていただいたのでございますから!それで…カット様。もし私どもの商会にお任せいただけるのであれば、次の休みに私ども商会の馬車にて懇意にしている馬商までお連れさせていただきますが、いかがですか?」


「おお!それはとても助かる!…では、この件はパッカー嬢にお願いするとしようか。よろしく頼む。」


「かしこまりました。帰宅後、早速父に話を通しておきますので、明日あたりカット家のお屋敷に連絡が行くと思います。」


「了解した。」


 オリバーの悩みも解消された頃、昼休み終わりの予鈴が鳴り、気づけば周りは人だかりが出来ていたのであった。



すみません、ナギアは中等部からアカデミーに通い始めました。初等部と書いてました、誤りですー。

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