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第2章 [23]

 

 屋敷に帰ってその日は早めに休んだサティアナであったが、次ぐ朝には普段通りに起床し、家人に心配されながらも普段通りにアカデミーに登校することが出来た。

 いつもより少々早めに登校したサティアナが教室に入ると、シャルロッテ王女とその護衛ガイ・プーリー、それにエミリー・スパイラルの3人がすでに座っておしゃべりをしていた。


「殿下、おはようございます。それと、皆さま、昨日はご心配をおかけしました。」


「サティアナ、もう大丈夫なのですか?」


「ええ。昨日馬車で迎えに来てもらって、屋敷では早めに休んだのが良かったみたいです。本調子とは行きませんが、今日の科目は問題ないと思います。」


「びっくりしたわよ、気がついたら貴女がいないから…」


「私もびっくりしたよ、気がついたら寝台に寝かされていたから!ははは。」


「まったく、冗談が言えるくらいには調子も戻っているって事ね。プーリー様が貴女を運んでくださったそうだから、きちんとお礼を申し上げなきゃダメよ?」


「え!…そうだったのですか、ガイ殿、お世話をかけてしまい申し訳ありませんでした。ありがとうございます。」


「謝らなくていい。あの時間はいつも、神殿の周辺を見廻る事くらいで実際には私は殿下の護衛をしていないのだから。それより貴女に大事がなくて良かった。」


「ガイの言う通りですわ。サティアナ、くれぐれも無理はなさらないでね。」


「ありがとうございます、シャル様。」


「そうだわ。昨日お母様から、お茶会をいつにしようかしらと打診されたわ。わたくしたちの予定に出来るだけ合わせてくださるそうよ。」



「王妃様のお心遣いに心からの感謝を。…であれば、合同実習の後あたりで調整させていただいたらいかがでしょうか?」


「私もそれで賛成です。その頃ならばいろいろ落ち着くでしょうからね。」


「そうですね、ではナギアにも相談して決めるとしましょう。」


 ひとつ話が落ち着いた所で男子生徒が何人か連れ立って教室に入ってきた。


「「「おはようございます、シャルロッテ殿下。」」」


 教室に入った時にシャルロッテが居れば、まず王族であるシャルロッテに対して朝の挨拶をする。これは貴族にとっては暗黙の掟であるため誰もが行うことであった。

 シャルロッテの方もそのあたり気を使っており、いつもは始業時間直前に教室に入るのであるが、今朝はサティアナを心配してずいぶんと早い登校であった。



「サティアナ・アンハードゥンド、もう大丈夫なのか?」


 エイデン・クエンチがサティアナに話しかけた。


「ええ。本調子とはいかないけれど、問題ありません。ご心配おかけしました。」


「そうか、ならいいけどな。無理はダメだぜ!」

 人差し指をビシッとサティアナに向けながら、エイデンが言い放った。


「これ、僕の地元でよく使う薬草なんだけど、よかったらどうぞ。回復薬としてお茶にして飲んだりしているよ。」

 ベンジャミン・ガンタップが小さく頷きながら小袋を差し出した。


「ガンタップ、ありがとう。いただきます。薬草と言うと、ぬるめのお湯が良いのかしら?」


「うん、ぬるい湯で淹れる方が苦みが少なくて美味しいよ。他には蒸して湯気を吸い込んでも良い。」

 優しげな笑顔に、サティアナも少し癒された。このベンジャミン・ガンタップという青年は、自分の妹に紹介しても良いと思うくらいに、この時点でサティアナは彼のことを気に入っていた。なので、サティアナはつい思ったことを口に出してしまった。


「ねえガンタップ、変なことを聞いても良いかな?」


「ん?何かな?」


「貴方はどなたかと婚約しているのかな?」


「ど、、どうしたの?!急に!!」


 周りに居た者達も驚いていた。


「あ、いや、もし居ないなら私の妹とか、どうかなって……。あ、ごめんね、急に!!」


「いや……びっくりしたなぁ、もう。……婚約者はいないよ。早く選べとは言われているんだけどね…うん。」


「あ、そうなんだ。じゃあ良かったら今度うちの妹に会ってみない?話だけでもしてみてよ。」


「……うん、いいよ。君の妹さんなら。君も一緒に居てくれるなら。」


「俺も会ってみたいな、サティアナ・アンハードゥンドの妹さん。」

 急に会話に混ざってきたエイデンがそう言うと、


「私も会ってみたい。」

「わたくしもお会いしてみたいわ。」

「…自分も。」


 エミリーとシャルロッテ、それになんとホセ・ツイストまでもが挙手したのだった。


 そしてその日の下校までにはビッグスタークラスの生徒全員でソフィアナに会うことが決定したのだった。


 その日の夕食後。

 サティアナはソフィアナを誘い、ラウンジでお茶を飲むことにした。


「姉様、今夜は机に向かわなくて良いのですか?」


「ええ、今日はちょっとソフィーに相談したい事があって。」


 そう言って、サティアナがその日学校でした会話の内容をソフィアナに伝えると、ソフィアナも少し恐縮してしまったのだった。


「…わたくしも姉様の御学友様方には追々お会いいたしとうございましたが、しかし…、大丈夫でしょうか?皆様の前に急にわたくしの様な者がしゃしゃり出る様な真似をしても……。」


「大丈夫だよ。独りでは無理そうならキャロルに声をかけても良いし、クラスの友達を連れて来てくれても良いよ。こちらの皆にはそう伝えておくから。」


「それはなんともありがたいお言葉ですわ。では姉様のお言葉に甘えさせていただきまして、キャロルを連れて参りましょう。それならわたくしも心強いし彼女もきっと喜びますわ。」


「良かった。では、待ち合わせはどうしようか?何処か良い場所はあるかな?殿下もご一緒にいらっしゃるし、目立つのはこの際仕方ないとして…。」


「でしたら姉様、大校舎の食堂で待ち合わせるというのはいかがでしょうか?校外で待ち合わせるのは難しいでしょうし、大食堂であれば我々姉妹が一緒に食事を取っても、周囲の者も納得できますし、妥当でしょう。」


「うん、やっぱりそうだよね。それが良い!明日殿下に聞いてみて、不都合が無ければそうしよう。」


「楽しみにしておりますわ!」



 そのまましばらく食後のお茶をたのしむ二人であった。




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