表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/71

第2章 [20]

 

「さてじゃあ、ソフィーが求める内容の本があるかを店員さんに聞いてみる?」


「そうですわね…。いいえ姉様、やはり一度席に戻りましょう。わたくし、席のそばにあった教養の書棚が気になりますの。」


「ん、了解した。」


 二人は部屋を出ると、一度自分達の席に戻ることにした。


 サティアナが来た通路を迷うことなくどんどん戻って行くので、ソフィアナは感心したのだった。


 しかし席のそばまでやってくると、サティアナはソフィアナの方を振り返りこう訊ねるのだった。


「ねぇソフィー、私たちが通されたのって、ここの席だった?」


「ええ、そこで合っていますわ姉様。ふふ」



 席まで戻る順路はきちんと覚えていたのに、どの席だったかという事に自信を持てない少し間の抜けたサティアナを見て、こういう点も可愛らしい方だわ、と微笑むソフィアナであった。



「では姉様、わたくしはそちらの書棚を少し見てまいりますので、お休みになっていらして。ついでに店員にお茶の用意をお願いしてまいりますわ。」


「ありがとう、いってらっしゃい。ごゆっくり。」



 ソフィアナが席を外したあと、独りになったサティアナは階下の料理人たちを観察することにした。


 皆それぞれの持ち場で一生懸命仕事をしている。


 野菜などの下ごしらえをする者、煮込み料理の火加減を見る者、焼きもの料理を作る者、出来た料理を皿に盛り付ける者、おそらく洗い場から持って来たであろう皿を元の場所に戻す者……。

 その中でひときわ存在感を放つ初老の男性がいた。

 周りの者に指図しながら、味付けや盛り付けなどを確認し、料理の出来を決定づけているであろう瞬間に必ずそこにいる者……つまり彼が料理長であろうと思われた。


「…きっとあの人がこの舞台の主役なんだな。」


 表情をくるくると変えながら、明るく朗らかに、時に厳しく指導しながら彼らの料理を作ってゆく様のなんと魅力的なことか。


「料理人て、すごいなあ……己の腕ひとつで私たちを幸せにしてくれるのだもの。尊敬しちゃうな。それにしても、さっき食べたお肉、美味しかったなぁ……」


 サティアナが昼ごはんの余韻に想いを馳せてからしばらくすると、お茶の良い香りとともに店員がやって来て、素早くお茶の準備を整えた。


 店員が淹れてくれたお茶をひとくち含むサティアナ。するとたちまちそのお茶がサティアナにとっての素晴らしい出会いになった瞬間であることを彼女自身感じ取り、思わず店員に訊ねるのだった。


「美味しい!……あの、この茶葉を持って帰ることは出来ますか?とても気に入りました。家でも飲みたいな。」



「ええ、こちらお持ち帰りしていただけます。1袋でよろしいですか?」


「あ、では2袋よろしくお願いします。」



(今日はお休みの日だから、帰ったら家のみんなにも淹れてあげよう。母上へのお礼のお手紙にもこのお茶を添えよう。今日はとっても良い日だ!)


 美味しいお茶と、甘いもの。午後の幸せを噛みしめながらお茶をたのしんでいると、


「ああ、良い香りですわ。どちらの茶葉かしら?」と、ソフィアナが戻ってきた。



「とても美味しいよ〜!いま淹れてあげるね!」


 サティアナは、いつも自分にそうしてくれる様に、妹にお茶を淹れてあげるのだった。ソフィアナも嬉しそうにサティアナの淹れるお茶を待ち、淹れ終わるとひとくち含んだ。


「ん!とても美味しいですわね、姉様!」


「でしょ〜?思わず私、お持ち帰りをお願いしちゃったよ。家に帰ったらみんなにも淹れてあげようと思って。あと母上にも送ろうと思って二つ頼んだよっ!」


「さすがですわ姉様。お母様にお手紙をお出しになるとき、わたくしも一緒に出させていただきたく思うのでお声がけくださいませね!わたくしもお母様宛に送る書物がありますの。」


「わかった。近日中には出そうと思ってるよ。」


「かしこまりましたわ。」


「それで、ソフィーの探している物はあったの?」


「ええ、やはりこちらに戻って正解でしたわ。あちらの棚の物で大体満足しました。もう少し深堀りした内容の物は別の部屋にあるそうですが、今日のところはあれで充分ですわ。それよりもこのお茶を楽しみましょう。それで時間も良い頃合いと成りましょう。」



 それから二人はソフィアナが見つけた本の内容について話し、ソフィアナの今後の見合いについての話に花を咲かせたのだった。



 ―――――――――――――



「ああ〜、楽しかったね〜〜!今日は連れてきてくれてありがとう、ソフィー。」



「いいえ、わたくしこそ。姉様を独り占めできて光栄でしたわ。また来たいですわね、今度はキャロルも一緒に。」



「いいね!機会があれば。……すっかり日も傾いてきてしまったね〜。」



「ええ、馬車を見つけましょう。」



 荷物を持った二人は、通り沿いで客待ちをする馬車を見つけ、別宅までお願いすることにしたのだった。



 帰りの馬車では購入した地図を広げながらその通り道沿いの店の情報などをソフィアナから教わり、少しずつであるが王都の市街地情報を頭に入れていくサティアナなのであった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ