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第2章 [11]

 

 ―――――――――


 ガイ以外の全員が扉の内側に入ると、ゆっくりとした動作で扉が閉まった。一行は通路を奥へと少し歩く。すると階下へと続く階段が現れた。階段を下った先には広い空間が現れた。

 空間の中央部を見ると一段高くなっている場所があり、円周上に突き立った柱が何かの儀式をする場所であるようにサティアナには感じられた。中央部の天井は突き抜けており、太陽の光が優しく降り注いでいた。



「えー、ここが『めざめの神殿』だ。この部屋の他にもたくさんの〈修練場〉と呼ばれる空間があるから、迷わないように気を付けてくれ。まぁ、しばらくはこの〈修行場〉と呼ばれる空間での修練になると思うから、君たちが迷う心配はまだないだろうけどな。

 それでだな。えー、今日はもう少しこの場所で授業をします。何をするかと言うと、異能力覚醒に必要なチカラについての勉強をします。」

 と、レイズ先生が説明した。

 そして。


「ちょっとみんなここに横一列に並んでみてくれ。」


 レイズ先生がそう指示すると、生徒達はほんの少し間隔を空けて横一列に並んだ。


「えーっとじゃあ、今から私とアニール先生があるものを見せるから、君たちは我々を少し観察しておいてくれ。なお、この空間で見聞きした出来事は口外無用である。このことは厳守するように、いいね?」



 そう言うとアニール先生とレイズ先生は少し集中し始めた。二人とも腰の前で掌を上に向けている。

 すると、二人の掌が光り、そこから光がフツフツと湧き出しているように見えた。

 生徒たちは皆ただ黙って観察していた。


 レイズ先生が自分の掌を眺めながら言った。

「これは、霊力、霊気、オーラなどと呼ばれるものだ。魔力は身体から湧き出すモノだが、霊力は魂から湧き出すモノだと言われている。人間は誰もが霊気を保っている。しかし普通の人間の霊力は我々ビッグスターに比べるととても少ないし、それを操ったりはできないものだ。我々ビッグスターは異能力を使うときに魔力と霊力を糧とする。君たちの中に誰か他のビッグスターが異能力を使うのを見たことがある者はいるかい?」


 サティアナが挙手をした。

 レイズ先生がサティアナに問う。


「サティアナさん、君がそのビッグスターを見たとき、異能力を使った後でその人はどうなったかな?」


「はい。私が見たのは叔父ですが、叔父はとても疲れてその場に座り込みました。異能力を使った後はいつもそうなるのだとおっしゃっていました。」


 レイズ先生はサティアナを指差し言った。


「その通りだ!ありがとう……いいかい、みんな。彼女の言う様に、異能力を使った後のビッグスターはすぐに休まなければ動けなくなってしまうんだ。なぜかと言うと、霊力を使うからだ。霊力を使うということは命を削るということだ。人間は霊力が無くなると死に至る。ビッグスターの異能力は己の魔力だけでなく己の命をも糧にして発揮する力だと心に刻みなさい。そう簡単に使って良い力ではないんだよ。」


 先生方を見ると掌の光は消えており、その代わりに顔面には少し疲労感が漂っていた。



「でも、そう簡単に使えない力ではあるが、掌に星を持って生まれて来た我々にはその異能力を使いこなし、その異能力でもって民を守るという使命がある。使わなければならないときに使いこなせる様に修行を積まなければならない。そして異能力を使っても、その後休めば戻る様に、なるべく早く回復する様に訓練するんだ。これから君たちがアカデミーで学ぶのはソレだよ。」



 生徒たちはレイズ先生の言葉を受け止め、真剣な、少し重々しい雰囲気になっていた。

 レイズ先生の言葉を受けて、次にアニール先生が口を開いた。


「……心配せずとも大丈夫です。皆さんは独りではありません。皆さんの隣には級友がいます。目の前には私達がいます。アカデミーには先輩がいます。各騎士団にもビッグスターの先輩方がいます。悩んだり迷ったりしたら誰かを頼ってください。誰かを頼ることは悪いことではありません。スターホルダーはその特異性から、助け合わなければやってはいけません。そのためにも、あなた方はアカデミーに入学したのですから。皆で手を取り励まし合って立派なビッグスターを目指しましょう!」



 アニール先生の隣でレイズ先生も頷いていた。



 気を取り直してレイズ先生は横一列に並んでいた生徒たちを、輪を描く様に並ばせた。8人がそれぞれ両手をひろげて円の中心を向いて並ぶ。

 サティアナの反対側にはオリバー・カットがいた。少しお堅い印象があるが、端正な顔つきの爽やかイケメンである。



(あら、オリバーはなかなかのイケメンなんじゃないかな?外見からも何となくうかがえるけど、彼は真面目な性格みたいだな…。でも少し取っ付きにくそう。……話せるようになれば印象が変わるかしら?)

 サティアナにとってオリバー・カットの印象は悪くなかった。



「では今から己の霊気を開放する姿勢というか、型を教える。さっき先生達がやっていた動作を思い出してみてくれ!ではみんな、肩幅に足を開きヘソの下あたりに重心を置く感じで立ってみようか。腹式呼吸を忘れずに!」



 レイズ先生の言う通りに生徒たちは行動を始めた。



「よーし、そしたら次だ。そのまま掌が見えるように腹の前あたりに手を持って来てみよう。重心はヘソの下だぞー。猫背になるなよ!腹式呼吸だぞー!」



 サティアナにとってこの姿勢はさほど難しくはなかった。

 辺境伯領で叩き込まれた体術の稽古型のひとつとよく似ていたからだ。


(ふふふ、こんなところでもお師匠様にお助けいただくとはね。)



 先生達は生徒達を順々に見て型を教えているが、サティアナの前に来ると彼女を少し観察し、そして通り過ぎて行った。特にコレと言って姿勢を直されることのないサティアナは少し余計な事を考える余裕を持てていた。



「――――よし、皆だいたい良いな!この姿勢を家でも良く復習するように。最終的にはこの姿勢での迅速な異能力展開が必要事項になるからな。」



(…なるほど。さっき先生達が見せてくれたあの状態が最終目標ってわけか。明日から日課の最後の項目に追加することにしよう。)



「それで、この姿勢から霊気を開放することになるわけだが、開放の前に、まずは霊気を感じ取れるようにならなきゃいけない。しかしまだこの型が身体に馴染んでいない今の君たちにはこの姿勢で霊気を感じ取るのは困難だ。そこで、この型からは一旦離れることにしようか。」



 続けてレイズ先生は生徒達に告げた。


「さあでは、床に寝転んでもいいし、壁に持たれて座ってもいい。己にとって最も精神的に集中出来そうな姿勢になってくれ。」



 そう言われ一瞬寝転ぼうかと思ったが、結局サティアナは壁に背をもたれて座り、投げ出した足先を交差する姿勢に決めた。いつも自室で考え事をしたいときにする姿勢である。


 他の者もみなそれぞれ集中出来る姿勢を取った。



「よし。では今から霊気を感じ取る訓練を始めようか。まずは深呼吸をして精神を集中させる準備だぞ。次に意識を自分の掌に持っていく。自分自身の星印(スター)に意識を向ける中で、魔力では無い何かの力を自分の中に感じ取ることが出来たら、それが霊気だ。では、始めよう!」


 パン!とレイズ先生は大きく一度拍手を打った。訓練開始の合図であった。




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