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第2章 [7]

 



 サティアナは、彼女の視界に入って来るものを興味深く眺めながら正門に向かって歩いていた。



 目の前には大きな校舎があり、その大きな校舎の一階部分の真ん中あたりには吹き抜けが造られてあり、馬車道と歩道が組み合わされた二条の通りがそこを貫いていた。

 その中は暗いのかと思ったが天井までの高さがあり、距離も割と短いので意外と明るかった。壁には明かりを灯す場所が所々にあり、暗くなってからも危険度は低そうだと思われた。



 吹き抜けが終わると二条の通りは一条の大通りに変わり、その先の正門が良く見えた。



 通りの両側の校舎は吹き抜けのあった場所でお互いに繋がっており、吹き抜けの上の階には大きな昇降口があり、両側の歩道へと続く階段が伸びていた。

 昇降口からは、多くの子供達が下校していた。ちょうどリアムくらいの年齢だ。初等部の生徒だろう。



 その小さな生徒達は大通りから校舎の脇道に入って行った。

 サティアナが脇道の先を覗くと、奥には駐車場があった。

 皆それぞれ馬車で帰るのだろうか。


 昇降口から駐車場までの歩道脇には何人かの護衛騎士が配置されており、子供たちは護衛騎士に向かって「さようなら〜」と挨拶しながら歩いて行った。



(ふふふ。元気が良いね。)

 その光景はとても好ましいもので、サティアナは自然と笑顔になった。



 子供達が向かって行った駐車場の隣は運動場になっていて、運動場と駐車場の中間には遊具が設置されている遊び場があった。運動場内はサティアナの腰くらいまでの低い塀で覆われていた。見た感じ、そこは初等部で使用している様だとサティアナは思った。




 もし幼い自分が今ここに通っていたら……。

 時間を戻すことは出来ないが、想像するのは自由である。

 先ほどの子供達の中に自分も混じっている姿を想像したりして、サティアナはもう一人の自分の可能性を愉しんでいた。




 そんな想像をしながらしばらく歩いていたサティアナだったが、ふと視線を正門付近に移すと、ソフィアナらしき人物が見えた。

 自分と同じ髪色をした、自分よりも華奢で色白な可愛らしい女の子だ。


 その女の子はベンチに座っていた所で話しかけられたのだろう。ベンチから立ち上がった状態で目の前には何人かの女子に囲まれていた。



 ソフィアナに話しかけている女の子達のうわついた心模様が少し離れた所にいるサティアナにもすぐに分かった。


 普段は遠巻きに見ている高嶺の花が、ひとりきりで正門のベンチで誰かを待っていた。話しかける好機は今しかない。一人では尻込みしてしまうが仲間が一緒ならと。誰ともなく勇気を出したのであろう。



 対してソフィアナの方は、少しばかり困っているような表情だ。しかしそれは姉としてサティアナが察知できるほどの機微であり、おそらく彼女を囲んでいる女子達の瞳にはその心境は映らないのだろう。



(貴族の女性としては完璧な対応だな~、さすがソフィアナ!)

 サティアナは、少々ニヤケながらその中に向かって行った。



「おまたせ、ソフィアナ。」




 そこにいた皆が一斉にサティアナへと視線を移した。




「「「!!」」」

「サティアナお姉様!お待ちしていました。」

 ソフィアナの笑顔と、周りの女の子達の驚いた顔。




「あー…では申しわけありませんが少し急ぎますので、ごきげんよう。お姉様、行きましょう?」



「あ、うん。…お話の途中ですみません、失礼いたします。」




 固まっている女子達に対して完璧な笑顔でソフィアナはそう告げ、サティアナの腕を取り歩き出した。




 二人の背後では我に返った女子達が興奮しながら話し合っていた。

「お姉様っておっしゃっていたわ!」

「あの方は確か、ビッグスタークラスの新入生でしてよ!」

「なんて麗しいご姉妹ですの!?」


「「「はあ〜、素敵〜〜!!」」」




「ねえソフィー、あの人たち、挨拶もしないで置いて来ちゃって、良かったの?」



「だってわたくし、あの方達のお名前も存じ上げないのですよ?問題ありませんでしょう?」



「…なるほど。人気者は大変だね……。それより今日はどこへ行くの?歩いて行ける場所?」



「少し遠いですが、歩いて行ける距離ではありますね。街を見ながら歩きますか?」



「それも良いね。でもそろそろお腹空いちゃいそうだから、店を見て回るのは後にしたいかな!」



「あらでは、やっぱり馬車に乗りましょうか?それで、お腹いっぱいになったら歩いて帰りましょうか?」



「それはいいね!そうしよう!」



「では、あの辺りから乗り合い馬車に乗るとしましょう。」




 ソフィアナの案内で乗り合い馬車に乗り込んだ二人が車内で少し待っていると馬車が走り出した。

 馬車は比較的ゆっくりとした速度でなるべく揺れない様に進む。御者の腕が良いのだとサティアナは感じた。


 車内では周りに人がいたので、二人ともスターホルダーとは関係の無い処のアカデミーの話をしていた。ソフィアナの教えてくれた通りにサティアナが教材を教室に置いてきた事や、サティアナが正門にたどり着くまでに歩きながら見てきた事柄に対してのソフィアナによる説明など。

 そんな会話の最中であったが、ソフィアナの一声で終わりをつげた。



「あ、この辺ですわ。――――このあたりで止まって下さい!」




 馬車を降りた辺りは、ごはん屋さんが集まる通りの一角であった。少し歩くと目的の店に着いたらしく、「ここですわ!」とソフィアナが指差し、言った。



 こじんまりとした店の看板には、【喫茶 キャロル】と記されていた。サティアナは、どこかで聞いた響きだなと思った。


 入口の扉には「本日のおすすめ」と題された小さな看板が掛かっており、そこには「パイの包み焼きシチュー」とあった。

 そしてさらに本日のおすすめデザートとして、「林檎パイ」の表示が。これにはサティアナの瞳が一層輝いた。



「なにこれ。全部すごく美味しそう……!それにしてもソフィー、よくこんなお店を知っているね。有名店なの?」



「有名店という訳ではないのですが、お味の方は保証出来ますわ!なにせわたくしの―――――」



 ソフィアナに誘われてサティアナが店内に足を踏み入れると、いらっしゃいませ、と出迎えてくれたのはキャロライン・パッカーだった。



「わたくしの、悪友が経営しているお店なのですから。そしてわたくしの行きつけとも言えるお店ですわ。キャロル、お待たせしてしまったかしら?」



「いいえ、ちょうど良い感じだったわ。喫茶キャロルへようこそいらっしゃいませ、サティアナお姉様!わたくしもご一緒してもよろしいでしょうか?」



「え、あ、もちろんです。ソフィー、いいんだよね?」



「ええ、本当はここで初めてキャロルを紹介するつもりだったのですが、予定通りにはいかないものですわね。ふふ。でもまあ手間が省けたということにいたしましょう。」



「そうよ、そうお考えなさってソフィー!それではこちらへどうぞ〜。」




 今度はキャロラインに案内されて、サティアナとソフィアナは店内奥の、少し区切られて半分個室の様になっている席へと着いたのだった。




12月12日

段落下げるの忘れていまして、再編集しました。

それとともに上のいくつかの題名のみ編集しました。

題名って番手だけじゃなくてサブタイトルつけた方が読みやすいのかな?


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