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第1章 [26]

前話から、ずいぶん時間が空いてしまいました。もうしわけない。

 



 追加の薪を運ぶのを使用人に手伝ってもらい、その際に松明の用意も手伝ってもらって、いつ父上達がいらしても良い様に準備が整った。

 北風もなく、とても穏やかな元旦だ。まさに露天風呂日和だった。





 ―――――――――――



 応接広間に戻ると、ちょうど父上達がお帰りになっていた。



「父上、お帰りなさいませ。お出迎え出来ず申しわけありませんでした。それで、今宵はいまから露天風呂などいかがですか?」



「なに?!」

 と、ほろ酔いの父上の瞳が輝いた。私が作った露天風呂は、いつもお忙しい父上にとっては初体験になるのだ。父上は喜びのあまり、もうけっこう重くなった私を抱き上げ、抱きしめなされた。

 そして、その隣で露天風呂経験済みの叔父上も大喜びされていた。



 裏庭に作ったことを伝えると、父上とリアムと叔父上は一緒にいそいそと足早に向かって行かれた。お風呂の入り方は叔父上が教えてくださるだろう。

 そして母上と叔母上が、殿方々の着替えを用意し始めたので、私とソフィーは夕食の準備をしてくれている使用人達に、私達の後で寝る前にみんなもお風呂に入って良いからねと伝えに行ったのだった。




 父上達が一刻ほどお風呂を満喫して戻ってくると、皆で夕食になった。毎年元旦の夜から二日目の昼まで私達家族と叔父上達家族は共に過ごし、それを元旦会と呼んでいるのだ。


 元旦会の料理は食卓に全て並べてしまうので、使用人たちも同じ時間に夕食となる。使用人達は食堂で、私達は応接広間で。たまに私達以外にもお客様が居られる元旦もあるのだが、今年は我々と叔父上家族のみだった。


 簡素な乾杯の合図で食事会が始まると、話題は露天風呂で持ちきりだった。入浴を済ませた3人がそれぞれに感心した点を話し、私がそれについて説明すると、まだ入浴していない御婦人方が目を輝かせた。

 今夜はとても星が綺麗らしい。私も王都に行く前にしっかりと故郷の夜空を目に焼き付けようと思った。



「今頃リリー達はどうしているでしょうかね?あの3人にもお風呂体験させてあげたかったなぁ。」

 私は気になっていたことを、ポロリと口に出した。

 私達姉妹のために王都の別宅まで足を運んでいる3人のことが少し恋しかった。今まで正月にあの人達が自分の近くに居なかったことが無かったから。



「王都のお正月は賑やかだから、きっと家族水入らずで楽しんでいることでしょう。ちゃんと正月休みを取るようにとマリアには口酸っぱく言っておきましたからね〜。」

 と、母上がお答えくださった。



「ところでお父様、お母様、今年は王都にはいつ出発になるのでしょう?今年は家族全員で王都に向かうのでしょうか?リアムも私達と一緒に王都に行けるのですか?」

 と、ソフィーがお伺いを立てた。



 あ、そうそう、それ。私も気になっていたのだ。


 国王様へのご挨拶がある両親と、寮に戻るソフィーは毎年揃って正月休みが明けると王都に向かっていたけれど、今年からは私もそれに加わる訳で。

 今はヨハン達がこちらに居ないからリアムも王都に連れて行ってあげられるのかをソフィーは両親に訊ねているのだった。

 さすがはソフィー、しっかりお姉さんだね。



「うむ。ソフィーの言う通りだ。今年はリアムも王都に連れて行く。リアムは初めての王都だな。カーティス、留守を頼むぞ!」



「ああ、任せといてくれ、兄上!書類の処理以外はしっかりやっとくからさ(笑)」



「その書類が問題なのだ!うう、戻ったあとの書類の山が目に浮かぶ……」



「初王都!楽しみだな!」



 父上とリアムの対象的な表情に皆で一笑したのだった。

 そしてその場が和んだところで、私は、今とばかりに父上にお願い申し上げた。



「父上、王都までの護衛はどなたが付いてくれるのですか?あの……私にとって貴重な経験になると思うので、出来れば私も往路での護衛の任に着かせていただきたいのですが、駄目でしょうか?父上。」



 皆が一斉にこちらを見た。

 そりゃそうだよね、領主の娘なんて普通で考えれば護衛される立場なんだから。

 でも、私はスターホルダーだから。騎士になり、誰かをお護りする立場になるのだから。

 これは私にとって、またとない機会なのだ。



 ううむ、とうなっている父上に向かって、叔父上がお言葉をかけた。


「サティの申し出、俺は良いと思う、兄上。何事も経験は大切だ。アカデミーに入ってからも、きっと何度も要人の警護に着くことがあるはずだ。俺もそうだったよ。それに今回はゼフラを付けることにしてあるから、サティとの相性も良いしサティにもこの上ない経験になるだろう。どうだろうか?やはり心配?」



 少し考え、ひとつ頷くと、父上は私に向かって


「カーティスの言う通りだ。サティ、よくぞ申し出たな。騎士になる娘を持つ父として誇らしく思うぞ。よし、お前を往路の護衛隊に加えるとしよう。先輩騎士たちによく習って、経験を積みなさい。ただし、無理は禁物だ。体調が悪くなったら早めに申し出るんだぞ。周りの迷惑にならぬようにな。」と、おっしゃってくださった。



 私が喜んでいる隣でソフィーが口をとがらせ残念そうにひと言つぶやく。

「せっかく姉様とたくさんおしゃべり出来ると思っていましたのに。」


 すると母上が、

「王都に着いたら毎日たくさんおしゃべり出来ますからね~」と妹をなだめてくださり、


「そうね、では出発前にサティの上着を新調しに街へ行きましょう!寒さを凌げて、かつ動きやすい物を!ソフィーも一緒にいらっしゃいな。」とご提案くださると、妹にも笑顔が戻った。



 その後は王都までの道程や思い出話などを皆で談笑しあい、楽しい会食となったのだった。



 会食後、父上と叔父上は何やら話し合う事があるとかで、ふたりで父上の執務室へと向かって行った。会談後は御二方とも就寝なさるらしい。



 ほろ酔いの殿方が姿を消したところで、私達はテキパキと食卓の後片付けをした。


 母上も叔母上もソフィーも、早く露天風呂に行きたいみたい。嬉々として食器やら卓やらを片付けている。


 もちろん、私もね!



 そして片付けが済むと、着替えと手拭いを持って皆でお風呂に向かったのだった。








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