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第1章 [25]



 裏庭に着くと、雪がけっこう積もっていた。

 なので、お風呂にする辺り一面を風魔法で除雪していく。

 あらかた取り除いたら次は水脈を探す。風呂の規模は小さくて良いので、無詠唱で実行。

 ……良かった。前に使った湯脈と水脈からまた引っ張ることが出来そうだ。

 まずは風呂の堀を作るため、いったん引脈の魔法を取り消す。

 その後、地魔法・変造地でだいたい四角く土地を取り除く。リアムやレオンの為に水深の浅い所も作っておく。

 そこに地魔法・造石で石垣を積むように風呂肌を作っていく。

 風呂肌を石造り始めて少しすると、ソフィーが来てくれた。



「姉様、どの辺りに火をおこしますか?」



「そうだね、じゃあそこの扉から近い所にお願いしまーす!」



 はーい、と可愛らしい返事をしてから使用人に持って来てもらった薪を並べ終わると、自分で持ってきた小さな枝に魔法の出力を絞って火を付けていた。


「我が力をもちて灯す。点火(ファイア)



 それを火種として、薪にくべる。


 それから風魔法の出力も絞って薪全体に火が回るようにしてくれた。



「わぁ~、ソフィーお見事!ありがとう!」


 火属性と風属性が両方使えると便利でいいよね〜、助かったよと、妹を労う。



 私に褒められた妹は照れ隠しか、


「このくらいは、アカデミーで習ったのでわたくしにも簡単ですわ!それよりも、姉様は今なにをなさっていますのっ?」


 と覗いてきたので、現状を説明した。



「今は、お風呂の表面を石で覆ってお湯に土が混ざらないようにしているんだよ〜。」




「それは手が混んでいますのね!このあとは何をなさいますの?」



「これが終わったら、目隠しに木や壁を所々に配置して、湯脈と水脈を引いたらおしまいかな。屋根は付けた方がいいかな?ソフィーどう思う?」




「屋根は特に必要ないかもしれませんね。雪が降れば降るで、なかなか趣きがありますわ。」




「そうだね、じゃあそうしよう。ありがとうソフィー、そろそろ作業に戻るよ!」




「わたくしも姉様の魔法を少し見学しますわ!わたくしのことはお気になさらず作業をお続けになってくださいね。」


 と言って、妹は焚き火の側に佇んで居たので、地魔法で木の腰掛けを作ってあげると喜んで座った。




 後ほど母上がお茶を持って来てくださるとおっしゃっていたので、ふたつばかり木の腰掛けと、お茶を置く台も追加で作った。




 では作業に戻りましょうと、私は仕切り直した。

 風呂肌の石造りを完成させて、扉から風呂まで大小の石を適当に敷いて通路を作った。その辺は時短だ。それが終わると次は目隠しだ。


 ソフィーがまだ見学していたので、ソフィーと一緒に目隠しの位置を確認していると、母上達が扉からこちらに出ていらした。



「あら、素敵ね!!」と母上。



「あら、レオン達でも入れるように浅い所も作ってくださったの?」と叔母上。



「こんな感じで良いですか?屋根はなくても良いかなと思いましたが、どうですか?」




「ええ、屋根はなくても良いのではなくて?このままでも充分素敵よ!さあサティ、少し暖まりなさいな。」



 母上がそうおっしゃり、叔母上が温かいお茶を入れて入れてくださった。皆で焚き火を囲む。




「あら、この台と椅子も素敵ね!……それでサティ、あとはお湯を引くだけかしら?」



「そうですね、今は目隠しに壁や木を配置する場所をソフィーと確認していたところですが、目隠しは前回と同じ所で良いですか?母上。」




「そうね、それで良いと思うわ。あとはこの焚き火の周りに背の高い目隠しがあると良いわね?暖かい空気が逃げないように出来たら良いのではないかしら。」



「それは良いですね、ではこの周りを壁で囲みましょう。あとは、あちらの一角に壁と木を配置すれば下からは見えなくなりそうですね。」



 お茶を飲みながらそんな打ち合わせをして、日が暮れる前に完成させようと、再び作業にかかる。



 まずは下から見えそうな位置に私の背丈程の岩をいくつか置き、壁とした。雪でも崩れないように岩にしたのだが、岩はこの後しばらく残ってしまうかもしれない。けど裏庭だからまあ良いでしょう。


 他にも、少し隙間があって他の場所から見えてしまいそうな所に、背の低い木を生やした。

 私が魔法を使うのを、母上と叔母上と何か話しながら妹は喜んで見ていた。木がニョキニョキと生える様子を見て、叔母上に抱っこされながらレオンが歓喜の奇声を上げた。木が一気に生長する様を見て、幼いレオンはとても興奮している様だった。



 目隠しを作り終わったので、焚き火の周りを囲う前にお湯を引くことにした。

 地面に四つん這いになりもう一度地魔法・引脈を発動する。

 先ほど当たりを付けた湯脈と水脈を引っ張り、お風呂に通した。焚き火のあたりで見ていた皆さんはさぞや私のおかしな行動に目が点になったことだろう。私もあまり見られたくはなかったけれど仕方がない。

 けれど私が風呂にお湯を通したとたん、湯気とともにドボドボという音が出始めたので、皆さらに目が点になったようだ。それぞれ焚き火から離れ、風呂の近くまで寄って来て風呂の中を覗いていた。




「姉様、先ほどのあのおかしな行動はつまり、お湯を引いていらしたわけですか?」




「あはは……やっぱりおかしな行動しているように見えたよね……ははは。」




「わたくしは以前同じ行動を見ていたので知っていましたよ~。」



 母上のお言葉は特に慰めにもならなかった。

 叔母上にいたっては作り笑顔でやり過ごしていた。

 レオンは湯気を掴もうと叔母上の腕の中でもがいていた。




「ここから今度は排水路を作ります。またおかしな行動をしますから、見なかったことにしてくださいね!」



 皆に見られて恥ずかしい。でも排水路を作らないとお湯が溢れちゃうし。

 私の方は、今ここには皆が居ない、私独りだということにして排水路に取りかかった。



 少し時間がかかったが無事に排水も出来たし、皆に試してもらったがお風呂の湯加減も良さそうだ。




「……湯加減も良さそうだという事で、露天風呂完成です!」



 夕焼けの中、露天風呂は完成した。そろそろ父上達がお帰りなさる時間だろう。

 母上、叔母上、ソフィーがそれぞれ拍手で私を労ってくれた。レオンも皆の真似をしている。



「あとはこの焚き火の周りを囲うので、皆さん一度お部屋に戻りますか?……そうして頂けると、その方が私は作業しやすいです。これが終われば私も部屋に戻りますから。父上達のお出迎えは出来そうにありませんが、代わりに殿方々に一番風呂をお召しあがりしていただこうと思います。」



 ではそうしましょう、という事で、皆さんお部屋にお戻りいただき、私は最後の作業を始めた。



 椅子と台と焚き火の周りを、丸く土壁で囲っていく。

 こちらは簡単だ。自分の身長よりもより高く、父上の身長よりも高いくらいの土壁を作っていく。少し内側にアーチさせて暖かい空気が逃げないようにした。



 土壁を作り終えると、もうすっかり薄暗くなっていた。焚き火の光だけが明るい。お風呂の方にも松明の火が必要かな?

 とりあえず焚き火に薪を追加して、向こうにも松明を用意しよう。それで本当に完成だ。




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