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第1章 [17]

 


 屋敷に戻って私も軽く汗を流し、さっぱりしたらウトウトと昼寝してしまったらしい。リリーが頃合いを見て起こしにきてくれた。

 リリーは私の担当使用人だ。ヨハンとマリアの一人娘で、私の5才年上。身分は違うけれど、姉のような存在だ。母上が妹のソフィアナを産む前後で、幼いながらもリリーが私の世話役となり、私の相手をしながら二人で読み書きなどを共に学んだのだった。



 今夜のお召し物です、と言って久々に娘らしい格好をさせられた。昼寝の前に汗を流しておいて良かった~と安堵したのだった。



 婦人服でも私は簡素な衣装を好むので、基本的に私の婦人服は飾りなどがほとんど無く地味だ。なので母上の意向により、生地質に凝ったり生地色が珍しいものになる。そのへん文句は言わないことにしていた。

 なので今回の衣装も、地味だけど高級感はある。夏らしく少し透明感がある衣装だった。

 うん。なかなか馬子にも衣装だね。



 髪の毛も、衣装に馴染むように派手にはしない。

 が、髪飾りは少しキラキラさせる。私の赤い焦茶色の髪に合うような宝石があしらわれている。

 その他の宝飾品は、付けない。耳も首元も手首や指にもね。もし付けなさいと両親に言われたら、首元には付けても良いとは思ってる。

 でも今日は無しだ。



 さて、準備完了!

 てことで、大広間に向かう前に母上に最終確認してもらわなくちゃ。



 母上も準備で大忙しだった。

 使用人達に髪をしっかり仕上げてもらっている最中にお邪魔したら、


「良いのではなくて?可愛らしいわよ~」

 とおっしゃっていただいたので、これにてお召し替え終了!


 あとは大広間にて皆さんをお出迎えしなきゃね!と、大広間に向かった。





 ――――――――――



 大広間に着くと入口にヨハンとマリアが並んでいた。


「もうどなたか来ていますか?」

 と聞くと、


「ええ、先ほどカーティス様がお見えになり、マティアス様のもとへ参られました。その際にカーティス様がおっしゃるには、御一団皆様まとまっていらっしゃるそうです。」

 とヨハンが教えてくれた。


 つまり、昨日の面子でいうと、大広間に入るのは私が一番なのだった。



 どうしようかな、と思ってると、母上が私の所にいらしておっしゃった。


「まだ皆さんいらしてないから、今のうちにカーティス様に昨日のお礼を言って参りましょう。一緒においでなさい。」



 母上に従いて広間の隣の応接間に行くと、父上と叔父上がワイン片手に何やら話していた。



「いらっしゃいませカーティス様。ご機嫌よう。昨日は娘が大変お世話になりまして。ありがとうございました。」

 と母上が拝礼をした。私も右に習って礼をした。





「いやいやお気になさらず!騎士団の規則にのっとった行動をしたまでです。

 まあ少々私情を挟んで大袈裟な討伐方法をとってしまいましたが、今しがた兄上に尻拭いをお願いしたところですよ。ハハハ。

 それにしても義姉上、本日も大変にお美しい。大広間で皆の視線を釘付けなさるおつもりですね?ハハハ。

 それに、サティ。とっても可愛らしい。昨日の君とはまた違って、髪飾りも良く似合っている。

 成長するのが楽しみですね、兄上?」

 と、だいぶ御機嫌な叔父上だ。お風呂に入って疲れが取れたのかな?





「ああ、最近はグッと背も伸びてきて、段々と大人になっていくのだと実感しているところだ。カーティスのところはもうそろそろか?」




「はい。晩秋月あたりかと思います。」

 と叔父上がおっしゃった。叔父上にとっては初めてのお子様となる。叔父上と父上は10才ほど年が離れているのだ。



「男の子かしら、女の子かしらね?わたくしも楽しみですわ~テルマ様のご様子はいかが?まだお辛そうなの?」

 と母上がおっしゃった。テルマ様は、叔父上の奥様。笑った顔がとても美しい、清楚で可愛らしい方だ。母上のことを姉のように慕っている。




「ええ、良い時と悪い時と波がある様ですが、無理せず休ませております。」




「そう。わたくしもサティを宿していたときは不安ばかりでしたから、テルマ様もそうなのでしょう。初めてのことですものね。気分転換が大事とお伝えくださいね。今度は美味しい果物など持ってまた近々そちらへお訪ねいたしましょう。」




「はい、ありがとうございます。義姉上が来てくだされば妻もきっと喜ぶことでしょう。」




「叔母上は、ずっと気持ちが悪いのですか?」




「ええ、赤ちゃんが出来るとだいたい、お母さんは気持ち悪くなるものなの。そうやって我慢してだんだん母になるのですよ。そして苦労した分、我が子がとても可愛いのよ。自分の命を投げ打つくらいにはね。」

 と母上が代わりに答えてくださった。




「まったく、母性というものには本当に敵わないな。」

 と父上が母上を眩しそうに愛しそうに見ながら言った。




 ところで、と仕切り直して、真剣な面持ちで母上が叔父上におっしゃった。


「カーティス様、少しこの子のことで相談してもよろしくて?」



「はい、なんなりと。」

 叔父上が答える。




「サティアナは昨日カーティス様のビッグスターとしての力を目にして、今は少し不安が大きくなっているようなのです。

 わたくし達ではなくて、カーティス様からこの子に御助言を賜れないかしら、と思いまして。

 やはり経験したことのある方からの御助言が一番だと思いますもの。

 スターホルダーとして通らねばならぬ道なのだと思いますが、それなら尚更わたくしにはこの子の不安を取り除いてやれることは叶わないのです。

 どうか、何かサティアナにお話しさしあげていただけませんか?」

 と母上が叔父上に訊ねた。母上も少し苦しそうな顔をしていた。私が母上に胸の内を告げたことで、母上を苦しめてしまったのかもしれない。





 その時、ヨハンが扉を叩き、


「御一同様皆様大広間へお入りになられました。」

 と私達を呼びに来た。



「じゃあ食事しながら少し私と話そうか。」

 と叔父上がおっしゃってくださり、我々一同も大広間に移動したのだった。





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