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第1章 [12]

 


 皆で円陣を組み、毒双蛇の様子を伺いつつ作戦会議を始めた。


 対戦する前提として、なるべく敵から距離を取ること。二人または三人一組になること。


 お師匠様とアベルさんは前衛、三人の隊員さんはその後ろで魔法や飛び道具などで前衛を援護する。

 足手まといの私は後ろの方でデニスさんに守ってもらいながら、同時魔法で攻撃する。


 毒双蛇は嗅覚と感覚が鋭いので風上に立つのは禁物だ。動きも早いため注意しながら、主に頭を攻撃する。

 その際、牙には最も注意しなければならない。上級の解毒剤でしか治癒できない程の猛毒を持っているのである。上級の解毒剤は各人一回分所持しているが、それ以上ないため、敵に噛まれないことが最優先だ。

 首を落とせればそれが一番早いのだが、いかんせん巨体過ぎるため首を落とすのは困難だ。



「お嬢、氷魔法は使えるか?うちの隊員で氷魔法を使えるやつは居ないんだ。」

 お師匠様に言われた。


「氷属性は適性していないので、氷魔法は使えませんが、同時魔法で冷たい水なら使えます。」


「そうか、…よし。奴は低温に弱いから、それでも時間は稼げるだろう。お嬢はその魔法で攻撃してくれ。出来れば狙いは頭部だが、それ以外でも効くだろう。デニス、お前はお嬢を守ってくれ、頼むぞ。」


 デニスさんが、おう!と頷いた。


「出来れば応援が来るまで奴が動かなければ良いのだが…?!」

 その時、毒双蛇がとぐろを解いて動き出した。


「…来るか」

 息を潜めて見ていると、大街道方面に動き出した。


「…まずいな、おそらく風上の大街道方面に獲物がいるんだろう。人間や家畜の可能性が高い。出撃して奴の後を追うぞ!」

 お師匠様が号令をかけて私達は一斉に走り出した。


 毒双蛇はゆっくりとした動きで大街道方面へ移動していた。お師匠は風上に回らない様に並走し、少し拓けた場所で毒双蛇に向かって風の斬撃を放った。


 毒双蛇は斬撃を察知しスッと避けた。斬撃は森に直撃し、大きな音を立て土煙が上がった。これで大街道にいる人間はこちらには来ないであろう。出来れば引き返して街に逃げてくれることを期待する。


 毒双蛇はお師匠様の方を向き、威嚇の姿勢になっていた。お師匠様は風下に移動し、アベルさんと合図し二人が身体強化の魔力を発動した。

 隊員さん達も先ほどの作戦通りに陣取り、それぞれ身体強化の魔力を発動した。

 私は身体強化せずに後方に下がり同時魔法を展開し始める。


 ひとつ深呼吸をしてから、姿勢を正して胸をはる。

 右手を眉間にかざし、頭の中に高速で第二級の風魔法式を呼び出しながら、そこに魔力を乗せる。詠唱による魔法式変換を割愛した効率的な魔法発動を研究した結果の行為だ。

 右手の中に出来た小さな魔法の核に魔力をどんどん吸収させ大きな魔法の珠を作る感覚で、右手の上で小さな竜巻を作った。

 次は左手を眉間にかざし、同じ様に第二級の水魔法を発動する。

 そうして左手の上で小さな水滴の渦巻く集合体を作り出した。

 二つの魔法を同時に発動させるから同時魔法と呼ぶことにしたのだ。あとはこの二つを融合させるように繰り出せば良いのだが、少し距離が遠い。


「デニスさん、これだと少し遠すぎるので、攻撃するときだけ一瞬前に飛びます!すぐ戻るので、その時は守ってください!」


「おい?!それ大丈夫なのか?!」


「はい!魔法を繰り出すときは魔法が私を守ってくれるので大丈夫です!ここに戻ったときが少し危険かも!」


「わかった!その時は守ってやるからちゃんと戻って来いよ!」


「はい!その時は合図します!」


 前方ではお師匠様とアベルさんが毒双蛇の攻撃をかわしながら防御している。前衛の支援で後ろから隊員さんたちが弓や魔法を放つ。敵が攻撃を仕掛けてくる瞬間が好機だ。頭を高く持ち上げたとき、敵の首元辺りに向かって同時魔法を繰り出したい。


 毒双蛇の攻撃が止んで、一瞬の隙ができた。次の攻撃に移る準備だ。

 そして敵の頭が高く上がり始めた!


「行きます!!」


 私は下半身をグッと沈ませ、低い姿勢で前に飛んだ!

 隊員さんたちが並ぶ隙間に飛び込みながら高く上がった敵の顎を目がけて同時魔法を放った!


「―――氷雨(ヒサメ)!!!」


 私が放った二つの魔法は勢いを増して融合しながら見事に毒双蛇の首元に当たり、当たった所が凍てついて毒双蛇は痛手を追ったように動きを止めた。氷魔法には及ばないが、氷雨と名付けただけの威力は発揮した様だった。 

 その好機を逃さずお師匠様が、がら空きの首元に風の斬撃を放ち毒双蛇の首元がパックリ割れた!


 しかしまだ致命傷とはいかず、もう片方の頭が怒りを露わに攻撃を仕掛けてきた!


 二列目の隊員さん達が一斉に前衛を援護する!


 私は着地後すぐさまデニスさんのもとに戻る。


「おお!効いてるんじゃないか?あと何発打てる?」

 デニスさんに言われた。


「あと四、五発くらいですかね。」


「よし、今の感じで確実に当てていこうぜ!」


「はい!」


 先ほどの攻撃を受けた毒双蛇の頭は、攻撃を受けていない頭の後ろに隠れていた。あの傷口に同時魔法をぶつければ更に痛手のはずなのだが、それは無理そうだ。


「今やった方の頭は完全に退いてしまってるので、元気な方の頭を攻撃します!」

 デニスさんに告げた。


「了解!」

 デニスさんと私の相性はどんどん良くなってるみたい。息もピッタリだ!この人になら安心して守ってもらえる気がした。


 そして私は次の同時魔法を展開し始めた。

 先ほどと同じ様に、右手に竜巻を作り、左手に水渦を作る。

 そして、毒双蛇の攻撃が止まるのを待つ。二列目の皆さんが一斉に攻撃を掛け、毒双蛇の攻撃が止まり、次の攻撃準備に入った!


「行きます!!」


 先ほどと同じ様に元気な方の首元目がけて私は飛び出した!

 すると魔法を繰り出す直前、退いていた方の蛇頭が私に向かって攻撃してきたのだ!

 私は空中で体勢を崩し、同時魔法を放てず、とりあえず右手の魔法を目の前の敵に当てることで精一杯だった。

 至近距離で風魔法を食らった蛇頭は反動で仰け反り、私も魔法を当てた反動で飛ばされ、宙返りしてなんとか体勢を立て直そうとした。デニスさんがこちらに駆けて来ていたがまだ距離があったので、着地と同時に剣を抜いた。

 左手の魔法は飛ばされた時に一緒にどこかへ飛んでしまった。

 着地する私を狙うように元気な方の蛇頭が速攻をかけ、噛み付いてきた!


「「お嬢!!!」」


「ぅわぁぁあ!!」

 間に合わない!!やられる!!


 その時、私の剣から一瞬にして眩い光と共に魔法が発動し、目を開けると私は風の障壁に包まれていた。

 その風の障壁により、傷を負った毒双蛇は後退したのだった。


 何が起きたのか理解出来ず、その場で停止している私に駆け寄るデニスさん。


「お嬢ー!!大丈夫か?――――何とも無さそうだな、良かった!」


「いま何が起きたの?!」


「多分、辺境伯様が付与してくださったって言う守護魔法が発動したっぽいな!スゲー魔法だった!アイツ、牙を折られたぜ!今が好機だ!もう一度同時魔法放てるか?お嬢が飛び込まなくて良いように射程内まで出よう!俺が守るから!!」


 うん!!

 私は強く頷いて、少し前に出た。ここからなら、届く。

 毒双蛇は痛手を負い、今は少し後退気味だった。

 前衛の二人も疲れが少し見えるようになってきた。早く何とか糸口を見つけないと!


 私は再び同時魔法を展開し始めた。




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