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第1章 [11]

 

 緊張から少し開放され、お腹も満たされた束の間のひととき。

 冒険者や騎士はこういうお仕事なんだなと、命をかけるということを、まだ幼さを残したその頃の私なりに考えていた。

 騎士は修練を積み弱く尊き命を護るために己の命をかける。その騎士も持たない特別な力を私は持っいると言われている。じゃあ私はその騎士達をも護れる力を身に付けなければ。

 いつかはお師匠様を超える実力を身に付けて、私がお師匠様を護れるくらいにならなくては。

 英雄の卵と言われる者として恥じない実力を身に付け、すべての人を護れるようになりたい。

 心地良いそよ風を感じながら、そんなことを私は心に決めたのだった。


 皆がお弁当を食べひと息つき終わった所で一度集まり、地図を広げてこのあとの順回路を確認した。


 私達が城下街クロムの北門を出て歩いてきたこの街道はこのあと分岐し、一方は北の森へ向かい、もう一方は帝国との国境へ向かう西の大街道へ合流する。

 その分岐点を森には行かずに大街道方面に向かい、大街道に出たら国境方面には行かず街の西門へ向かって南下し、西門に移動してもらってある馬に騎乗し、街を横断して東門から館に戻って巡回は完了となる。ゼフラ隊の人達にとっては一日がかりの仕事だ。

 いま居る街道は、森のすぐ外側を森に沿って通っているので、草原とはまた種類の違う魔物も出てくるため、用心しなければいけない。


 今日の魔物狩りを迎えるに当たって、参考書などで魔物の生態などを調べてきた。攻撃の特徴や弱点はあらかた頭に入っているが、討伐方法は実戦でしか経験を詰めない。先ほどの火鷲も、挿絵などで容姿の確認はしていたし、炎を出すことなど分かっていたけれど、大きさによって狙いを変えてくるとはもちろん書いてなかった。細かい点や討伐方法はやはり経験が物を言うわけだ。


 ある程度隊列を組みながら再出発し、私の隣をデニスさんが歩く。


「先ほどの火鷲の討伐方法はあれが基本形になるんですか?」

 とデニスさんに質問してみた。


「まあそうだな、相手は翼を持ってるから、こっちからは攻撃できねぇ。向こうから襲ってくるのを待つ訳だ。で、大体の奴はああやって炎を出してくるから、炎をどうにかしつつ翼をぶった斬るのが最適な討伐方法だと思うぞ。でも、さっきのはゼフラ隊長が一人でやっちまったけど、隊長は規格外だから一人で殺れるってだけの話で、普通はみんなで協力するんだぞ?」

 自分より大きな魔物には一人で行かないのが基本だ、とデニスさんは言った。


 道すがら、歩きながら食べられる草花をデニスさんから教わりながら、休憩時間に作った水場のことを聞かれた。

「さっきお嬢が作った水場は、もうこれからずっとあの場所に存在するのか?いつかはなくなっちまうのか?」


「ああ、あの水場はその場しのぎに作った簡易的なものなので、おそらく明日あたりには消えちゃいますね。もっとちゃんと作ればずっと存在し続ける水場も作れるとは思います。時間と労力と魔力が必要ですけどー。」


「なるほどな、しかし地魔法ってのは便利だよな。」


「でしょ?地魔法に適性があったことは私の中で一番の自慢です!もっと便利なこともあるんですよ?お風呂が作れたりもしますし。」


「まじかー!!あとで一日露天風呂体験させてくれよ!」


「いいですよ~!今日のお礼に!騎士団詰所の空き地に作ってあげます。お師匠様も。皆さんも!」


 おお~!やったー!と皆さんが喜んでくれた。無事に帰って近いうちに実現してあげなくちゃね、と私も意気込んだのだった。





―――――――――――――――



 街道の分岐点にさしかかる少し前から、場の雰囲気が変わり始めた。なんとなく嫌な感じが漂い始めたのを私も感じた。

 何かがいる。そんな気配だった。


 隣を歩いていたデニスさんも、なんかヤベー奴がいそうな気がするな…と呟いた。

 ええ……と私も呟いた。


 前を行くお師匠様が、ふと立ち止まり、ゆっくり身をかがめ岩の陰に入った。。

 後続の隊員さんも魔物を確認しお師匠様と同じように身をかがめた。

 私達も同じ様に身をかがめ、お師匠様の後ろに付いた。

 だけど、魔物を確認はしていないので、デニスさんが前の隊員さんに小声で聞いた。


「アベルさん、何がいたんスか?ヤバそうだけど。」


 隊員さんが答える。

「毒双蛇だ。しかも、かなりでかい。あんな大物俺は初めて見たぜ。この辺りの今日の主はあいつで決まりだろうな。どうりで魔物が出てこない訳だ。」


 私達の後ろにいた隊員さんが、小声でマジかよーと言った。デニスさんも緊張の顔だ。


 私が読んだ参考書にも頁の半分だけ載っていた。だけど詳しくはどんな魔物なのか分からなかった。ので、正直にそれを申告した。


「まず言えることは、珍しい魔物だ。普段は森の中の湿っぽい場所にいて、めったに出てこない。昨日この辺りには雨が降ったから、今日は何かを食いに出て来たんだろう。読んで字の如く、どっちの尻尾も頭が付いている両頭の蛇だ。牙には猛毒がある。目は良くないが嗅覚と感覚が鋭い。俺たちが風下で幸運だったな。とぐろを巻いてるから、今のうちに作戦会議だ。だがその前に、アベル、少し離れた所で狼煙を2本上げろ。」

 と言ったお師匠様も緊張している様子だった。


 巡回番が狼煙を2本上げるのは、援軍要請の合図だ。狼煙は1本なら荷車を出してくれ、2本なら援軍を出してくれ、3本なら敵襲にて迎撃に入れ、だ。夏場は魔物出現率が上がるため、狼煙を上げる率も上がる。おそらく援軍には叔父上がいらっしゃるだろう。昨日お会いしたときに言われたのだ。

「サティ、明日は心して行くんだぞ。ゼフラが居るからそうそう危険な目には合わないだろうが、ビッグスターは魔物を呼び寄せる性質があるのではないかと私は感じているのでな。何かあれば私がすぐ駆けつけるから、それまで頑張るんだぞ!」


「叔父上、あまり脅さないでくださいー。」

 と返したのだが、叔父上の勘は当たった様だった。


 お師匠様が狼煙を2本上げろと言うのは、これから大変になると確定したと言うこと。この人数では安心出来ないと。敵は猛毒を持った大物で、なにせこちらには超初心者がここにいるのだから。


 私も、せめて自分のことは自分で守らなければ。お師匠様やこの仲間達に迷惑をかけるわけにはいかない。


 お師匠様が信頼を寄せているゼフラ隊副隊長のアベルさんが狼煙を上げ終わって戻って来ると、いよいよ作戦会議となった。


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