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第1章 [10]

 

 中夏月、私にとって人生初めての魔物狩りの日程が決まった。ゼフラ隊が街と森の巡回番をする時に私も一緒に連れて行ってもらうことになった。あまり深い所まで行かなくても、この時期は魔物が多いので巡回路を行けば良いだろうということになったのだった。


 魔物狩り当日、私は朝から緊張とワクワクが混ざって妙に興奮していた。両親が私の初陣を見送りに騎士団詰所の入口まで来てくれた。騎士団の知り合い達も集まって、ちょっとした人混みが出来ていた。


 お師匠様と、隊員さん数名、あとデニスさんがいた。デニスさんは私に付き合ってくれる為に休日を返上までしてくれた。デニスさん御自慢の盾を持って。

 街の出口までは皆騎乗して、街を出て森までは歩いていくので馬も用意されていた。私のお気に入りの馬もいる。今日はよろしくね、とその子を撫でると目で合図された気がした。



「では、サティアナ。巡回路とはいえ、何があるかわからんからな、用心しなさい。」

 と父上。


「騎士団の皆様がいらっしゃるからあまり心配はしておりませんが、無事に帰ってらしてね。」

 と母上。


「はい。用心して、魔物を倒して、無事に帰って来たく思います!いってきます!」

 と多少鼻息が荒い私。


 父上がお師匠様達によろしくお願いして、ついに出発となった。


 まずは街の中を巡回するので街に入ったところで三方に分かれた。私はお師匠様と大通りを担当だ。

 二人で大通りを馬で移動していると、以前二人で街に来たことを思い出す。今回は二人とも戦闘用の防具を身に着けているから少し雰囲気も締まっていたが、我々の姿を見つけた街の人々が少しザワザワとしていたのが分かった。


 私も不審な人や困った人がいないか見ながら進んだ。この街は本当に活気はあるが穏やかで、皆が仲良し。日中は滅多に揉め事や悪事が起こらない。夜間になるとお酒が入ってたまに揉め事や何かがあるらしいけど。とても誇らしいことだった。


 途中、人だかりが出来ていたのでお師匠様と馬を降りて近づいて行ったところ、転んで買い物かごをひっくり返してしまった女の子の手助けを皆でしていた様子だったので、私達も少し手伝って女の子に声掛けして馬に戻り巡回を続けたのだった。


 それ以外目立った騒ぎもなく、私達は街の出口まですんなり巡回を終え、先に馬を預け門番さんの休憩室で待っていた。

 お昼ごはんはどうするのかお師匠様に聞くと、デニスさんが美味しい弁当屋を知っているということで、巡回途中に人数分買ってきてくれるらしかった。



 程なくして、出口の門前に全員揃ったとの連絡が入り、私とお師匠様は休憩室を後にして門前に向かった。

 皆の弁当はデニスさんから、荷物係の隊員さんに預けられていた。


 街を出て少しの間は草原の中を行く。途中大きな木が数本あるので、その木陰でお昼休憩の予定だった。

 油断は禁物だが、普段草原ではあまり魔物は出ない。野生の動物がいるくらいだ。

 私は街の外に歩いて出たことが無かったのでとても新鮮だった。道は舗装されておらず、少しデコボコとしていた。

 この時期街の外に出る者は戦闘の心得のある人間か、用心棒を雇うなどした行商人しかいない。私達のほかに人間は見当たらなかった。



 しばらく歩くと、先頭にいたお師匠様が後続の隊員さんと位置を替わりながら私の隣に下がって来たので何事かと見上げると、望遠鏡らしき物を私に差し出し、言った。


「待ちに待った魔物のお出ましだぞ。あの高い木のてっぺんを見てみろ。首元に赤い模様が有るのが見えるか?あれは火鷲だ。口から炎を吐きながら急降下してきて、足の爪で人間を引っ掛けて攫って行くんだ。あの個体の大きさだと、多分お嬢を狙う。」


 望遠鏡で言われたあたりを見てみると、確かに首元に赤い炎の様な模様を持った鷲が私達の方を伺っている様子が目に入った。


「なるほど。あの大きさ、子供なら容易いのですね?それで、私はどうしたら良いですか?」

 言いながら、緊張してきた。


「デニス!お嬢の隣に来い。」

 とお師匠様が後ろに声をかけると、


「へーい。」

 と、デニスさんが後方から上がってきた。


「デニスが守ってくれるから、今回は大人しく狙われとけ。あの魔物は俺が始末するから、やり方を良く見ておけよ。」

 とお師匠様が言った。


 私達は再び歩き出した。遠くの木の上にいた火鷲が優雅に飛び立ち上空を大きく旋回し始めた。


 我々が近づくにつれ渦を描く様に段々と円を小さくしながら旋回し、我々に狙いを定めると急降下してきた!やはり、狙いは私のようだ。


 デニスさんが横に来て私の前に盾を構えた。

 急降下しながら火鷲が口から炎を出した。私達に炎が襲いかかる!

 その時、お師匠様が私達の前に素早く入り込み剣を大きく振ると、炎がパックリと割れ私達の左右に散らばって消えた!風魔法の斬撃を放ったのだ!

 火鷲はなおも炎の向こう側から私達に向かって来ていた!私の前に立ちはだかったお師匠様は、素早く右に動き、そして上空へ飛び上がった!飛び上がりながら火鷲の左翼を切り裂いた!火鷲は爪を出して私を引っ掛けようとしていたが、その前にお師匠様に左翼を切り落とされ大量の血とともに地面に落ちた!


「お嬢、俺の後ろから離れるなよ!」


 デニスさんと彼の盾は火鷲が落ちた瞬間の衝撃波をものともせず、その直後弾みながら私達の方に転がってくる火鷲に対して体当たりして火鷲の巨体を弾き返した!


「大丈夫だったか?お嬢。」

 と私を振り返ったデニスさんと彼の盾は火鷲の鮮血を浴び所々赤く染まっていたが、私にはその影響は一切なかった。そんなデニスさんがとても格好良く見えたのだった。


 お師匠様が、ぐったりとした火鷲にとどめを刺して、始末完了。


「コイツ昼に焼いて食いましょうよ!新鮮だからきっと美味いッス。」

 とデニスさんが言った。


 食べたい所と売れば高値が付く所だけを荷物に追加し、あとは隊員さんの風魔法で切り刻み、火魔法で焼き尽くし灰にした。残骸は魔物を呼んでしまうので、要らない部分は残さず灰にするか地中に埋めるのが騎士団内での決まり事なのだそうだ。

 私の場合は火属性に適してないから、地中に埋めないといけないなと思った。地魔法で地脈を辿り溶岩を引き出せば火は起こすことが出来るが、大掛かりだし魔力も使いすぎる。埋めた方が早い。


 再び歩きながら、お師匠様に先ほどの技に付いて聞いてみた。

「お師匠様は風の斬撃を放ちましたが、私の場合は魔法になるのだと思うのですが、風鎌(ウインドサイズ)で行けますか?あと、水魔法は火鷲に効きますか?」


「さっきの個体くらいの大きさなら風鎌(ウインドサイズ)で大丈夫だと思うが、個体がでかくなれば当然吐き出す炎も強くなるぞ。もしでかい奴を殺る時はアレをやってみろ、同時魔法を。水魔法も奴には有効だしな。けどな、でかい奴は基本的に仲間達と共にやっつけるものだから、一人で殺ろうとは思うな。」


「なるほど。確かにそれはその通りですね!皆さん一緒に居てくれるわけですからね。同時魔法も、実戦で使うことは無かったので、試してみたいです。」


「森に近づけば試す機会も出てくるさ。だが、その前に昼めしだ!みんな、休憩にするぞー!」


 おお~、と皆さんが隊列を解いて動き出した。

 私も何かしたいなと思い、木陰に地魔法で簡易的な食台と人数分の椅子を作りだした。するとお師匠様が話しかけてきた。

「さすがだな、お嬢。こりゃあ良い。手際も良いな。そうやっていつも遊んでいたのか?」


「はい。遊びながら色々な魔法を覚えましたよ。あ、デニスさん、これが終わったらそのあたりに水場を作りますから、盾とお顔の血を洗い流してくださいね!」

 と話す私に向かって、皆が驚く。


「え?水場を作る?」

「どうやって?」

「水場って作れるもんなのか?ここには川もないぞ?」


 私は説明した。

「地魔法で水脈を探して、そこから水を引っ張るんですよ。溶岩なんかを引っ張ってくるのは一苦労ですが、水脈はあちこちに有るので魔力も少なく時間も短く出来ますよ。」


「ほぇ~!さすがは上級属性だな。土魔法とは規模が違うぜ!!だが、嬉しいぞ。ベタベタして嫌だったんだよなぁ、これ。」

 渋い顔をしながらデニスさんは言った。


 そんなわけで、皆に見守られながら水場の小さな堀を作り、水脈を探り、水を引いた。

 私が水場を作っている間に他の隊員さん二人が見張り番をしてくれた。その間、お師匠様と別の隊員さん二人とデニスさんが先に昼ごはんを食べた。

 私が水場を作り終わると、お師匠様と別の隊員さん二人がまず水場で軽く顔を洗ったりしてから見張り番を交代し、私と他の隊員さん二人がご飯を食べた。

 我々がご飯を食べている間にデニスさんが盾と顔や首元などを洗い流して、スッキリした顔をしていたのが少し可笑しかった。

 やっぱりデニスさんは愛嬌があって面白い。人間として好ましい方だなと思った。



しばらく投稿期間が空いてしまい申し訳ないです。

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