まったり昼下がり
新人駅員の野坂は、必死に戦っていた。
このままではいかん。負けてはダメだ。この戦いは絶対に負けられないのだ。なにがなんでも勝つのだ、と。
朦朧とする意識をなんとかして回復しなくてはならない。
野坂君ピンチ!!
朝ラッシュの喧騒が嘘のように穏やかな改札口に、誘導チャイムの音が鳴り響き、時折道路を走っていく車の音や、駅前の歩行者信号から聞こえてくるメロディが、野坂君の睡魔を覚醒させようと躍起になっている。
堪えろ。堪えるんだ。野坂君!!
コクン、コクン。制帽を前後に、また時には左右に揺らしながら、重たい瞼を必死に開けようとするが、適度に心地好いそよ風が窓口から吹き込んでくふと、これがまた良い塩梅に睡魔に効くこと効くこと。
もうこれ以上は耐えられない。
薄れ行く意識の中で思った矢先に──。
「野崎君」
すぐ目の前で自分を呼ぶ声が。
不意を突かれ慌て驚いた野崎君は、座っていた丸椅子を盛大に鳴らして立ち上がり、背筋を伸ばして気をつけの姿勢になった。
「あら、起こしちゃってごめんね」
寝ぼけ眼を瞬かせて声の主を見てみれば、清掃のおばちゃんこと宇賀持さんが立っていた。
「あ、いや、すみません」
「今日はイイ陽気だからねぇ。そりゃ眠くなるよ」
ニコニコ笑顔でそう言うと、徐に右手を上げ、ビニール袋を