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六話

シルビアンヌとダニエル、そしてアリアはオレル侯爵領へと馬車で向かい、そしてその領地内の森の豊かさに驚いていた。


「すごいわ。こんなに森が美しいなんて。それに、ほらお兄様!向こうにトナカイがいますわ!」


 窓に張り付いて興奮するシルビアンヌに、ダニエルは微笑ましげに視線を向けながら言った。


「あれはね、トナカイではなくて鹿というんだよ。」


「まぁ!なんてそっくりなんでしょうね!あぁ、今度はカピバラがいますわ!」


「あれはね、イノシシって言うんだよ。シルビアンヌは色々な動物を知っていて感心するなぁ。」


「ふふん!私、動物図鑑でちゃんと勉強してきましたのよ!」


 堂々とそう言ったシルビアンヌをアリアは目を細めて見つめながら、先日の書庫での様子を思い出していた。


 様々な動物を調べては興奮するシルビアンヌはそれはそれで可愛らしかったが、絶対にこの森にはいない動物ばかり調べていた。


 それでもシルビアンヌが瞳を輝かせて本を読み進めていたので、アリアはその事にはあえて触れていない。


「お兄様。ほら、侯爵家の屋敷が見えてきましたわ。」


 石造りの要塞なのではないかといるような荘厳な作りに、シルビアンヌは驚き、ダニエルに視線を向けると言った。


「すごいですわね。もしかしたら森の動物達から攻め込まれないようにこのような作りなのかしら?」


「ふふふ。ここはね、隣国と面した土地になるからこのような作りなんだよ。時々シルビアンヌは森の妖精のように可愛らしい事を思いつくね。」


 淑女教育も、基本的な勉強も、問題ないと言われるシルビアンヌではあるが時々可愛らしい突拍子もない事を言うからアリアは気が抜けない。


 思わず吹き出して笑いそうになるのをお腹に力を入れてぐっと堪えていると、シルビアンヌが眉間にしわを寄せている。


 ダニエルには気づかれなかったが、いつも一緒にいるシルビアンヌにはおそらく笑いを堪えているのがばれている。


「アリア?・・ふふふ。後で、貴方にしかできない事を頼むから、よろしくお願いね?」


 一体何をさせられるのであろうかと、アリアは遠くを見つめるしかなかった。


 侯爵家の出迎えの際に挨拶をしたギデオンはまだ幼さは残るものの、体つきはかなりよく、きりりとした顔つきなど将来の姿を彷彿とさせた。青みがかった髪を短く切り揃え、切れ長の鷲色の瞳が印象的である。


 その姿は令嬢達からは結構な人気がでそうだなとシルビアンヌは思いながら挨拶を済ませたのだが、ギデオンからの申し出に思わず目を丸くする。


「よろしければシルビアンヌ嬢。一緒に散歩でもしませんか?」


 まさかのお誘いに思わずダニエルに視線を向けると、ダニエルは少し顔を顰めたもののさすがに断るのは失礼だろうと判断したのか、小さく頷いた。


「えぇ喜んで。」


 シルビアンヌはギデオンの差し出した手を取り庭を目指した。アリアはダニエルと視線を交わすと二人の後ろからついていく。


 庭には美しい薔薇が植えられており、その先に見える噴水の前でギデオンは足を止めると噴水の淵に腰掛けて言った。


「実は、ラルフ殿下からシルビアンヌ嬢の事を聞いて、ぜひ話してみたいなと思ってたんだ。」


 大人が誰もいないからかギデオンは口調を崩すと歯を見せて笑いそう言った。一体ラルフ王子から何を聞いたのだろうかとシルビアンヌは思いながら、もしここにいる相手がギデオンでなければ乙女的には頬を染めるシチュエーションなのになぁとため息を漏らしそうになった。


 ギデオンの恋愛の矛先は殿方である。


 そう思うとシルビアンヌはどんなにイケメンを前にしても冷静でいられた。


 出来ればアリアとツーショットでその噴水の前に座ってほしい。脳内で写真撮影をしたい。


「殿下から何を聞いたのです?」


「とても美しく聡明な令嬢だと。後、侍女の方も面白い方だと聞いたよ?」


 ちらりとアリアの方へと視線を向けたギデオンに、シルビアンヌはやはりかと察した。


 やはり、ヒロインちゃんの魅力はすさまじいらしい。


 ラルフは恐らくアリアの美しさに気付き惹かれたのだろう。だからそれを思わずギデオンにも話してしまった。


 ギデオンが恋のライバルになるとも知らずに。


 っく・・・尊いな!おい。


 

読んでくれるなんて尊いな!

ありがとうございます。

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