四話
シルビアンヌはアリアの手を引いてざわめきの方へと足を進めると、令嬢らが次はだれが殿下とダンスを踊るかで険悪な雰囲気が流れていた。
ラルフは苦笑を浮かべており、令嬢らはヒートアップしていっている。
まぁ、十歳前後の子ども達ばかりの場であるから、言い合いになるのも仕方がない。
令嬢とはいえ、誰もが王子様にあこがれる女の子なのである。
「アリア、いい?私が納めるから、その間に殿下をそっと休憩室にご案内して頂戴。いいわね?」
「え・・私がですか?」
「ええ。お願いね。」
ヒロインちゃんならば出来るはずである。
シルビアンヌは満面の笑顔で頷くと、ざわめきの中心地へと入っていった。
「次は私が殿下と踊るのです!」
「貴方は、子爵家の令嬢でしょう?私の方が先よ!」
「まぁ!ならば私の方が先でしょう!」
その声を静めるように、シルビアンヌは手をパンパンとたたくと視線を集めた。
シルビアンヌの方へと令嬢らは目を向け、そして少しばつが悪そうに顔を歪める。
公爵家令嬢には逆らえないと思っているのか、それとも厄介な相手が出てきたとでも思っているのか。
シルビアンヌは優雅な笑顔を張り付けると優しい声で言った。
「ふふふ。可愛らしい皆様に、そんなに熱烈にダンスを申し込まれたら、殿下も困ってしまわれますわ。」
視線を令嬢達に向け、シルビアンヌは美しく肩をすくめる。
「それに、ずっと踊り続けるのもさすがに疲れるでしょう?殿下、よろしければ少し休憩してはいかがでしょうか?」
視線をラルフへと向けると、ラルフは柔らかく微笑みを浮かべると頷いた。
「そうだね。少しだけ休憩させてもらうよ。」
「アリア、殿下をお連れして。」
「は・・はい。」
アリアと共にラルフが移動するのを見て、シルビアンヌはもう一度令嬢らに視線を向けると可愛らしく微笑みを浮かべて言った。
「ふふふ。邪魔をしてしまってごめんなさい。でも、私も皆様ともっとお話ししたいわ。殿下とばかりではなくて、交流も深めましょうよ?せっかくお友達になれる機会ですもの。」
その言葉と、美しさではなく可愛らしさを見せたシルビアンヌの姿に令嬢らは顔を一気に赤らめた。
ギャップ萌えというやつである。
「わ、私もシルビアンヌ様とお話ししてみたかったのです。」
「あ、私もです!」
「私も!」
次々に令嬢らはシルビアンヌの傍へと歩みより、そして女子トークが始まる。
シルビアンヌはたくさんの令嬢らの声に耳を傾け、そして驚いたり、笑ったりして、さらに令嬢らの心を引き付けていく。
「シルビアンヌ様・・・お可愛らしいわ。」
「あぁ、あんなに美しくって可愛らしいなんて・・・罪です!」
「本当に。私もシルビアンヌ様のお友達になれるように頑張りますわ!」
「私も!」
会場は別の意味で盛り上がり始めていた。
そして、シルビアンヌ自身は知らぬことではあったが、この日、シルビアンヌを愛でる会という物が設立されたのであった。
その頃、休憩室へとラルフを案内したアリアは早急にシルビアンヌの元へと戻ろうと頭を下げ退出しようとしたのだが、その手を取られて止められる。
「ねぇ、君、男の子だよね?」
「え?」
ラルフはにっこりとほほ笑みながら、アリアの腕をぐっと引き、自分の方へと寄せるとその耳元でささやいた。
「男の子なのに女の子の格好をしているのは、シルビアンヌ嬢の趣味かな?」
「な、何の事でしょう、私はお、女の子です。お戯れはおやめください。」
「ふぅーん。そう。女の子・・・ねぇ?」
にっこりとラルフは笑うと、アリアに言った。
「女の子のままだと、きっと彼女は誰かにとられてしまうけれど、それで君はいいのかなぁ?」
クスクスと笑われアリアはむっと表情を歪めそうになる。
けれど、自分は、そうできる立場ではない。必死に笑顔を張り付けてアリアは言った。
「私は、ずっとお嬢様にお仕え出来ればそれでいいのです。」
「いつまでそう言い続けられるか・・ふふ。面白いね。これからが楽しみだ。」
「では、失礼いたします。」
アリアは部屋を出て、来た道を戻ろうとして足を止めた。
「・・・シルビアンヌ様の運命の相手は・・私じゃないことくらい分かっている・・だから、運命の相手が見つかるまでは・・・私が・・・一番傍にいるくらい・・・いいじゃないか。」
アリアの消えそうなほど小さなその声は、誰にも届かない。
読んでもらえるって、嬉しいですよね。
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