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男達の秘め事2

シルビアンヌが部屋から去った後、男四人は彼女の異様な雰囲気に黙り込んでいた。


 ラルフは、静かに息をつくと口を開いた。


「先日、シルビアンヌ嬢が一瞬だけ、裏庭の森の中へと姿を消した。その時間は五分ほどだったそうだが、突然辺りに霧が立ち込め、そして姿が消えたという。」


 ギデオンは足を組み替えると天井を見上げて呟くように言った。


「ということは、その時に、何かしらがあったんだろう。」


 ジルも腕を組むと唸り声を上げるように言った。


「だろうね。数日前から異様にシルビアンヌ嬢の様子はおかしくなった。」


 四人は静かにそれぞれが心の中で思った。


 シルビアンヌが魔女になったのだろうと。


 けれども、先ほどのシルビアンヌの言葉はどういう意味なのだろうかとギデオンは首を傾げる。


「だが、何故突然運命の相手なんだ?」


「何だか夢見る乙女みたいなことを言っていたね。」


「確かに・・・運命の相手らしき相手は、ここにいるのにな。」


 ラルフ、ギデオン、ジルは視線をアリーへと向けた。


 その視線に、アリーは意味が分からないと言うように首を傾げるとラルフは言った。


「シルビアンヌ嬢は結局、誰に一番愛されているのか感じ取っていたみたいだし、僕達の眼からしてみればシルビアンヌ嬢とアリーは相思相愛のように見えるんだけれどね。」


「本当だよなー。俺達当て馬感半端なかったもんな。」


「心外ですよね。私達ってとっても魅力的な相手なのに。まぁ、でもシルビアンヌ嬢には見る目があるってことなのかもしれませんね。結局アリー以上にシルビアンヌ嬢を愛せている男はいないようですし?」


 その言葉にアリーは目を見開くと顔を真っ赤に染め上げた。


「ぼ・・僕の気持ちは、そうですけどシルビアンヌ様の気持ちは・・・わかりませんよ。」


 ラルフは肩をすくめると言った。


「まぁとにかく、恐らくはシルビアンヌ嬢は魔女となった。そして何故か運命の相手を探そうとしている。これがどういうことなのか。」


「なぁ、魔女について国で何か他に資料はないのか?」


「うーん。調べた限りでは、とにかく魔女は二通りに分かれる。悪しき魔女か善き魔女か。だがまぁ、気になる点はあるんだ。」


 ジルが首を傾げる。


「何が気になるの?」


「悪しき魔女と呼ばれる所以が、人の心を手に入れようとしているという点かな。」


「人の心?」


「そう。文献によれば、悪しき魔女は王子の心を手に入れようと魔法を使ったとか、人の心を操り自分へと魅了しようとしたとか。悪しき魔女が人の心を手に入れようとして城の審判の場で魔力を水晶へと封じ込められて処刑されている。」


 処刑という言葉に、一瞬その場がシンとなる。


 だがジルが眉間にしわを寄せた。


「城の審判の場で?・・・何故そんな場所で?通常は処刑は西の端にある処刑所で行われるのが常なのに。」


「何でも、魔女の魔力を奪うことが出来るのは、城の審判の場だけらしい。」


 四人はその事に悩むように顔を歪めると、また沈黙が流れる。


「ちなみに・・善き魔女は、どうなるのですか?」


 アリーの問いに、ラルフはさらに眉間にしわを寄せると言った。


「・・審判の場にて、善き魔女と証明する相手と共に宣誓し、魔力を水晶へと込め、国に忠誠を誓うらしい。」


「・・・善き魔女と証明する相手・・・それがもしかして・・・運命の相手?」


 しずかに、ゆっくりと頭の中でピースが埋まっていく。


 悪しき魔女は人の心を手に入れようとし、善き魔女は運命の相手と宣誓し国に忠誠を誓う。


 悪しき魔女は死に、善き魔女は運命の相手と生き延びる。


 皆の顔色が次第に悪くなる。


「これが真実なら・・・シルビアンヌ嬢が運命の相手を探すと言ったのも、頷けるな。」


 ラルフはぽつりとそう言うと、立ちあがった。


「王城にてこれが真実かどうか調べてみる必要があるな。ギデオン、ジル、アリー、一緒に王城の資料をもう一度目を通してもらえないか?僕が気づいていないだけで、何かが隠されているかもしれない。」


 その言葉に皆頷き立ち上がった。


 シルビアンヌの事は皆大切に思っている。


 そして今、おそらくシルビアンヌは一人で苦しんでいる。


 ならば、助けるのが自分達の役目だ。


 四人は王城に向かって歩き出した。





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