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十九話

結局シルビアンヌはその後四人の圧に負けた。


 正式にではないにしろ、本人たちからの求婚を受けたのだから父に相談しないわけにもいかず、帰り次第早々にその話を父にすると、笑いながら、時間はあるのだからゆっくり選んだらいいと言われた。


 我が父ながら楽天家すぎないだろうかと心配になる。


 その後も月に一度は公爵家か子爵家に集まりお茶会は繰り返され、そして、結局だれと婚約するか決めることも出来ずに時間だけが流れていった。


 そう。


 月日は流れ、シルビアンヌは十六歳となっていた。


 そしてシルビアンヌはエルドラド貴族学園の正門前にて、何故か四人と一緒に登園し、皆の注目を集めていた。


「まぁ見て!殿下だわ。相変わらず優しげでさすが王子様ね。」


「私は断然ギデオン様ね。あの逞しいお姿、うっとりしてしまうわ。」


「あら何を言っているの?あのジル様のお美しさが分からないの?」


「何を言っているのかしら?見て下さいな。アリー様の可愛らしい事。まるで可憐な令嬢のよう。」


 ざわついていた令嬢達は、その視線の先にいる紅一点の存在に視線を向けると、熱い視線をより一層熱いものに変えてため息をついた。


『でも一番は、シルビアンヌ様ね!』


 声をそろえて令嬢達はうっとりと息をつく。


「あの美しい赤髪。尊いわぁ。」


「可愛らしくて大きな瞳も、素晴らしいわ。あの瞳で見つめられたら。はぁ想像しただけでドキドキしてしまうわ。」


「どうやったらあれほどまでに素晴らしい体型を維持できるのでしょうか。ぜひお友達になってお聞きしたいわ。」


 令嬢達はうっとりと話しているのだが、そんな会話など耳に入らないシルビアンヌはひたすらにドキドキと緊張していた。


 この四人に囲まれると令嬢達の視線を独り占めしてしまうから怖いのである。


 はっきり言えば、一人で登園したかった。だが、早めに出ようと思っていたのにすでに馬車の中には四人が待ち構えていたのである。


 しかも王宮の高級な王族専用の馬車であるから断れない。


 学園に入学する前、シルビアンヌは皆に言ったのだ。


 もう16。そろそろ各自婚約者を見つけなければならない年齢だろうと。


 だが、それはにこやかに首を横に振られてしまう。


 この国では女性は18歳から20歳くらいが結婚適齢期といわれているが、男性は20歳から30歳くらいと言われている。


 シルビアンヌの方が追い詰められるように四人に言われた。


『そろそろ決めてはどうだろうか?』


「だから、皆様お断りいたしますとお伝えは何度もしております!」


『それはダメ。』


 最近、四人のシンクロ率が高い。


 そろそろヒロインちゃんであるアリーに惹かれ始めてもいいはずはのにと思わずにはいられない。


 どうせそのうち皆アリーに夢中になるのにと、シルビアンヌは心の中でため息をつくのであった。





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