五十二話 姉さんが男をつれてきたぁぁ!!!
今日は12月30日、澪の実家に向かう日だ。
本当は31日に行くと澪が言っていたのだが、どうやら30日から来てもいいよと唯さんから言われているのにも関わらず俺に遠慮しているようだったので、俺のことは気にせずに澪のしたいようにしていいよと言ったら、30日に行きたいと言ってきたのでそうすることにする。
「鏡くん、ちゃんと部屋の掃除してきた?」
「したわ、というか一緒に掃除したじゃんか」
昨日、澪の指導の下、大掃除をしたのだ。
リビングや台所など隅から隅まで手伝わしてしまって申し訳ないと思った、思ったんだがなぁ......
年頃の男の部屋を大掃除しちゃうってどうなのよォ......
いや、いいのよ?別に見られて困るような物は持ってないからさぁ、その辺は頭に叩き込んでいるから思い出せば............ね?
あとは、冷蔵庫の中もしっかり使い切ったし、(俺は使ってないから澪曰くって感じだけど)問題は無いはずだ。
今日から何日間か澪の実家に行くのでキャリーケースに着替えも入れたし、忘れ物はないと思う。
たぶん。
「えへへ、そうだよね」
「本当にごめんな、手伝わしてしまって」
「ううん、いいんだ、ボクがやりたくてやったし、(それに将来の予行練習みたいな)」
「ん?最後の方小さくて聞こえなかったんだけど」
澪は顔を真っ赤にして手を振りながら『なんでもない』と言うので気にしない方針の方がいいだろう。
俺と澪がキャリーケースを引きながら並んで最寄りの駅に歩いているのだが。
「実家ってどんくらいかかるんだ?」
「んー、そうだなぁ、3時間もかからないかなぁ」
ん、となると意外と遠いのか?まぁ、普通に電車乗ったりとかの時間を考えればそこまでか。
ただ、今日の澪は若干テンションが高くてルンルンしている。
「澪、テンション高いな、やっぱり実家に帰れるって楽しみ?」
「んー、まぁ、そうだね、でもどちらかと言うと鏡くんと一緒に行けるのが嬉しいかな?」
イタズラっぽい笑顔を浮かべてそう言ってきた。
〜〜っとにコイツは、こういうこと言って......
勘違いしちゃったらどうしてくれるんだよ、本当に......
その後電車に乗って二時間、バスに揺られること三十分、少し歩くと。
「あい!ここがボクの家だよ!」
そこには洋風の豪邸があった。
あー、そういえば俺の前の実家もこんな感じだったなぁ、と懐かしくなる。
まぁ、今は引っ越してどちらかというと和風の豪邸だからな、日本庭園的のもあるし。
外の門の所にある呼び鈴を鳴らす。
すると直ぐに女の人の声がする。
『はい』
「澪だよ、今帰ったよー」
『お嬢様!?分かりました、ただいま向かいます!』
んー、メイドさんかな?
俺の家もメイドはいたけど、今は和風にクラスチェンジしたんだよなぁ、あの場合ってなんて言うんだろうか。
外の門のオートロックが外れる音がしたので中に入り玄関の前へ。
というか玄関やっぱり遠いな、まぁ一般的と比べたらの話だけど。
ガチャ
「お帰りなさいませお嬢様、っと」
出てきた三十代前半?くらいのお姉さんは澪を見たあとにチラッと俺を見てきて。
「橘 鏡様ですね?奥様から聞いております、ようこそいらしてくださいました」
「いえいえ、こちらこそ今日から何日間かお世話になります」
しっかりと頭を下げる、まぁ、本来はこういうことをするなって言われるはずだけど、うちの方針としてはしっかりとした態度と対応をだからな。
人として当たり前のことはせねばな。
「あ、これは手土産で、島風さん達のはこちら、使用人の方々にはこちらです」
本来は島風家に渡す手土産なら本人達に渡すべきなのだが、使用人がいる家はこうやって使用人に渡すのが当たり前なのだ。
「わざわざ、私達の分も......ありがとうございます」
「ほら!鏡くん、上がって!」
隣で話を聞いてた澪がプーっと頬を膨らませて引っ張ってきた。
ん?なんだなんだ?
「お、おう、分かったよ」
対応してくれたお姉さんは『あら、お嬢様が......あらあらうふふ』としていた。
何なんだろうなぁ。
「お邪魔します」
「うん、いらっしゃい!」
おっ、良かった良かった、邪魔するなら帰れって言われなかったぜ。
「姉さんが帰ってきたって!!?」
「待ってください!坊ちゃん!」
奥からバタバタとした音と共に男の子の声が聞こえてきた
すると横の扉がバンッ!と開いて少年が飛び出してきた。
そして俺の事を見てプルプルと指を指すと............
「姉さんが男を連れてきたぁぁぁぁーーーーー!!!!!!」
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