四十六話 だって気づいてしまったから※澪視点
恥ずかしがりながらも鏡くんについて行くと周りにはプリクラが多く置かれているブースに来た。
「え、種類多くね?どれがいいとかあるの?」
「いや、ボクもやったことないから分からないけど」
鏡くんに聞かれたけどボクはやったことないからこそ憧れていたので流石にこれが良いやつ、とかは分からない。
「んー、これでいいんじゃない?」
とりあえず目についたところに入ってみる。
んー、お金を入れるところは?
大体は目につきやすいところにあると思うんだが見当たらない。
「ねー鏡くん、お金どこに入れればいいのー?」
鏡くんなら知ってるかも!と思って聞いてみる。
返事はなかったがその代わり
「んー、あ、動いた、もしかして鏡くん払ってくれた?」
「おう、まぁこんくらいなら払うよ」
「そっか、ありがと!」
外にあったのかー、それはさすがに見つからないなぁ。
動き始めているのでポーズを決めなきゃ
「ポーズはどうする?」
「とりあえずピース?」
1枚目は二人並んでニコリとピースをする
「次は肩組もうよ」
「おう」
2枚目は鏡くんと肩を組んで写真を撮る。
......なんか鏡くんから落ち着く匂いがするんだけど。
............はっ!危ない危ない、と、とりあえず3枚目のポーズを考えないと。
あまりにも落ち着くいい匂いがしていてポーっとしてしまったが我に帰る。
少し考えるとそういえば漫画でプリクラを撮ってる構図であったなー、と思ったことを言ってみる。
「あ!そーだ3枚目はボクが前に出て鏡くんが後ろからボクの頭の上に顔を乗せてさ、4枚目をその逆でやろうよ!」
言ってみると、んー、まぁいいか、みたいな反応を鏡くんがしたので鏡くんの前に移動する。
身長差的にボクは屈む必要が無いのでそのままでいると。
鏡くんが後ろからギュッとしてきた。
「ななな!!?」
なん!?なんで抱き!!???
恥ずかしくて顔に血が昇っていく、だけどさっきの落ち着くいい匂いが同時に来てふわーっとしてしまう。
なんか、落ち着いてきたような気がする。
「ほら三枚目が撮れたぞ」
「う、うん......」
何かを言われたような気がするけどいまいち頭に情報が入ってこないので上の空で返事する。
少しすると鏡くんがいきなり立ち上がり移動し始めた。
「にゃにゃにゃ!ちょっ待っ!」
今動かれるとボクちょっと心の準備が!?
慌ててボクも立ち上がり移動しようとしたその時であった。
自分の足に足を引っ掛けてしまって転んでしまった。
その転んだ先には鏡くんがいて、ギュッと抱きついてしまったけど体を抑えないとって力を入れようとしたんだけど止められずに思いっ切り鏡くんにぶつかってしまった。
だけどそのぶつかってしまった場所に問題があって......
ボクの顔の目の前には鏡くんの顔があって。
「ごごご、ごめん!」
慌てて離れたけど確実にボクの......
ボクの唇は鏡くんの頬を捉えていた。
「い、いや!構わないって言うかむしろちょっと嬉しかったし気にするな!」
鏡くんが慌てた様子でそう言ってきた。
「う、嬉しかった!?そ、そっか、いや、うんボクも嬉しかったけど......」
ど、どういうこと!?キスされても大丈夫だったってことかな!?
ま、まぁボクもキスできて嬉しかったというかなんというか、いや自分でもよく分からないけどそういうことでして。
「と、とにかく!い、今、何も起きなかった!忘れることにしよう!な?」
そう言って鏡くんは外に出ていったけど。
ボクは自分の唇に手を持っていって触る。
「忘れるなんて......出来ないよ......」
だって気づいてしまったから......
キスしてしまって話している時だ、自分がキスしてしまったのにその事が嬉しいと思ったその時ふと
『それを人は異性として好きと言うんだよ?』
この言葉を思い出した。
この言葉を今自分の中で噛み砕いて思ったこと、今まで感じてきたことの無い感情、モヤモヤする何かに名前をつけた、つけてしまった。
だけどそうだと思ってしまえばスッキリしてむしろその感情は大きくなった、いや、今もなお大きくなり続けているというべきか。
「ボクは、ボクは鏡くんのことが好き......」
だけど、今はそのことを考えるよりも鏡くんを待たせたくない。
その一心で外に出たのだが鏡くんは出てすぐのところで何か考えている様子だった。
どうしたんだろう......
気にはなった、気にはなったんだけどその事よりもボクと鏡くん二人で撮った写真の方が気になってしまった。
鏡くんのこの悩み方は大抵大きな鏡くんが傷つくようなそのような感じではない悩み方に見えたので問題ないだろうと思い写真を優先した。
ぱっと操作して現像する、受け取り口?でその写真をとって鏡くんの方へ向かう。
「鏡くん、現像終わったよ?」
「え、いつの間に?」
ハッとした様子でこちらを見てきた。
「だって声掛けてるのに反応無いし」
「ご、ごめん」
ごめん、声はかけてない。
悩んでいるような感じがして邪魔はしたくなかったし。
協力するってことだったら声はかけてたとおもうけどね。
大丈夫だと思ったし
「許しません!」
「えぇ!?」
「嘘だよ!」
「知ってた」
「だよね!」
なんか、恥ずかしくなってきたのでちょっとふざけてみる。
「んー、この写真いる?」
ボク的には2枚ともボクが貰うっていうのにすれば保存用と観賞用にとっとけるいうかなんというか。
「なんでだ?」
「い、いや、決定的なところ撮ってあるし」
「お、思い出させんなよ」
「えぇ、今のボクのせいじゃないでしょ」
言い訳したのはボクだけどさぁ、流石に今のはボクのせいじゃないよぉ。
「一応、一応貰っとく」
「分かった、はい」
残念だけど、でもボクと鏡くんが一緒の写真を持ってるって考えればすごくすごーくいいことに思えて、ちょっとルンルン気分になってきた。
「ん、もういい時間だね。明日も朝から遊ぶしもうそろそろ帰ろっか!」
フンフーンと鼻歌を歌いながら家の方に歩いていく。
......ボクが好きだって思った鏡くんのことを考えながらね。