四十四話 ちょっとした夢 ※澪視点
今日はクリスマスイブ
鏡くんと遊ぶ約束をした日だ。
最初に誘った理由は遊べばこの気持ちが恋かどうか分かるかもっていう理由だったけど今はそんなことなくただただ遊びに行くのを楽しみにしている。
それにそんなこと考えてたら鏡くんも楽しめないだろうし。
ボクのことよりも鏡くんを優先したいって思ったからね!
まぁ、そもそもボクとクリスマスを過ごすのが嫌だって言われたらどうしようもないんだけど......
なんか不安になってきた......
鏡くんボクと一緒にクリスマスを過ごして良いのかな?本当は嫌とかじゃないよね?
うーん......
少し考えながら待ち合わせの場所に行く
「お待たせしま......今日はそのスタイルなのですね」
「あぁ、一緒に出かけるからな」
鏡くんは変装スタイルをしていた
「私は別に普段の格好でも気にしませんよ?」
「この格好嫌いなのか?」
「い、いえ。嫌いでは無いですけど」
嫌いなんじゃなくていつもよりドキドキしちゃうっていうか、なんていうか。
いつもより?いつもはドキドキしてるっけ?
......いや、してるか、落ち着くのと同時にドキドキもしてるみたいな感じ。
「どっ、どっちにしろ鏡くんは鏡くんですし」
とりあえず否定しないと!どっちの鏡くんも鏡くんだから!
そう思い言うと鏡くんは焦ったように周りをキョロキョロし始めた。
「どうしたんですか?」
「なんでもない気にするな、そんじゃ行きますか」
そう言ってため息をつきボクの隣を通り過ぎたんだけどその時
「まだ学校、名前気をつけて」
「あっ......」
いつも鏡くんって呼んでたからつい名前で呼んじゃった......
申し訳ない気持ちで鏡くんの隣に行くとしょうがないなぁという感じで苦笑いしていた。
次から気をつけないとなぁ。
その後学校の最寄り駅から何駅か離れたところで降りてカラオケ屋を探す、すると鏡くんが
「なぁ澪、ここでいいか?」
指を指したところにはボクでも聞いたことがあるお店があった。
「はい、貴方と一緒にいられるならどこでもいいですよ」
正直鏡くんと一緒にいれれば楽しいので鏡くんの入りたいところでいいのだ。
すると鏡くんは驚いた顔になって少しすると顔が赤くなり始めた。
どうしたのかな?そう思い少し前自分の言ったことを考えると結構恥ずかしい事を言っていることに気がついた。
「い、いえ、そういうことではなくてですね?いや、そうなんですけどそうではなく......と、とにかくどこでも大丈夫です!」
と、とりあえず最低限の情報を伝えれば!その一心で言った。
すると鏡くんはホッとしたような悲しいような複雑な顔に一瞬なったがすぐに
「とりあえず行こうぜ」
そう言って店に入っていった。
ついて行くとあっという間に鏡くんが受付を済ましてくれた。
結構カラオケに来てるのかな?
そのあとはドリンクバーで飲み物を取って三時間ほど歌っていたんだけど、ドリンクバーで色々な飲み物を混ぜてみるっていうちょっとした夢を叶えたんだ!
......ただ、美味しくなかったけど。
あとは歌ってる時の鏡くんはカッコよかったなぁ。
なんか好きな歌手を見てテンションが上がるみたいな感じでボクのテンションもすごく上がっていたと思う。
カラオケを出ようという時にちょっとお手洗いに行ったんだけどその後だった。
「ただいまー、んじゃ会計行こっか」
「ん?もう払ったぞ?」
「え?いくらだった?」
先に払ってくれてたのかぁって思ってボクは財布を出したんだけど。
「んーにゃ、俺の奢りだ」
「いや、それは悪いよ」
「まぁまぁ気にすんなって」
「いや、気にするよ」
気にしないわけがないよ、それは鏡くんのお金でしょ?
「あー、まぁあれだ、男の小さなプライドってことでここは一つ」
「???」
なんでプライド?
分からなく首を傾げていると鏡くんがハァ、とため息をついて横を向くと
「女の子に金を払わせる訳にはいかないだろ?」
「......ふぇ?」
えっと......それって......漫画とかで見るデートの時に男の子が払ってるやつ?
「......行くぞ!」
聞く前にスタスタと移動し始めてしまった、まるで照れ隠しのように歩き始めたのでたぶんボクの考えていることはあっているのだろう。
「......ありがとう!」
隣に並んだ時にしっかり感謝する。
奢ってもらったからとかではなくてただただボクのことを女の子扱いしてくれた事が嬉しかった。
プイっと顔を背けて『おう』とだけ返事してきたけど照れていることがわかる。
ボクも恥ずかしいけど嬉しいっていうよく分からない感情になってるからお互い様だろう。