四十三話 今まで気づいてなかった気持ち
あの後ショッピングモールに移動したのだが六時くらいにはイルミネーションを見に行こうという話になり、ほぼほぼ滞在することは出来なかった。
しいて言えばお皿とかを見て回った感じだな、澪がペアのマグカップをずっと見ていたので欲しいのか?って聞いたら欲しいけどお金がないからいらないって言われたので、今度プレゼントしようかなぁと思ったくらいか。
そんなこんなで見に来たイルミネーションの最寄り駅についた。
「暗くなるのが早くなったなぁ」
「それ結構前からじゃない?」
「そうか?」
笑い合いながら話す澪と俺はしっかり手が繋がれていた。
今日は一日中手を繋いでいたのだが、なんで手を繋いでるんだ?と聞いてみても変わらずボクが繋ぎたいからだよ?と返ってくる。
そういう言い方をされると俺だから違うって分かるけど勘違いが起きそうだなぁ。
とぼんやりと考えてしまう。
「それにしてにも人が多いな」
「クリスマスだからね!」
「それはそうだが迷子になりそうだ」
「ふふふ、でも手を繋いでるから迷子になる時はボクと一緒だね」
意識しないようにしてたからあまり強調しないで欲しいんだが......
人が多い中恐らくイルミネーションの方向へと進んでいるであろう流れに乗って移動していく。
周りを見てみると女子同士や男子同士、女子も男子も何人もいるグループなど多くの人がいるがやはりカップルが多い。
周りからしたら俺も澪もカップルに見えてるのか?
澪と喋りながら移動しつつそう考えている。
少しすると前方の方がかなり明るいことに気づいた。
「もしかしてあれが」
「イルミネーションかもね!」
澪は今にも走り出しそう......だが周りに人がいるので走ることは出来ない。
「んー、早く見たいんだけどなぁ」
「まぁまぁ、もうちょっとだから」
歩いていくとその全容が分かり始める。
道路を挟んだ両サイドの街路樹がライトアップされていてそれが長ーく続いている。
道路はイルミネーションだからか歩行者天国となっており、先程の移動時よりも余裕がある。
「すごーい!綺麗だね!」
「そうだな、すげぇ綺麗だ」
夜という闇の中に光る木々は輝いていて幻想的だ。
そこではたと思い出す、そういえばクリスマスプレゼントを用意したんだった。
そこでゴソゴソと鞄を漁り
「はい、クリスマスプレゼント」
「え、本当!?ありがとう!じゃあボクからも!」
それぞれがプレゼントを出し交換する。
澪が受け取った箱を開けると
「マフラー?」
「おう、最近寒いだろ?澪、手袋はしてたけどマフラーしてなかったから」
「そっか!ありがとう!ボクのもあけてみて!」
澪から受けとった箱を開けてみる、すると
「これは、マフラー?」
そう、澪から貰ったのもマフラーだった、だけど一つだけ決定的に違う部分があって。
「これ、手編みじゃないか?」
そう、市販のものでは無い、正真正銘の澪の手作り。
しかも装飾などもされていてすごく上手いし。
「ちょっと頑張ってみました!」
「すげぇよ、マジですげぇ、ありがとな!」
「うん!」
これから使わして貰おうと思いとりあえずしまっておく。
それよりも、と周りを見渡すとやはりイルミネーションは綺麗で、ふと
湊はこの中で告白しているのだろう。
そう思った。
そう考えると何か込み上げてくるものがある。
頑張れって思う気持ちとそれと、羨ましい?かな?
湊は勇気を出して凄いな、と思う。
ただ、なぜそう思ったのかは分からない。
ただただザワザワとした感情、澪とのことを考えた時と似ている。
むしろ同じような感情のような気がしてならない。
だが、もう少しで分かりそうな気がするのだが。
湊、告白、澪、綺麗、嬉しい?、楽しい?
共通点がないような気がする。
ただどこかが繋がっていて。
「ねぇ、鏡くん!」
「なんだ?」
いきなり澪が話しかけてきてびっくりした。
澪は声をかけると同時に繋いでいた手を離し。
俺の前に出て上目遣いをする。
な、なんだ?
「今日は、一日中楽しかった!水族館の時も、ご飯の時も、ショッピングモールで回ってた時も、それに今も、ボクと一緒にクリスマスを過ごしてくれてありがとう!」
そう言って満面の笑みを俺に向けてきた、その笑顔は周りのイルミネーションなど、霞んでしまうほど輝いていて、綺麗で、可愛くて、何より......
好きだ......
あぁ、そうか......
俺は澪が好きなのか、澪の笑顔が、イタズラを思いついた時、している時の顔が、料理している時の鼻歌が、話している時が、隣に座っている空気感が、綺麗な顔が、綺麗な髪が、全部全部全部が......
今までザワザワと、モヤモヤと、だけど胸が温かくなるようなこの感情が何かわからなかったし蓋をしていたそれが何か分かった、分かってしまった、だから......
「お、おう」
きっと今俺は顔が真っ赤だろう、耳も首も、全身が沸騰してしまったのではと錯覚するほど熱く、心臓がうるさい。
声が上擦ってしまったような気がしてならない。
「ハハハ、声が上擦ってるよ?どうかしたの?」
「い、いやなんでもない」
「そっか!見て見て!あっちは違う色でライトアップされてるよ!」
そう言って、スルッと俺の手を握って引っ張っていく。
どうしてそんなにサラッと手を繋ぐんだ!?
いや、好きな人と手を繋げるのは嬉しいけど自覚してすぐの俺には辛いんだけど!
手汗出てないかな?力入れすぎてない?歩き方変になってないよな?
色んなことが気になり始めてしまった。
人は恋をすると変わると言うが確かにそうかもしれない。
ちょっとしたことだ、いまさっき気づいたこの恋心は少しのことも気にするようになり澪に好きって思って欲しい、少しでもいいようにと、自分の行動をかえりみるようになった。
今の今でだ。
ただ、ひとつ言えるのは俺は今まで気づいてなかっただけで澪のことが本当に本当に好きで、心底惚れてしまっているということだ......
だからこそ今はこの惚れてしまった、1番好きな人との、このもう残り少ないクリスマス『デート』を楽しもうと気合いを入れ直したのであった。