四十二話 ペンギンのぬいぐるみ
飯を食べ終えた後澪が少しお手洗いに行ってくる、との事で休憩スペース?みたいな所に座って待っている。
今日は澪が素で楽しんでくれているようで嬉しい。
でもなんでいきなり素にし始めたのかねぇ、素のボクを見てほしいって言ってたけど誰に?って感じだし。
周りのためではないって言ってたからさらに意味がわからないんだよなぁ。
ピロン
ん?連絡?
湊と俺と彰久の三人のグループにメッセージが来ていた。
彰久:よう、お二人さん楽しんでますかい?
湊 :もちろん、すごく楽しいぞ
鏡 :俺も楽しんでるよ
彰久:湊の進捗はどうなのよ?
湊 :まぁ、手応えはいい感じかな?イルミネーション見に行った時にいい雰囲気になったら告白しようかな、とは思ってるけど
鏡 :え、本当か?頑張れよ!
湊 :お前もな?鏡
彰久:そうだぞ?
鏡 :なぜ俺?
彰久:お前、まだ気づいてないのか......
鏡 :どういうことだ?
彰久:んーや、なんでもねぇ
何に気づいてないって言われてんだ?
よくわからん。
それにしても湊は告白かぁ、良いねぇ青春してるじゃんか。
俺は彼女いらないからなぁ、いらないん......だよな?
何故か今澪の笑顔が一瞬脳裏にチラついてなんとも言えなくなってしまった。
ハァ、まぁ今気にすることではないか。
もうそろそろ澪も戻って来るだろうと携帯をしまってボーッとしていると
「鏡くんお待たせ!」
「ん、じゃあ行くか」
立ち上がり次のコーナーへと歩いていく。
歩いていくのだが......
澪の右手をチラッと見て俺の手を見つめる。
さっきまで手を繋いでたのになぁ......
いや、ちょっと待て!今俺は何を考えていた!
深呼吸して落ち着く。
俺は何恥ずかしいこと考えてんだ......
付き合ってないのに男の俺から手を繋ぐとか普通じゃないし、というかなんで澪はさっき手を繋いできたんだろう?
恥ずかしいけど嬉しいからって俺もそのまま手を繋いでたけどさ。
「鏡くん、考え事?」
「あぁ、なんでさっきは手を繋いでたんだろうって思ってな」
「えっと......」
......ちょっと待って!?いや、なんで俺それを言った!?
「い、いやその、そうじゃなくてだな?えーと、いやなん、いや」
「......くっ、ハハハッそんなに焦らなくてもいいのに」
「いや、だってさ」
「ハハ、ボクが手を繋ぎたかっただけだよ?」
「そ、そうなのか」
「どうしたの?もしかしてボクと手を繋ぎたいの?」
からかうように手をフリフリとしてきた。
......なんかなぁ、確かに手を繋ぎたいとは思ったよ?思ったけどもなんか喧嘩売られてる感がなぁ。
「そうだな、手を繋ぎたいと思ったさ」
そう言いつつフリフリしていた手を優しく掴んで引っ張る。
「これなら離れることなく一緒に楽しめるだろ?」
「ヒャッ、ひゃいぃ」
そこまで言うと澪は首まで顔を赤くして小さくなってしまった。
ふふふ、からかってきたからね、それっぽいこと言って手を繋いだら絶対照れると思ったんだよね。
「ほら、行こうぜ、次は最後にして一番見たかった大きい水槽のはずだぞ?」
「う、うん」
ちょっと澪がすごくニヤニヤしてるんだけど......
そんなに水槽が楽しみだったのか、もうちょっと早く来てた方が良かったかな?
通路を少し歩いていくと目の前に大きな空間が現れて......
「す、すっげ」
「デカい!凄くでかいよ!鏡くん!」
目の前が青色で、すごく青色になってる(語彙力)
「凄い!あれは魚の群れだ、なんて名前だろう?」
「澪、あっちを見てみろよ、カメが泳いでるぞ」
「ホントだ!可愛い!」
ワチャワチャと喋りながら見ていると澪が静かになった。
「澪、どうした?」
「んー、いやね?なんか、こんなに仲良くて一緒にいて楽しい人とこうやって水族館に来れたのが嬉しくてちょっと現実感が無くなっちゃった」
へへへ、と笑いながら言ってきた。
なら俺が言うことは、手をギュッと繋ぎながら
「夢じゃないぞ?俺が隣にいるのも水族館に来てるのも二人で楽しんでいるのも全て現実だ、それに信じられないなら、また来ればいい二人でさ、現実だって思えるまで何度でもね」
ちょっと自分でもクサイなって思ったけどこういう感じの言い方の方が澪が受け止めてくれるかなって思ってね。
「そうだね、そうだよね!」
「おう、そうだ!」
「つまり、デートの約束かな?また来ようねって」
「なっ......」
ニヒヒと笑いながらこっちを見てくる
「くっ、このぉからかいやがって」
「んー、ごめんごめん、ほらあそこに売店があるから行こ!」
繋いだ手を引っ張りながら向かっていく。
これだから澪は、と思いつつも嫌ではない。
こういう掛け合いが出来るのも良いなぁと思いながらも売店へ。
おー、魚のファイルとか色々置いてあるな
「見て見て!この亀のキーホルダー可愛い!」
「ん?デフォルメされてるんだな」
「結構リアルなやつもあそこにあるよ!」
なるほどなぁ、そこは需要と供給なんだなぁ。
面白いなぁと思いながら見ていると澪がペンギンのぬいぐるみを見ていることに気づいた。
「欲しいのか?」
「んー、欲しいんだけどペアのぬいぐるみたがらちょっと高いんだよね」
そのペンギンのぬいぐるみはペアのぬいぐるみで二匹のペンギンがそれぞれ赤と青の腕輪?のようなものをつけている。
「ふーん、そっか」
「うん、ボクはこのキーホルダー買おうかな」
そう言ってキーホルダーを持ってレジへと向かっていった。
うーん、あと二匹が欲しいんだっけか?
その二匹のペンギンを持って会計へ
済ませて帰ってくると澪が外で待っていた。
「何を買ってきたの?」
「んー?これ」
そう言ってペンギンのぬいぐるみを持ち上げてみせる
「澪にプレゼント」
「え?いやいや、そんな申し訳ないし」
「んー、でも澪にって思って買ってきたしなー、受け取って欲しいなぁ」
でもでも、とずっと言ってるので無理やり押し付けた。
「本当に嫌なら俺が持って帰る、嫌じゃないなら受け取って欲しい、俺の気持ちだ」
澪はうぐっと言って言いよどみ
「確かに欲しいけど高かったし......うーん」
悩んでるなぁ、別にお金は気にしなくていいのに。
「分かった、じゃあこの子を貰う」
そう言ってペアのペンギンの青い方を持ってく。
「なんで片方だけなんだ?」
「だって......ボクが......」
ボクが?
「ううん、お金払ってないしやっぱり気になるよ、だから半分こ」
「別に気にしなくてもいいのに」
「ボクが気にするの!この子鏡くんだと思って大切にするね!だからその子もボクだと思って大切にしてね!」
澪だと思って?
ペンギンのぬいぐるみを見て、澪か、と思ったら自然に大切にしようと思った。
なんでだろうな
「分かった、大切にする」
「うん!」
とりあえず水族館を出たのだが時刻は二時ちょっと過ぎこの後どうしたものかと思っていたら澪がショッピングモールに行きたいと言ってきたのでそちらへと向かう。
イルミネーションは何時くらいに行くべきなんだろうな?
考えながら移動するのであった。




