四十一話 ダダ漏れな心
「んー、いい時間になったねー」
「そうだな」
時間は昼時
お腹も空いてきたなぁ、ってなり始めた頃。
「どうする?」
「んー、少し先にレストランがあるみたいだしそこで食べようか」
周りの熱帯魚を中心に展示されているコーナーを越えると少し休憩スペースみたいになっているところにお手洗いとベンチ、レストランがある。
「いらっしゃいませー、2名様ですか?」
「はい」
「こちらの席へどうぞ、ご用の際はこちらのベルを鳴らしてください」
案内されたのは二人がけの席
対面して座るので手を離さなければならないのだが......
「なぁ澪、手を」
「んー、うん......」
すごく残念そうに手を離していく。
「あっ......」
え?
自分が自分で出した声に驚いた。
何故か俺は澪がゆっくりと手を離していった時に嫌だ、悲しいって思ってしまった。
「どうしたの?鏡くん」
「んーん、なんでもない」
俺から手を離してって言ったのに離されたら悲しくなったとか恥ずかしくて言えなし。
それにしても俺と手を離す時に残念そうに離したのは何でだろう?
「鏡くんは何食べる?」
「んー、ハンバーグでも食べようかなぁ」
「なるほどねー、ボクはオムライスにしようかな」
今は飯だな。
思考することをやめた。
すぐに決まったのでオーダーを頼む。
「水族館楽しいね!」
「あぁ、そうだな」
ただ、澪と一緒にいれるだけでも楽しいけどな
「ただ、澪と一緒にいれるだけでも楽しいけどな」
「え?」
ん?
なんか澪が顔真っ赤にしてるんだけど
「どうした?」
「も、もう一度言って?」
「あぁ、そうだな?」
「違う、その後」
その後?俺は何も言っていないが......
「どういうことだ?」
「えぇと、もしかして無意識?」
「?」
どういうことなのだろうか。
よく分からないが首を傾げてたら澪がさっきよりも顔を赤くして突っ伏してしまった。
大丈夫なのか?
「お待たせ致しました、ハンバーグとオムライスですね、ご注文は以上でしょうか?」
「はい」
飯来たんだけどな......
未だに澪は突っ伏したまんまだし。
よく分からんが恥ずかしかった?のかもしれないな。
何が恥ずかしかったのかは分からないが。
「おーい、澪さんやー、ご飯ですぞー」
「う、うん、もうちょっと待っててね、もうちょっとだけ」
「お、おう」
......本当に大丈夫か?
少しすると澪は顔を上げたのだが少し顔はまだ赤く、ちょっとだけニヤついている。
よく分からんが、オムライスが楽しみなのか?
「あ、ハンバーグ美味いな」
「ほんと?ボクのオムライスも美味しいよ!」
「オムライスか......」
オムライス......
やはり卵なら食べねばならない......
「一口くれないか?」
「相変わらず鶏に関係するものなら好きだよね......」
仕方ないなぁという表情をしてスプーンでオムライスを乗せると
「はい、あーん」
差し出してきた。
パクっ
もぐもぐもぐ
「んー」
「どうしたの?美味しくなかった?」
いや、美味しい美味しいんだが......
「美味しいけど......澪の作ったやつの方が美味しい」
「はぇ?」
「やっぱ、俺の中で1番美味しい料理は澪の手料理だなぁって」
いくらお金をかけた高い料理でも、澪の手料理の方が何百倍も美味しいと思う。
毎日食べれてて幸せだし、これからも食べれればいいなぁって思う。
「そ、それはその......嬉しいんだけど......」
?
なんかまた澪が顔を真っ赤にしてるんだけど。
「ここで言われるのは恥ずかしい......かな......」
え?
そう言われて気づいた。
周りが尋常じゃないほどこちらを見ていることに。
しかも生暖かい目線だし......
「あの子たち高校生よね?」
「夫婦?」
「若いっていいわねぇ」
すげぇ見られてるじゃんか!
やべぇ恥ずかしすぎる......
「そ、その......ごめん」
「いや、そう言って貰えるのは嬉しいんだけどね?」
「お、おう」
気恥ずかしかったのでさっさとご飯を食べきってしまう。
澪も食べ切ったようでそわそわしている。
「た、食べ終わったから早く行こ?」
「あぁ、そうだな」
周りの目線から逃げるように立ち上がる。
サッと支払いをして店を出る。
もちろん俺が全額払ったよ?
やはり男としては女子と出かけたのだから払わないとね。
毎回澪は申し訳なさそうにしてくるけど俺の気持ちの問題だから気にしなくてもいいんだけどな。




