二十九話 いや、良くねーよ
今日は12月25日クリスマスだ。
昨日はカラオケやゲーセンと普段遊ぶような感じの場所に行ったのだが今日は水族館にイルミネーションとカップルのデートコースみたい感じで遊ぶらしい。
昨日の事故の後は普通に家帰っていつも通りご飯を食べたのだが澪は特に気にしてなさそうにいつも通りだった。
なんか昼間あんなことがあったのに気にしてないってなんか男として見られてないのかなって思って悲しかった。
いや、なんでか分からないけど。
とまぁ、そんなこんなで遊ぶ約束をしていた訳だが九時に最寄りの駅で集合と言われたので一応15分前には来た......のだが......
「あの人カッコよくない!?」
「誰か待ってるのかなぁ?」
なんか女の人にめちゃくちゃ見られてるような気がするんだが......
家が隣なのに最寄りの駅集合って言ったのはなんかお洒落してくるからみたいな理由かなって思ったから俺もお洒落してきたんだがめちゃくちゃ見られる。
そんなに変か?(周りの声は聞こえていない)
ブーブー
ん?連絡?
どうやらメールが来たらしく開いてみると
『唯さん』
......嫌な予感しかしねぇんだが。
『年末に澪が帰省するのよ、そこでなんだけど次回の会議は家が会場だから泊まりに来ない?今年は鏡くんも会議に出るって聞いたし夫も会いたがってるし、いいでしょ?』
いや、良くねーよ。
なんか澪との待ち合わせの時意味わからん連絡が多いんだが。
まぁ、俺は年末帰らないし予定も無いんだが家族水入らずの邪魔をする訳にも行かないしな。
何より澪が嫌がると思うし。
ハァっとため息をついていると周りがざわつき始めたことに気づいた。
周りを見ているとこちらに澪が近づいてきていた。
「待ちましたか?」
「んーや、今来たところ」
そんな澪の今日の装いはジーパンに黒のコート、黒のコートの前は開けていて中に白いニットを着ている。
ちょっとカッコイイ感じの、けど女の子っぽい服って感じだ。
「似合ってるな」
「そうですか?ありがとうございます」
ニコリと笑ってくれたので多分良かったのだろう。
「それにしても......少し人が集まりすぎでは無いですか?」
周りを見渡しながらそう言ってきたのだが。
「それは澪が可愛いからじゃないのか?」
「かわ、いえ、私が来る以前から人が居ましたよ、特に女性が」
澪が引き付けてきたのかと思っていたのだがどうやら元より結構な人数がいたらしい。
特に女性がって言いながら結構キツイ目線で見渡してたな、どうしたんだ?
「まぁ、よく分からんが行こうぜ」
「よく分からんって、鈍いですね」
「?」
何を言ってるんだ?
「もういいです、先が思いやられますね......」
なんなんだろうな、まぁ気にしても分からんのだろう。
「ほら、行きますよ?鏡くん」
そう言いながら澪は俺の手を握ってきた。
柔らかくて暖かい......じゃなくてなにゆえ手を握られた!?
驚いて澪を見ると周りを見渡していた。
俺も見渡してみると男達からの怨嗟の目が。
いや、なんで?結構理不尽だと思うんだが
とりあえず睨まれるの嫌だし......
「よし、澪行くぞ!戦線離脱だ!」
「はい」
反応薄っ、やっぱ素じゃない方は穏やかな感じなんだな。
普段の澪の方が俺はいいなぁ。
「なぁ澪、駅に来たのはいいんだがどこの水族館に行くんだ?」
今回はルートも行くところも全部澪が任して欲しいと言ってきていたので俺は全く知らないのだ。
「東京の方にある水族館です、凄く大きな水槽があるらしいですよ」
「へー、でも東京かぁ、行くのに2時間位かかるか?」
「そうですね、そのくらいです」
2時間電車に揺られるのかぁ。
澪には座ってもらわないと、長時間立ちっぱなしは辛いだろうし。
「そっか、お?電車来たな」
電車に乗ってすぐ隣のところの席が一つだけ空いていた。
「ほら、澪そこ空いてる、座りな」
「え?いいですよ、鏡くんが座ってください」
「いやいや」
「いやいやいや」
ずっと譲り合っていたのだが対面にいるおばあちゃんに「若いっていいわねぇ」と微笑ましそうに見られてしまい恥ずかしかったのでさっさと座って欲しいんだが。
「ほら、女の子をずっと立ちっぱなしにさせるのは男が廃るというか、プライド?みたいなものがあるんだよ、だから俺の為にと思って座ってくれよ」
「......仕方ないですね」
やれやれみたいな顔をされながら澪が席に座ったのだが少しするとニヤニヤし始めた。
え、何?どうしたんだ?
よく分からないがしばらくの間澪はニヤニヤしていたのだった。