三十七話 UFOキャッチャー
UFOキャッチャーをやりに移動した訳だがやはり種類が多い。
お菓子だったりぬいぐるみだったり、ストラップなどもあるし。
特に色んな人が金を溶かしているであろうフィギュアなどもある。
「どれやるー?」
「んー、俺は欲しいも......いや、なんでもねぇ」
UFOキャッチャーやりに来るのは大体目的なくてだなと思ったので欲しいものがないと言う必要が無いと考えた。
「あ、ウサギ」
澪が声を出した方を見てみるとモフモフとした手触りをしていそうな白いウサギのぬいぐるみがあった。
「どうした?あれが欲しいのか?」
「うん、やってみるね!絶対に横から口を出さないでね!頑張ってやるから!」
早速と100円を入れて慎重に場所を合わせて掴みにかかる。
胴体の部分をしっかりと捉えてはいたが少し持ち上げるとぬいぐるみの前の方から落ちてしまった。
「ムー、難しいな」
こういうぬいぐるみ関係をUFOキャッチャーでとる場合は重心の位置を考えないと取れないので普通に難しい。
今回の場合は中心より前めで掴まないと重い方へと落ちる。
まぁ、口を出すなと言われているのでお口チャックしているのだが。
その後澪は500円分使ったのだが成果は芳しくなく大体初期位置から動いていない。
「んー、全く取れない、次のやつ行く?」
欲しいって言ってたもんな。
しょうがない
「澪、どいてみ」
「へ?うん」
一言ことわってから100円を入れる。
んー、今回はタグのやつでいいか。
俺はウサギのぬいぐるみについているタグを見る。
今回やろうとしているのはUFOキャッチャーのアームをタグに引っ掛けて取る技なのだが、そもそもタグがぬいぐるみの下に入っていると使えないのでそれの確認をしたわけだ。
よし、外にあるな。
さっきの澪のやつを見ていてアームの開き具合は見てたから距離は分かる。
しっかり横移動を合わせた後UFOキャッチャーの台の横に移動して横から見ながら合わせる。
ここだ!っと思ったところでボタンをはなすとアームが開き下に落ちていく。
そのアームは寸分たがわずにぬいぐるみのタグを捉えて、持ち上げる時にしっかり引っかかる。
そのままぶら下がっているウサギのぬいぐるみは穴の中へと落ちていき下の受け取り口みたいなところから取る。
ちょっとした達成感を覚え微笑みながら澪に渡す。
「はい、取れたよ」
「へ?うん、見てたけど凄いというかなんというか」
「ははは、褒めんなって」
「でもこれは鏡くんがとったんだから鏡くんのだよ?」
「いや、澪が欲しがってたから取ったんだぞ?これはプレゼントだ」
そもそも澪が欲しいって言わなかったら取ってないし。
まぁ、いつもお世話になってるしお礼みたいなものだしな。
「プレゼント......そっか、ありがとう!」
ニコーっとした眩しい笑みを浮かべてウサギのぬいぐるみをギューッとしている。
そんな眩しい笑みを見ているのは照れくさく、それだけではなく胸の奥が熱くなるような前にも感じた分からない感情を感じたので逃げるように袋を取りに行く。
「ほら、この袋に入れな」
「うん!ありがとう!」
またニコーと笑っている澪を見ていたら無性に頭を撫でたくなり......
「ふぁっ......」
......気づいたら撫でていた。
やっぱり髪がサラサラだよなぁ。
澪は最初驚いていたが少しすると、ふにゃっとした表情になって俺の手に頭をすりすりとしてきた。
なんか、ウサギを撫でているみたいでさっき取ったウサギのぬいぐるみが憑依したみたいだな。
「えへへ」
可愛いかよ、というか本当に綺麗だよな。
澪の頭を撫でつつ顔にかかっている前髪を耳にかけようとした時だった。
「お母さんお母さん、あのお兄ちゃんたちイチャイチャしてるー」
「こら!邪魔しちゃダメでしょ!」
通りすがりの親子に見られていることに気づいた俺はピタッと固まってしまう。
澪は頭を撫でる手が止まったことに疑問に思ったのか
『もう撫でないの?』
みたいな悲しそうな顔をしてきたのだが周りの目線に気づいたようでぴたっと同じく固まると耳が真っ赤に染まった。
慌てて頭に乗せていた手を引っ込める
「ご、ごめん」
「ううん、大丈夫だよ、ただ恥ずかしかっただけだから......それに、嬉しかったし」
嬉しい?何がだ?
「んー、あ!あれやりに行こ!」
話を聞く前に話がそれでしまったので聞けずじまいになってしまった。
というかあれは......
「プリクラ?」
「うん!高校生ってあれ撮るんでしょ?憧れだったんだ!」
え、恥ずかしいんだが。
しかもそれJK同士かカップルがやるやつなのでは......
いや、最近では男子同士でも撮るって聞いたな。
まぁ、澪がやりたいなら行くしかねーか。
エスコートするって言ったしな。
「はいよ、ほんじゃ行こうかお嬢様」
「おじょっ......」
何か後ろから聞いたことない声が聞こえたがスルーすることにしよう。




