三話 卵焼き
「では、私はこれで」
保存容器を受け取った後これといった交流もなければ干渉し合わない二人は話すことなくすぐに帰った。
帰った鏡は洗濯物を取り込んだり宿題をやったりなどで時間を潰し夕飯を食べ始めた。
(パックのご飯も準備が出来たし食べてみるとするか)
パックのご飯をレンチンして島風が作った惣菜を見てみる。
(おー、美味そうな感じだな)
中にはだし巻き玉子や野菜炒めなどが入っており見た感じご飯を抜いた弁当箱のような感じになっていた。
(このだし巻き玉子すごい美味いな、ちょうどいい塩味と厚さによってバランスがベストになっている、これは飯が進むな)
余程鏡の好みの味だったのか他のおかずがも直ぐに無くなり、かなり早い速度で夕飯を食べ終えた。
(すごく美味かったな、やっぱ一人暮らしするなら自炊は必要か?だけど料理ができる訳では無いんだよなぁ)
いつも一人暮らしするなら自炊は必要か?と考えてはいるが最終的には諦めるが今回はかなり揺れたようだ、そのくらい島風の料理が美味しかったのだろう。
次の日
土曜日であったため学校は休み。
そのため正午ちょうどくらいに起きた鏡は朝食兼昼食を食べて家事をやったりなどをして過ごしていた。
(やっていることは完全に規則正しい生活とは言えないことだよな)
だが休みの日とはこんなものだろう、と考え家事をやり終える。
昼食を食べるのや家事をゆっくりやっていたため、気づけば十五時
(もうそろそろ保存容器返しに行くか)
そう思いたった鏡は昨日の夜洗った保存容器を持って玄関を出た。
島風の家は隣なので出てすぐチャイムを鳴らす。
すると中からパタパタと歩く音が聞こえてきた
「はーい、どちら様ですか?」
「橘だ、昨日の保存容器を返しに来た」
「あなたでしたか、ちょっと待っていてください」
1度離れていく音が聞こえ、すぐに近づいてくる音がする。
「お待たせしました」
「いや、ちょっと待てその手に持っている保存容器はなんなんだ」
「お裾分けですが?」
「その保存容器を返しに来たんだが」
そう言って鏡は保存容器を渡す。
「きちんと洗えたのですね」
「皿洗いくらいなら出来る、料理は全然出来ないがな」
「橘さんはそもそも台所関係は何も出来ないのかと」
「すごい言われようだな、まぁ否定はしないが」
何が反論しようかと考えたが実際全く台所に立たない鏡は何も言うことが出来なかった。
「昨日の惣菜すごく美味かった、特にだし巻き玉子がちょうどいい塩味と厚さですごい食べやすかった」
「そ、そうですか、ありがとうございます」
島風は少し頬を赤くしつつ下を向いた
「で、ではこれは今日の分です」
「お礼は昨日の分だろ?何で今日もなんだ?」
「先程も言いましたがただのお裾分けです、私が多く作りすぎてしまったのを渡しているだけですよ?頻繁に多く作りすぎてしまってお裾分けをして、誰かの健康状態が良くなるのは私の知る範囲外です」
(それ、ほぼ毎日渡すって言ってるようなもんだろ)
「人と余り関わらないんじゃないのか?」
「関わりませんよ?ただ多く作りすぎて廃棄に困るから渡しているだけですから」
(この感じ、何かあって人を避けるようになったが根本的にお人好しってところか)
「俺が受け取らないって選択肢は?」
「受け取られないとこの中に入っている食べ物は廃棄になりますが、出来れば食べ物は粗末にしたくないですよね」
「ないってことか、分かったありがたく貰う、島風の作ったのは美味かったから楽しみにしとく」
そこまで言い切ると島風は目を見開きすぐに微笑む。
「ええ、ぜひそうしてください」
「・・・・・・・・・」
「どうかしましたか?」
「い、いやなんでもない」
(島風がみせた笑顔がいつも見かける仮面めいたものじゃなく綺麗で見惚れてたなんて言えない)
「じゃあ、俺帰る
明日また洗って返すわ」
「分かりました、ではまた明日」
そう言って島風は家に入っていく。
それを見送って顔を赤らめつつも鏡は家に入った。
(お、今日も卵焼きが入ってる)
入ってすぐに中を見てみると昨日入っていた卵焼きが入っていた。
(少しくらい食べてもいいよな?)
手を洗った後に少しつまみ食いしようと卵焼きを食べる、すると
(今日のは甘い卵焼きだと......)
まるで鏡の今の心を表すかのように昨日とは違う甘い卵焼きなのであった。
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