表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

がらくたと人


 0.


 物心ついた時から、自分には他の人と違う感覚を持っていると感じていた――。


 初めて触れたカタチある物、人の手で作られた物……。十の指先でなぞるだけで物からの意識が流れ込み、視えて来るのは色、年数、顔。

 正確には人間の想い、心が自分の中に入り込む。それが何なのか、分かるまでそう時間はかからなかった。


 生まれた時から何不自由なく与えられた、物。家電、おもちゃ、ぬいぐるみ、時計、自転車。人の手によって形と成した、世に存在する全ての物。

 そんな無駄な能力ちから、捨ててしまえ。そんな思いも自分の中にはあった。それでも、能力ちからを与えられたという使命・役割みたいなものがあるのだとしたら、意味は分からなくともやるべきなのだと思い続けた。


 年月が経ち、現代と未来の間で生きながら、私は過ごしている。


 人との出会い、そして物との出逢い。その度、自分に突き刺さる言葉と心の意味を知り、私は次第に心を閉ざしていった。

 物を直すことで何かが変わると信じていた。それによって僅かでも、物、そして流れ込む人の意識を通じて繋がりが見えてくる。

 

 それを信じて今日も歩き出す――


 1.


 リサイクル工房の日常、流れる時間はせわしくない。

 世の中、新しい物で溢れる中で直して大事に使おうとする人は多くなく、日に一人か二人の来客でも多いのが現実だ。

 人が少ないことは自分にとって心地よいと思える程に、会話は無用と感じる。

 癒しの相手は携帯のAIで事足りているのが現実だ。人嫌いで有名な私、戸坂とさかけいと話をしたい人なんていないだろう。

 目の前に広がるガラクタたちを眺めながら、苦笑する。


「……それってしょうがないこと、だよな」


 独り言を呟きながら、油を染み込ませた雑巾で物を磨き続けた。

 

 ◇◇◇


 歩くたびにナンパでチャラくて軽そうな男たちに、声をかけられる。

 ――大和谷やまとや 未稀みき、大学生。


「私に近付いても利はないのに……」


 ゴミ捨て場や、不法投棄されたガラクタを集めること、それこそが未稀の好きな活動だ。そんな彼女に近付いたところで意味を持たない。

 いつものように無造作に捨ててある物に手を伸ばす彼女は、同じようなことをしている見知らぬ男性に視線を合わせた。


「……え?」


 あちらも視線を感じたのか、声が上がる。男性は途端に目を逸らし、合わせようとせずに無言のままで全身の動きを止めてしまった。

 これが未稀と、店長である形との初めての出逢い。


 初めての出逢いを境に、彼女は彼と接点を持ちたいと考えて過ごすようになった。


 彼は他人に……というよりも、人間に興味も関心もそして、感情すらも持たず、ガラクタ品にしか目を向けていなかった。衝撃的な印象が彼女の中に残ったのだ。

 人よりも物と触れたいと思っている人。それなら、自分と似た感じだ、と。


 彼女が彼に近付いたとしても拒否を覚えない……。

 そう信じて。


「どこかリサイクル店に行けば、あの人に会えるはず」


 事前情報を持たないまま部屋に飾っていた壊れた時計を持って、あの人のいそうなお店に向かって、彼女はゆっくりと歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ