がらくたと人
0.
物心ついた時から、自分には他の人と違う感覚を持っていると感じていた――。
初めて触れたカタチある物、人の手で作られた物……。十の指先でなぞるだけで物からの意識が流れ込み、視えて来るのは色、年数、顔。
正確には人間の想い、心が自分の中に入り込む。それが何なのか、分かるまでそう時間はかからなかった。
生まれた時から何不自由なく与えられた、物。家電、おもちゃ、ぬいぐるみ、時計、自転車。人の手によって形と成した、世に存在する全ての物。
そんな無駄な能力、捨ててしまえ。そんな思いも自分の中にはあった。それでも、能力を与えられたという使命・役割みたいなものがあるのだとしたら、意味は分からなくともやるべきなのだと思い続けた。
年月が経ち、現代と未来の間で生きながら、私は過ごしている。
人との出会い、そして物との出逢い。その度、自分に突き刺さる言葉と心の意味を知り、私は次第に心を閉ざしていった。
物を直すことで何かが変わると信じていた。それによって僅かでも、物、そして流れ込む人の意識を通じて繋がりが見えてくる。
それを信じて今日も歩き出す――
1.
リサイクル工房の日常、流れる時間は忙しくない。
世の中、新しい物で溢れる中で直して大事に使おうとする人は多くなく、日に一人か二人の来客でも多いのが現実だ。
人が少ないことは自分にとって心地よいと思える程に、会話は無用と感じる。
癒しの相手は携帯のAIで事足りているのが現実だ。人嫌いで有名な私、戸坂形と話をしたい人なんていないだろう。
目の前に広がるガラクタたちを眺めながら、苦笑する。
「……それってしょうがないこと、だよな」
独り言を呟きながら、油を染み込ませた雑巾で物を磨き続けた。
◇◇◇
歩くたびにナンパでチャラくて軽そうな男たちに、声をかけられる。
――大和谷 未稀、大学生。
「私に近付いても利はないのに……」
ゴミ捨て場や、不法投棄されたガラクタを集めること、それこそが未稀の好きな活動だ。そんな彼女に近付いたところで意味を持たない。
いつものように無造作に捨ててある物に手を伸ばす彼女は、同じようなことをしている見知らぬ男性に視線を合わせた。
「……え?」
あちらも視線を感じたのか、声が上がる。男性は途端に目を逸らし、合わせようとせずに無言のままで全身の動きを止めてしまった。
これが未稀と、店長である形との初めての出逢い。
初めての出逢いを境に、彼女は彼と接点を持ちたいと考えて過ごすようになった。
彼は他人に……というよりも、人間に興味も関心もそして、感情すらも持たず、ガラクタ品にしか目を向けていなかった。衝撃的な印象が彼女の中に残ったのだ。
人よりも物と触れたいと思っている人。それなら、自分と似た感じだ、と。
彼女が彼に近付いたとしても拒否を覚えない……。
そう信じて。
「どこかリサイクル店に行けば、あの人に会えるはず」
事前情報を持たないまま部屋に飾っていた壊れた時計を持って、あの人のいそうなお店に向かって、彼女はゆっくりと歩き出した。




