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森のパスタ屋さん  作者: おあしす
10/10

9話

ピコン、とハンターオフィス側のPCからメール受信音が響き渡る。

「はいはい、っと・・・。ん?こりゃあ・・・ちょっと長丁場になるな・・」

煙草を吸いながら届いた内容に目を通しながらゲンは印刷を開始する。

「ざっと2週間くらいか…。そういや学校も休みだし、ちょうどいいか。」

印刷が完了し、パスタ屋に電話をかける。

「もしもし?パスタ屋さんだにゃ。」

電話番のルリの声が電話から聞こえてくる。

「あーもしもし?俺だ、ゲンだ。小次郎いるか?」

「いるにゃよ。ちょっと待つにゃ。」

少し間が開いて、小次郎が電話口に来る。

「もしもし?仕事?」

「おう、ちょっと長期間になるから2週間くらいになるぞ」

「な、なげぇ・・・けど、いいよ。行く」

「分かった、じゃ今から行くわ。」

「へいへい。」

電話を切り、頭を掻きながらリビングに降りていくひとりと1匹。

「また仕事かにゃ?」

「あぁ、2週間くらいの出張になりそうだ。」

「珍しく長いにゃ。」

「涼介に相談しなきゃいけないな。」

リビングには涼介が楽譜を整理しながらコーヒーを飲んでいた。

「おーい涼介、ちょっと相談があってな…」

「ん?どうした?・・・ん、これはもういらないな・・」

向かいに座り、仕事の依頼の話を伝えていく。

「だいたい2週間くらいかかるらしい。」

「結構長いな。・・・なら、店も休みにするか。」

ピンポーン、と呼び鈴が鳴る。

「おーい小次郎!」

「あ、ゲンじぃが来た。はいはい・・・」

玄関まで迎えに行き、話の続きを始める。



「ってことで、いってくるわ。」

クルマに荷物を詰め込み、出発を準備する小次郎とはるか。

「あぁ、はるかは任せるぜ。」

見送りに出てきた涼介も声をかける。

「いいなぁ、さくら、兄さんと二人なんでしょ?」

はるかもカバンをクルマに積み込んでいく。その隣で荷物を渡していくさくら。

「うん。でも、はるかちゃんのほうが心配だよ・・・気を付けてよね?」

「だいじょーぶだよ、ちょっと遠いだけだから!」

「よし、だいたい積み込み終わったかな・・・じゃ、ちょっと行ってくるわ」

運転席に乗り込んだ小次郎が車を発進させ、商店街を横切って高速道路に向かっていく。

手を振りながら涼介とさくらが見守る。

「さて、しばらく店も休みだし、さくらもゆっくりやりたいことやっていいぞ。」

「う~~ん・・・特にこれといってやってみたいこととかは無いんだけど・・・」

店に戻り、休業案内の看板を用意しながら急にできた休みに何をするか考える二人。

そこでふと目にしたカレンダーに、さくらの誕生日が週末だったことに気づく。

「そういやさくら、日曜日誕生日じゃないか」

「うん、そうだけど、特に何もすることなくて・・・」

看板を出し終えたさくらが手を洗いながら苦笑いを浮かべる。

「よし、それなら出かけるか?」

「えっ?お兄ちゃんと?」

「あぁ、イヤか?」

「イヤじゃないよ!むしろお出かけしたいよ。」

「なら、日曜日は一日俺を好きにしていいぜ?どこへでも連れて行ってやる。」

ふふん、を胸を張ってさくらに伝える。

「やった!じゃあ、どこに行くか考えておくね」

「あぁ、ランチはどこか店を予約しようか。」

「うん。・・・どこにいこうかなぁ~~」

ニコニコしながら雑誌を広げ、パラパラとめくりながらデートスポット紹介の

記事を探しては付箋を貼り付けていく。

「あっ、ここいいなぁ・・・ここも・・・」

そんな妹の姿を見て、柔らかい笑みを浮かべた涼介は、地下にある防音室に向かい

ハモンドオルガンの電源を入れる。ドローバーの位置を変え、セッティングを行い

音の確認をした後、ライブの練習を始める。

柔らかくピアノを弾くように、あるいは打楽器のように指を伸ばして叩きつけるように弾き

グリッサンドとパラディドルノイズの練習も行う。

「次のライブはいつだったっけ・・・そろそろ新曲を作るかなぁ・・・」

考え事をしながらも、オルガンの音はあたりが暗くなる夕方まで鳴り響いていた。



週末の日曜日。日差しもまぶしく、青空が一面に広がっている。

「う~~ん、晴れてよかった!」

白いポロシャツと黒いジーンズ姿で出てきた涼介が顔にかかる日差しを手で遮りながら出てくる。

「そうだね!暑くなりそうだねぇ。」

その後ろから、白いウエストリボントップスにスキニージーンズ、コルクサンダルに同じ茶色のショルダーバッグを

持ったさくらがパタパタと出てくる。そのまま駐車場まで並んで歩き

普段買い出しに出かけるミニクーパーに乗り込んだ。

「どこに行きたいんだ?」

シートベルトを締めながら助手席に乗り込んでくるさくらに尋ねる。

「隣町のモールに行きたいな、って。」

オーケーと二つ返事で車を発進させ、リクエスト通りに複合商業施設<ミークモール>に向かう。

「どこから行くんだ?やっぱりバリーから?」

バリーは英国ファッションブランドで、さくらが好きなブランドだ。

「うん、そろそろ秋物とか並んでるだろうし、それから見て見たいんだ。」

「よし、行ってみるか。」

到着後に早速店に向かうと、そこには予想通りに秋物アイテムの展開が開始され

ティーンエイジャーを中心にたくさんの人で溢れかえっていた。

その中に二人も混ざっていき、物色を始める。

アクセサリ、スカート、ワンピース・・・ブラウンの者が多く、どうやら今年の流行カラーのようである。

ギンガムチェックのスカート、ブラウスやリボンシャツが人気で、瞬く間に商品が減っていく。

さくらは、手に取って自分の体に合わせて鏡を見たり、アクセサリを実際に髪に付けてみたり、と

目を輝かせながら試着してみたり、と楽しそうに店を見て回る。

一方の涼介は、自分の妹なら何が似合うのか・・・とひとつひとつをまるで標的のように

じっくりをチェックしながら頭の中で想像しながら吟味をしていた。

たくさん見て回ったが、結局決め手になるようなものはなかったらしく、特に何も買うことなく

退店する。

「いいのか?別に遠慮しなくてもいいんだぞ?」

近場のコーヒーショップでアイスコーヒーを買い、飲みながらさくらに尋ねるが

今持ってる服とあまり変わらないデザインだったから特にいいものはなかったかなぁ、と

いちごクレープを食べながら返答した。

その後も他の店を二人で回っては試着したり、あれやこれやと探してみたり、と

ウインドウショッピングを楽しんだ後で、昼食に新しくできたモール内のレストランに向かった。

「新しいイタ飯屋となると、ライバルになるかもしれないからな・・・一応味も見ておこう。」

「お兄ちゃんのごはんのほうがおいしいから大丈夫だよ。きっと。」

半分は仕事、半分は好奇心で店に入っていった。その直後、従業員が悲鳴を上げていた。

後に、「あの店に超イケメンと美少女が食べに来た」という噂が流れていたそうな。

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