ルール・オブ・ロウ
クザッツ・ファイヴスター・パレス、特別室。
豪奢な内装と調度品は、他の部屋と変わらない。
ただ、ベッドの数が普通のスイートルームよりも多かった。
「イエー!」
「イエー!」
皆がいぶかる中、二人の王子だけは陽気だった。
「「再会の喜びを!
もっと大きくするとしよう!」」
フローショトク&ジャブジャーブは、手慣れた様子で戸棚を空ける。
取り出した小瓶には、色鮮やかないくつもの錠剤。
そして粉末、注射器、ボングなど。
「さあ、どれでも好きなのをキメるといい! ハッピーになれるからね!」
「え、いや、私たちそういうのは、――ねえ?」
差し出された錠剤を前に、ダナは思わず振り返る。
無意識に誰かの助けを求めて。
まず目が合ったのは、ジミーだった。
ジミーは一瞬硬直する。
「――いいじゃないか、ダナ」
そして、ジミーは王子の手から錠剤を取った。
「旅行先でははしゃぐものだろ?
よりを戻して、ドラッグファックしよ――」
「ジミー・ジミングス。『お前を薬物乱用の現行犯で逮捕する』!」
ダナがジミーに何かを言う前に、フレイヤの鋭い言葉が場を裂いた。
「……と、言いたいところだが、
クザッツにおいてその錠剤の単純所持は違法ではない。
だがそれまでだ。殿下にそれを返上いたせ」
「おいおいフレイヤ!
堅いこと言うなよ! お前は俺の警護役だろう?
仕事の疲れを癒そうぜ! さあ!」
腰掛けたジャブジャーブは、両手でベッドを叩いて言う。
「それは一分前までのことです、殿下。
私はクザッツ警察の出向、――内務省の管轄下に戻ります。
引継ぎは三分後、遅くとも今夜までには完了します」
フレイヤは油断なくスマホを操作。
緊急転属に向けて以前から用意していたファイル群を、
関係各所に送信する。
「おい! 俺は王子だぞ!
出向だろうがなんだろうが、どうとでもなるぞ!」
「殿下が斯くあそばされるのであれば、
私は薬物乱用容疑での捜索令状を請求します。
錠剤はともあれ、
そちらの粉末の適法性は検査せねばわからぬでしょうから。
当然、その過程であなた方の父たる国王陛下にも、
ご報告をせねばなりません。
――それでも、私めごときの人事へご介入なさいますか?」
「ちっ――Aga-Pua!」
「Yai! Aga-Pua!」
王子たちはクザッツ語で悪態をつき、
追い払うように手を動かす。
「それでは失礼いたします、両殿下。
――行くぞ、みんな」
一礼すると、フレイヤはダナとブリジットの手を握る。
同時に、ダナはすずりの手を取った。
四人は歩き出す。
手を繋いで高級ホテルの廊下を進む美女たちに、ジミーが続いた。
「あんたはゲイファックしてなさい! ヤク中クソ野郎!」
「ギャーッ!?」
唐突に、ブリジットが殴りかかる。
不意を撃たれ、ジミーは暴力をまともに喰らう。
「万機公論!」
「Das Deutsche Volk!」
続くすずり! そしてフレイヤ!
チェインヒット! ポイントボーナス!
ジミーは倒れ、動かなくなる。
「大丈夫かな……」
「心配しないで、ダナ。私、全力で殴っただけだから♡」
「私も一撃だけだし、刀なら峰内程度だよ」
「法的には正当とは言い難い。
しかし、ここは王族の定宿で、彼は骨折もしていない。
クザッツの司法には、
多少荒っぽいコミュニケーションとしか認められまいよ」
四人はエレベーターに乗りこむ。
カーゴは速やかに、そして滑らかに降りてゆく。
「それで、これからどうしよう?
私としては、せっかく四人そろったんだし、
ご飯とか行きたいんだけど……
どう?」
「さんせ~い♡」
ダナの提案に、ブリジットがかわいらしく言って賛意を表す。
「私もそう言おうと思ってた!
……あ、でも大丈夫?」
すずりは喜びの声を上げ、
ふと、フレイヤの方をうかがう。
「フレイヤ、ダイナミック転属の直後だし、
お仕事関係のなんかが……」
「問題ない、すずりちゃん。
ゆっくり会食する時間くらいはあるし、有休も多めに残っている。
文句は言わせないとも」
「めでたい! 万歳」
†
一階に着いたエレベーターは、エレガントな効果音を鳴らして開く。
「な!? 貴様ら!」
イワン!
そして! 手下のアロハグラサン団!
「あッ!
そういやこのホテルってあんたが言ってた……!?」
ダナは、ビーチでのイワンの言葉を思い出していた。
「――ちょうどいい。おい! 野郎ども!」
「「「「Geh-yai-geh!」」」」
イワン号令!
アロハグラサン一斉返答!
拳銃の形に盛り上がったバミューダショーツのポケットに!
一斉に手を突っこんだ!
薬物乱用、ダメ絶対。
『デカパイギャル軍団~』は違法薬物の危険性を訴えています。




