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カパパイ・カラアイナア



「……おはよう、ございます……」


 ベンチの上から身を起こし、ルナアイナニはあいさつをする。

 幼き王に応える者はない。


 先日、殉死した近臣たちの不在は当然として。

 リウメロエ、そして同行することになった異国の女たちもいなかった。


 博物館の休憩コーナーには、ルナアイナニが一人きりだ。


「どうしたのかな……」


 考えてもわからない。

 ルナアイナニはトイレの手洗い場で顔を洗い、

 スナックとジュースで一人朝食を取った。


 そのうちに彼女たちは戻ってくると思ったのだ。


 しかし、相変わらず人の気配はない。


「ほんとうにどうしたのかな……」


 二本もジュースを飲んだので、ルナアイナニは姉に叱られるかもしれないとわずかばかり心配した。だが今は別の心配が大きくなりつつある。

 リウメロエたちの不在だ。


 博物館の中を探してみる。やはり、誰もいなかった。


「かのうせいはひとつですね」


 リウメロエたちは迷子になったのだ。ルナアイナニは確信する。

 ならば、助けてやらねば。


 ルナアイナニを王と頼んだ者たちを、ここで救わなくて何が王だろう?


「いいこにしているのですよ、リウメロエ、フレイヤ、みんな」


 ルナアイナニは荷物をまとめ、博物館を出る。

 若き王の冒険が始まった。


     †


「「「!? すずりちゃん!」」」


 三人は声をそろえて叫ぶ。

 だが、驚愕に隙を作るようなことはない。


「Schlieffen Zurück!」

「死ね! ファック野郎!」


 フレイヤはリウメロエを抱えながら跳躍後退!


 ブリジットは扉の向こうへフルオート射撃! 攻撃的に撤退援護!


 BAAAAAAAAAAAAAANG! 銃弾はすべて弾かれる!

 紫がかった緑の鱗への銃撃は無意味か!? そして弾切れだ!


「ファッキンシット!」


 ブリジットはアサルトライフルを捨て、自身も後退開始!


「イヒィー! ついに見つけたぜ! ブリジット・ブロンドビッチ!」


 コブラの怪物は瞳を金色に輝かせてのたまう!


「ファッキンアスホール! やっぱ生きてやがったのね!」


 邪蛇神は扉を破砕!

 大広間とブロックパズル部屋を統合!


「Shhhh!」


 邪蛇神ジミーは巨大な舌をほとばしらせる!


 ブリジット回避! 不敵な笑みを浮かべる!


「はずれ♡

 ファック野郎はバケモノになっても無能ね!」


「バカめ!

 その油断がペニスをプッシーに納めどきよォッ!」


 左右よりコブラの舌がほとばしる!


 NO! 舌に非ず!

 それは邪蛇神ジミーの腕!


 金の眼と一対の毒牙! 紫がかった緑の鱗に覆われし胴!


 両手に悪趣味なパペットをつけたかの如く、邪蛇神の腕は巨大な生きたコブラそのものだ!


「調子に乗って!」


 ブリジットは瞳を金色に輝かせ!

 人の反射神経を越えた動きで跳躍! 連続! 毒牙を回避!


「「Shhhh!」」


「ファッキンしつこい!」


 襲い来る巨大コブラ腕!

 ブリジットはかいくぐり! 飛び越え!

 祭壇のある大広間の床に、一人降り立った!


「ブリッジ!」


「ダナ! 会えるって信じてたわ!」


 二人は再会に驚くことなく、ただ歓喜をもって互いの名を呼び合った!


「今、助けてあげるからね、ダナ!」


 ブリジットは祭壇に向かって言い、石造りの大広間を走り出す!


「「Shhhh!」」


「ファック!」


 コブラ腕猛攻!

 ブリジット連続回避!


 着実に祭壇へ接近!

 金色の瞳は! 最適解を見据え続ける!


「クソッ……!

 ビッチらしく、世界の王に前後の穴を献上していれば良いものを……!」


 ブリジットをとらえきれず! 邪蛇神ジミーは焦りを見せる!


「……ブリッジとやらも、何らかの戦闘術の達人だったのですか、警視?」


「いえ、何をするかわからない奴ではありましたが、そういったことは……」


 様子を見るリウメロエとフレイヤは、アサルトライフルを構えて、いつでも発砲できる姿勢で言葉をかわす。


 ブリジットの超人的な回避と進攻は!

 身に宿したベワマゲカパパイの霊の中核に由来する!


 今日はカパパイ・カラアイナアの当日であり、ここは地下遺跡の最奥部だ!


 霊の力は神話時代にも等しい!

 そしてベワマゲカパパイの霊を帯びているのは邪蛇神ジミーも同じ!


 ゆえにブリジットは、邪蛇神の動きをはっきりと感じ取れる!

 自身の手足の動きのように!


「ブリッジ! 気を付けて」


「ええ、ダナ!」


 祭壇はもう目の前だ!

 ビキニ姿でコブラたちに拘束されたダナがすぐそばに!


「「「「「Shhhh!」」」」」


 ブリジットが手を伸ばしたそのとき!


 ダナの身を拘束するコブラたちが、一斉に身を動かす!

 群れ全体が全身のばねを使って動き! ダナを放り投げた!


「うわーっ!?」


「!? ダナ!」


 ブリジットは急速反転!

 ダナの落下予測地点へ走る!


 あの高さから石の床に叩きつけられれば! 助かる見込みはないに等しい!


「イヒィー! ファックするぜ!」


 そこにコブラ腕急襲!


 ダナを受け止めにかかるブリジットは回避不可能!


 GULP! 丸呑み!


「うわーっ! ブリッ――」

「俺が 受け止めてやるぜ、 ダナ!」


 宙を舞うダナに! コブラ腕が迫る!

 GULP! ダナもまた丸呑み!


「GEAPH……。

 KUKUKU…… KU-HAHAHAHA!

 ファッキン手に入れたぞ! ベワマゲカパパイの霊! そのすべてを!

 俺は無敵で最強だ! KU-HAHAHAHA!」


 邪蛇神ジミーの哄笑が、大広間に、地下遺跡全体に響く。


「撤退を進言いたします、姫殿下。

 我々の装備ではアレを打倒し得ませんから」


「致し方ありませんね。

 肩を並べし戦士とは、諸共に討ち死にするのが高貴の道。

 とはいえ、敗走を経て再起し勝利することのほうが、良き弔花であることでしょう」


「KU-HAHAHA……!

 逃げられるとでも思っているのか? 語彙のわりに頭悪いな!」


 二人の後方より、濃密なる生き物の気配が漂ってくる。

 おびただしい数のコブラの群れだ!


 コブラたちはすさまじい密度でひしめきあっている。

 コブラを草木とした濃密な茂みが、遺跡を満たしながら迫ってくる勢いだ!


 コブラたちは前方にも。

 ダナ拘束の任を解かれたコブラたちは、リウメロエとフレイヤを狙って這い進む。


 そして、コブラたちの王たる邪蛇神、ジミー・イビル=デスコブラ!


 最も恐るべき存在は、何一つ傷を受けていない。

 それどころかベワマゲカパパイの霊を完全掌握したことで、先ほどとは比べ物にならないほど力を増している!


「KU-HAHAHA……

 さて、先に犯されたいのは誰だ?

 北方美女と南方美女、そこは違えど、二人ともアスホールが滅茶苦茶弱そうな顔つきのデカケツ&デカパイ……! たまらねえ! Shhhh!」



本日もありがとうございます。


うつくしい世界で愛に満たされて僕は幸せです。


皆さまと僕とに良きことのありますように。

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