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また、闇の中へ



 カパパイ・ネテソ

 古廟、内部。


 石造りの重苦しい回廊。


 レリーフに描かれた

 古代の王侯や神々が、

 進攻する

 デカパイギャルたちを

 無言で見下ろす。


 進む先には、

 無数の罠が

 待ち構える。


 無数の尖った杭が

 立てられた落とし穴。


 落下者を

 陰険に付け狙う杭は、

 時を経て

 なお

 鋭さを

 失っていない。


 しかし、

 建設現場よろしく

 上方に

 足場が組まれている。


 足場には

 LED灯が

 等間隔に設えられ、


 針仕事が

 できそうなほど

 まばゆい。


 誰が

 足を踏み外しうる

 だろう?


 よほど大暴れを

 しなければ、

 転落できそうもない。


「他人が攻略中の

 ダンジョンって、

 進みやすいね」


 速やかに

 足場を進みながら、

 先頭のすずりが

 つぶやいた。


「油断はいけませんよ、

 すずりちゃん。

 いつ

 敵襲があるか

 わかりません」


 すぐ後ろに続く

 リウメロエが、


 すずりの

 軽率な言葉を

 たしなめる。


「「「Shhhh!」」」


 コブラ数尾落下!


 定かならぬ上方より!


「――天地公道!」


 帝国剣法!


 古刀最強いやつよ一閃!


 コブラたちを一刀斬首!


 足場の外側に、

 胴と尾ばかりとなって

 落下する!


 杭に突き刺さる!


 コブラ串一丁!


 二丁! 三丁!


 出来上がり!


 大蛇切最強は、

 蛇を捌いて

 喜んだ。


 少なくとも、

 柄を握るすずりには

 そう思われた。


「……ほんとでした。

 姫殿下の仰せのとおり、

 油断はやめときます」


「天晴れな腕前のあなたが

 そう心がけてくれるなら、

 きっと大丈夫でしょう」


 四人は

 足場を渡り終える。


 進行方向は

 急な

 下り階段に

 なっていて、

 何があるかは

 見通せない。


「足場に

 お気をつけなさい、

 すずりちゃん」


「はい、

 今度こそ油断はしません、

 姫殿下」


「あなた方も

 気を付けるように。


 あれだけの戦を

 くぐりぬけておいて、


 足を滑らせて

 落ちてきた

 あなたたちに

 巻き込まれ、


 階段から落ちて

 死ぬ、

 などといった珍事は

 御免ですから」


「もし

 そのようなことが

 あるとすれば、

 それは

 我らとても

 対応しきれぬ

 何かがあった

 場合のみでしょう」


「ええ、

 心配しないで

 リウメロエ。

 私も

 フレイヤも

 大丈夫よ」


     †


 階段を降りた先は、

 結構な大部屋だ。


 無数の

 杭が突き出た

 穴の上を、


 一本橋が

 通っている。


 橋の上では

 天井から

 鎖で吊られた

 複数の刃が

 振り子運動。


 刃の

 一つ一つが

 自動車の扉

 ほどもある。


 凶悪なる刃は、

 人にあたれば

 致命傷を

 負わせるか、


 突き落として

 串刺しにするかだ。


 一気呵成の侵入は

 不可能。


 そして

 一本橋の上で

 速さを

 制限されれば、

 とても

 良い的となる。


 しかし、

 それはベワマゲイと

 親衛隊員らが

 侵入したときのこと。


 ここでも

 仕掛けはすでに

 除去されている。


 振り子刃は

 鎖ごとはずされ、


 橋の向こう側に

 まとめて

 置いてある。


「トラップが

 無力化されていることは

 ともかく、

 敵の数が

 少ないのが

 気になるな……」


「きっと

 ファッキン

 アスホールに

 殺られて

 しまったのね……」


「ブリッジ、

 まだあの人が

 いると思っ――!?」


 飽きれた口調で

 ブリッジの言葉に

 反応していた

 すずりが、

 ふいに

 目の色を変える!


 帝国剣法の達人は、

 大蛇切最強が

 吠え猛るのを

 知覚した。


 近くに蛇、

 あるいは

 類縁の何者かが、

 敵意を持って

 存在する!


「「「万歳!

   イビル=デスコブラ!

   万歳!」」」


「みんな伏せて!」


 突如出現! 


 橋の向こうに!

 コブラ怪人数名!


 英語で

 まがまがしき名を

 唱えると、


 まとめ置かれた

 振り子刃を

 一斉に手に取り、

 散会!


 そして多方より

 一斉投擲!


 凶悪なる刃が!


 多方より

 デカパイギャルに迫る!


「ファック!」


「Scheiße!」


 ブリジット

 伏せて回避!


 フレイヤも同様!


「!?」


 だが

 リウメロエは

 間に合わぬ!


 直撃コースの

 刃は複数!


 すずりが

 いずれかを

 防いだとしても、


 他の刃が

 リウメロエを

 殺害する!

 

 ああ、

 いかんすべき!?


「広興会議!

 天地公道!」


 すずりは

 答えを見出せり!


 帝国憲法の

 移動法により!


 リウメロエへ

 急速接近!


 片腕に抱く!


 その後

 対空奥義をもって

 上昇! 回避!


 伏せる、

 つまり下方への回避が

 間に合わず

 横移動が

 不可能なとき!


 大上昇こそが

 最適解!


 すずりは

 そう判断した!


「「Shhhh!」」


 それを

 コブラ怪人たちも

 読んでいた!


 なればこその

 天井の伏兵!


 紫がかった緑の

 化け物が、

 足場なき空中で

 二人に迫る!


「万機公論!」


 だが、

 何の問題もない。


 刀を装備した

 すずりの戦闘力は

 素手の三倍だ。


 ただ

 不意をうって

 迫るだけでは、

 たやすく

 首を刈り取られる。


 さながら

 双葉を摘むごとく。


 鮮血を噴きながら

 落下する

 コブラ怪人の死体が、

 穴の底で

 串刺しになるころ。


 すずりは

 斬撃の勢いを

 利用して、


 空中を

 大きく進んでいた。


 着地地点は

 橋の果て。


 コブラ怪人たちの

 傍らだ。


「「「Shhh――!?」」」


「派手に動きましたが、

 平気ですか、

 姫殿下?」


「……はい。

 まこと大儀です、

 すずりちゃん」


 二人が着地して

 言葉をかわしたとき。


 コブラ怪人たちの

 首は斬り飛ばされ!


 胴は

 血を噴出させながら、

 がっくりと

 くずおれた。


「すずりちゃん最高!

 私のこと好きにして♡

 おっぱい揉んで♡」


「ほんと、

 めちゃくちゃ強いな

 ……援護射撃も

 無用とは」


 橋を渡って

 やってきた

 ブリジットと

 フレイヤが、

 口々に言う。


「……そういえば。

 ブリッジとやら、

 そなたの

 憎むこと限りなき

 ジミーとやらは、

 ステイツの者ですか?」


「そうよ、

 リウメロエ。

 それが

 どうかした?」


「姫殿下は

 あの化け物どもが、

 英語を話したことを

 気になさっているのでは

 ないかな」


「ええ。

 ……ことここに至って、

 自然科学的常識から

 うんぬんするのは、

 かえって非常識です。


 あのような魔獣の

 あることも認めねば。


 彼らの身体の端に、

 クザッツ王

 親衛隊員の制服と

 おぼしき布が

 残っていたことから、


 何者の

 成れの果てで

 あるのかも

 察しがつきます」


「しかし、

 だとすれば

 クザッツ語で

 話すはず、

 ということですか、

 姫殿下?」


「ええ。

 しかし、この遺跡の

 最奥にある者が

 ジミーとやらで

 あるとすれば、

 その疑問は

 解けるのです」


「性欲に

 忠実過ぎることが

 特徴なばかりの

 あの凡俗が何故、

 という

 別の疑問が

 生まれますがね」


「とにかく

 ジミーがいるのよ。


 そして

 ダナを

 捕まえているの。

 間違いないわ」


「異様に

 説得力はあるんだよなあ

 ……えらく突飛だけど」


     †


 その次の間には、

 壁に

 色付きのレリーフが

 飾られていた。


 グリッド線の

 引かれた床は

 レリーフと

 同系色に塗り分けられ、


 いくつかの彫像が

 何らかの

 秩序に従って

 配置されている。


 床に

 擦った跡が

 あるところからすると、

 彫像を動かす

 仕組みらしい。


「うぇー、

 ブロックパズルかぁ

 ……苦手なんだよな……」


「すずりちゃん、

 ゲームか何かだと

 勘違い

 していないか?」


「それに、

 今までと同じなら

 ここの仕掛けも

 解除されている

 はずです」


「リウメロエの

 言うとおりね。

 あっちの扉の奥に、

 灯りが見えるわ」


 無人の

 ブロックパズル部屋を、

 四人は素通り。


 わずかに

 閉まり切らずにいる

 扉を開き、

 入室。


「!?」


 GULP!


 すずり消失!


 扉の前で

 大口を開けていた

 巨大な

 コブラの化け物が、


 先頭のすずりを

 丸呑みにしたのだ!




きょうもありがとうございます。

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