表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/34

ファイア・スターター



 鬱蒼たる密林。


 湿った

 夜の大気によって、


 おぼろな星の光は、

 さらにかすんで

 定かでない。


 数知れぬ虫たちが

 飽きもせずに

 鳴き続け、


 カエルの声と

 重なり合う。


 闇に包まれて

 なお

 活力を失わぬ森は、

 何を隠すものやら、

 人知の

 及ぶところでない。


「……Huah……」


 カパパイ・ネテソ古廟、

 入り口。


 見張りに立たされた

 親衛隊員の一人が

 あくびをする。


 時刻は

 既に夜半を

 越えている。


 夜番を行う者が

 退屈さから

 眠気に襲われ、


 朝までの

 刻限を抱えた者が

 時間的余裕のなさを

 空威張りで

 しのぐ時間だ。


 何とはなしに、

 彼は

 同輩を振り返る。


 見当たらない。


 否。

 

 同輩の身体は

 予想される

 位置にあった。


 しかし

 頭部が

 見当たらない。


 肩の高さで

 斬り飛ばされ!


 鮮血を

 噴出させている!


「!?」


 彼は驚愕!


 敵襲報告と

 応援要請を叫び、

 アサルトライフルを

 構えて敵を

 撃たんとする!


 しかし声帯は

 音を発する前に、

 首もろとも切断!


 噴出する鮮血が、

 あたりを濡らす。


「――帝国剣法、

 法律以定」


 すずりは残心し、

 古刀最強いやつよ

 振って血を払う。


 ぬぐってから

 納刀すると、


 最強の

 不満げな言葉が

 聞こえるようだった。


「これでは足らぬ」と。


「みんな、

 とりあえず

 地上はクリアしましたよ」


 すずりが

 呼びかけると、


 フレイヤに

 ブリジット、

 そしてリウメロエが

 慎重に

 木々の狭間から

 姿を見せる。


「……暴君の手足となって

 働く者たちとはいえ、

 我が人民が

 死ぬのは

 堪えるものですね……」


「説得の通じる

 相手であれば、


 そもそも、

 御身が

 ここまで

 追い詰められることは

 なかったのでは

 ありませんか?

 姫殿下」


「そうですね、警視……」


「それで、

 どこに行って

 ブッ放せば

 いいのかしら?」


「者ども、こちらへ」


 ブリジットの問いに、

 リウメロエが

 先導して答える。


「これより

 遺跡に潜ります。


 平時ならば

 観光地として

 開放している

 区画です。


 罠の類は

 ないことでしょう。

 普通に

 動けるものかと。


 しかし、

 それは敵方も同じです。


 人数で劣る

 我らとしては、

 包囲殲滅をこそ

 警戒せねば。


 ――何か

 言うことは

 ありますか、

 警視?」


「いえ、

 姫殿下のお言葉は

 十全です」


     †


 ROLLING!


 燃える球体が、

 遺跡の入り口階段を

 転がり進む!


「な、何だ!?」


 火の玉は

 多脂性樹木の

 枯枝葉をまとめて

 球状に整形し、

 火をつけたものだ!


「――Aga-Pua!」

「危ないぞ!」


 親衛隊員らは

 とっさに跳躍!

 回避!


「広興会議!

 ――八紘一宇!」


 火の玉に続いて

 すずり侵入!


 帝国剣法!

 奥義発動!


「「「「「ギャーッ!?」」」」」


 親衛隊員絶叫!


 いくつもの腕や首が!


 瞬く間に切断!


 血風と共に宙を舞う!


「Blitzkrieg!

 ――Das Deutsche Volk!」


 すずりに続いて

 フレイヤ侵入!


 プロイセン拳法!

 奥義発動!


「「「「「ギャーッ!?」」」」」


 親衛隊員絶叫!


 掌打を受けて吹き飛び!


 仲間を巻き込み!

 横転する!


「これが自由よ!

 くらいやがれ!」


 BAAAAANG!


 続いてブリジット!


 発砲しながら侵入!


 合衆国憲法!

 修正第二条項!


「「「「「ギャーッ!?」」」」」


 親衛隊員ら射殺!


 あるいは銃創! 重篤!


 死傷者多数!


「投降なさい!

 我が名は

 リウメロエ・

 キラナニカパパイ!


 まことの王、

 ルナアイナニ陛下に

 仕えるものです!


 投降なさい!

 あなたがたが

 クザッツ王の親衛隊員で

 あるならば、


 僭主ではなく、

 神々の選ばれし聖王

 ルナアイナニ陛下に

 額づくべきです!


 投降なさい!」


 リウメロエが

 銃を構えて

 半身だけ出し、

 声高にのたまう。


「……!」


 生き残りの

 親衛隊員らは、

 目だけを動かして

 辺りをうかがう。


 奇襲により、

 この区画の

 親衛隊員らは

 全滅した。


 もはや

 有意義な抵抗は

 行えない。


 投降勧告に従うのが、

 作戦行動上、

 また生存のためにも

 最適解だ。


「!」


 親衛隊員らが

 そう思ったとき!


 全身に

 戦慄が走る!


 これは

 いかなる

 ことであろう!?


 瞳が金色に輝くと、

 動かぬはずの

 身体が動き!


 我知らぬ言葉を

 口がのたまう!


「「「「精強なり

    ベワマゲカパパイ!

    キラナニカパパイ

    負けて死ね!

    Shhhhhhhhhhhhhhh!」」」」


 親衛隊員ら再起!


 関節を、

 ひび割れた骨を

 自ら

 壊しながら!


 蛇の尾のごとく

 四肢を

 のたうたせ!


 てんでバラバラに

 襲い来る!


「万機公論!」


「Das Deutsche Volk!」


「奪った銃!」


「!?

 え、ええと、

 手向かうなら

 容赦は

 ありません……!」


 帝国剣法!


 プロイセン拳法!


 銃撃! もろもろ炸裂す!


     †


 ……しばらくして。


 親衛隊員らを殲滅した

 デカパイギャル軍団は、


 石造りの回廊を進み、


 深く、奥へと、


 遺跡の中を

 潜ってゆく。


「またもや

 無為に

 血が流れてしまった

 ことですね……」


「姫殿下が

 悪い訳じゃ

 ありませんよ。

 なんか、

 途中から

 明らかに

 おかしかったですもん」


「ああ、

 すずりちゃんの

 言うとおりだ。


 ……僭王は

 呪術的な儀式によって、

 親衛隊員らを

 何か

 超科学的な存在に

 変えてしまったのか……?」


「ファック野郎のせいよ!

 ジミー・

 ファッキンアスホール!

 許せないわ!」


「?

 それは何者ですか、

 ブリッジとやら」


「ダナの元彼よ!


 かわいそうなダナが

 風邪ひいて

 寝込んでるときに、


 氷枕とかなんかを

 買いに

 出かけたんだけど、


 二人きりになるなり、

 あのファック野郎

 私のことが

 ほんとは好きだとか

 なんとか言って

 ファック勧誘

 してきたのよ!


 運河に

 蹴り込んで

 やったけど、

 射殺してからに

 すべきだったわ!

 今思うと!」


「……話を聞く限り、

 悪漢のように

 思われますね」


「リウメロエが

 そう言ってくれて

 うれしいわ♡ 


 あとで

 ダナのことも

 紹介してあげる。


 とっても

 かわいくて

 いい子なのよ。


 おっぱい

 おおきいし」


「ちょ、

 ちょっと待て

 ブリッジ!


 何であいつのことが

 話題に上がるんだ!?」


「勘!」


「えぇ……

 てかあの人

 生きてんのかな?


 ホテルで

 私たちが

 逮捕されたときに、

 物のついでに

 殺されたりとか――」


「ファック野郎は生きてるわ!

 遺憾ながら!」


 超自然的根拠に基づき、

 ブリジットは

 力強く断言する。


 その瞳は、

 怪しい金色の光を

 帯びていた。



本日もご高覧くださりありがとうございます。


なろう運営、エンジニアの皆さまもありがとうございます。お世話になっております。


今回は毎日更新の試みの中で、もっともギリギリでした。

なんとかなってよかったです。このままやり続けたく思いますが、さてどうなるものでしょうか。


皆さまと僕とに、良いことのありますように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ