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ワイルド・パーティー



「おかしが

 たくさんありますね」


「本当は

 こんな食事を

 ルナアイナニに

 取らせたくは

 ないのですけれど。


 非常時

 ですものね。


 今日

 だけですからね、

 ルナアイナニ」


 五人は

 暴君放伐に向けて、

 奇妙な壮行会を

 開いていた。


 自販機から

 強奪した、

 大量の

 缶ドリンクと

 スナック。


 甘味と塩分、

 高脂質・

 高炭水化物食品ばかりの、

 偏った食事だ。


 しかし、

 罪なくして連行され、

 密林を

 飲まず

 食わずで歩いた

 五人には、

 なかなかの

 ご馳走だった。


「私、

 コーラには

 こだわりのある方

 だったんだけど。

 今は、

 この謎メーカーの

 コーラもおいしいわ♡」


「ね。

 なんか沁みるよ。

 疲れたときには

 極端な

 味付けのものが一番……」


「ジャングルで

 かいた汗のために、

 我々の身体は

 塩分を

 必要としている

 だろうからな……」


 胃が

 満たされれば、

 眠気が

 やってくるものだ。


 それが

 なかったとしても、

 緊張と

 疲労に

 満たされた身体は、

 休息を求めている。


 ベンチや

 いすをかき集めて

 ベッドを作り、

 身を横たえる。


「リウメロエ、

 ぼく、

 まだ

 ねむくありません」


「では、

 ルナアイナニ陛下。


 リウメロエや

 下々の者を、

 寝かしつけて

 くださいますか。


 いっしょに

 横になって。ね?

 お願いします、陛下」


「……わかりました。

 ぼくが、

 ねかしてあげます」


 一人、

 椅子の前で立っていた

 ルナアイナニだが、

 リウメロエの

 要請を受けて、

 姉と同じベンチに

 横になった。


(……すや……)


 そうして、

 ルナアイナニは

 誰よりも早く

 寝息を立てる。


「王子さま、

 めちゃくちゃ

 かわいい♡」


「寝とけ、

 ブリッジ。

 この休息は

 恩恵ではなく、

 作戦遂行上不可欠の

 準備の一つだ」


「フレイヤの

 言うとおり。

 ……けど、

 なんか

 感動的な

 光景だよ……」


「御即位

 あらせられた後、

 ルナアイナニ陛下の寝顔を、

 平和の象徴として

 図像化し、

 国内各所に

 掲示するのも

 いいかもしれませんね。

 騒乱の起った後ですし」


「!?

 あ、

 そうですね……」


「もちろん冗談ですよ、

 すずりちゃん」


「姉バカの

 リウメロエが言うと、

 そこそこ

 本気に

 聞こえるんじゃ

 ないかしら……」


 四人の

 デカパイギャルたちも、

 すぐに

 眠りに落ちていく。


 夜は深まっていき、

 真夜中。


 さらに

 一時間ほど

 たったところで、


 すずりと

 フレイヤが

 示し合わせたかのように

 目を覚ます。


 達人の体内時計は、

 クロノメーター級に

 精確なのだ。


「ブリッジ、

 起きて」


「ご覚醒めされよ、

 姫殿下」


 二人は、

 ブリジットと

 リウメロエに

 呼びかける。


 幼児の眠りを

 妨げぬよう、

 最小の声音で。


「ん♡

 すずりちゃ~ん」


「……ご苦労です、

 警視」


 四人は

 装備を最終確認。


 作戦をおさらいし、

 ケアレスミスによる

 問題の発生可能性を

 しらみつぶしに

 消していく。


「問題は

 ないようだな」


「あとは

 武運長久を祈って

 戦うのみだね」


「ええ。

 ――ばいばい、

 王子さま」


「では、

 ルナアイナニ」


 健やかに眠る

 幼き王子に、


 ブリジットは

 手を振り、


 リウメロエは

 万感をこめて

 袖にキスをする。


 内心では、

 リウメロエは

 弟を抱きしめたく

 思っている。


 しかし、

 万一にも

 起こす訳には

 いかないのだ。


 彼女らが

 向かうのは

 死地なのだから。


「ルナアイナニ陛下のため、

 リウメロエは

 行ってまいります。

 どうかご壮健に、

 ルナアイナニ……!」


 四人は

 博物館を出る。


 ドリンクや

 スナックは、

 それなりの量が

 残っている。


 トイレなどに

 水道も届いている。


 一人残されても、

 ルナアイナニは

 大丈夫だ。


 勝利してのちに

 迎えに行けばいい。


 もし

 敗死して

 再会が叶わずとも

 〝カパパイ・

  カラアイナア〟が

 終われば、

 博物館の職員たちが

 やってくる。


 とりあえずは

 彼らが

 保護してくれる

 だろう。


 その後の展望は、

 あまり

 明るいものでは

 ないにせよ。


「ルナアイナニ……」


 密林を

 進みながら、


 リウメロエが

 不安げに

 つぶやいた。


「今は大丈夫よ、

 リウメロエ。

 寝てれば

 さみしくなんて

 ないもの」


「ブリッジの

 言うとおりです、

 姫殿下。


 博物館を

 出てしまった以上、

 もう

 できることは

 何もありませんから。


 できないことを

 思い悩むのは

 精神衛生上、

 有害です」


「何より、

 疾く勝利して

 疾く凱旋帰還すれば

 済むことです、

 姫殿下。


 古刀を授かりし

 すずりの戦働きを

 ご高覧ください。


 最強いやつよ

 飲みつくせぬほどの

 血を

 吸わせてやりますから!」


     †


「Shhhh……

 さあ!

 今度こそ

 ファックするぞ、

 ダナ!


 Tシャツと

 ジーンズを脱げ!


 再会した日の

 まばゆいビキニ姿!


 ジューシー&

 ホットな

 おっぱいとケツ!


 はち切れんばかりの

 肉体を

 俺に見せろ! ダナ!」


 巨大な

 コブラの怪物は、

 金の瞳を光らせて

 おそろしげに

 のたまった。


「……!」


 へたり込んだダナは、

 非現実的な光景に

 圧倒されて

 動けない。


 だが

 それは一瞬のこと。


 凡庸で

 俗悪なコブラの要求に、

 かえって

 怒りと気力が

 わいてきた。


 ひっぱたいて

 言い諭すのが

 正当であると

 思われた。


「うっる、せえ!

 調子に乗るなジミー!

 そういう感じの

 雰囲気じゃ

 ないだろうが!」


「Shhh……!

 まだ無為なることを――!?」


 邪蛇神は

 狂的に舌をほとばしらせ、


 ふいに

 動きを止める。


 遠くの音に

 耳をすますような、


 地平線の彼方を見据えて

 様子を探るような。


 そんな動きだ。


「KU-HAHAHAHA!

 おもしろい!


 ビフテキと

 オニオンソテーの

 珍道中だ!

 KUHAHAHA!」


 邪蛇神哄笑!


「――おい」

「「「「「Shhhh!」」」」」


「ひっ!?」


 コブラの群れが!

 ダナに迫る!


 逃走も抵抗も間に合わぬ!


「「「「「Shhhh!」」」」」

「何す、ああッ!」


 BITE!


 コブラたちは

 ダナの服の

 あちこちを噛み!


 力を込めて

 首を動かし!


 Tシャツと

 ジーンズを引き裂いた!


「「「「「Shhhh!」」」」」

「うわぁ!」


 その後

 巻きついて

 ダナを拘束!


 空になった

 祭壇の上へ!


 引きずり上げる!


「そこで見ていろ、

 ダナ。


 俺が

 ブリジット・

 ブロンドビッチを

 ファック殺する

 ところをな!」


 服を剥がれ

 ビキニ姿となった

 ダナに、

 邪蛇神は

 のたまった。


「え!?

 ブリッジ

 来てるの!?」


 心持ち声を

 弾ませて、

 ダナは問い返す。


「KU-HAHAHA、

 そうさ。

 実に好都合だ!


 キラナニカパパイの

 残党と

 我が霊の中核とが

 同時に

 やってくるとはな!


 Shhhh……

 いい匂いの、

 いい女たちだ……

 興奮する……

 Shhhh!


 よく見ていろ、

 ダナ。

 俺が

 全員とファックし、

 よがり死にに

 させるのをな!


 お前は

 『先にくわえこんで

  おけば良かった~』

 と泣き叫んで

 後悔し、


 股を開いて

 俺のコブラペニスを

 懇願する!


 KU-HAHAHAHAHA!」




本日もありがとうございます。


『ビフテキとオニオンソテーの珍道中』は、

『鴨がネギしょってやってきた』

ぐらいの意味だろうと思います。


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