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決戦への備え



 デカパイギャル軍団は、

 王子を連れて

 ジャングルを進んだ。


 カパパイ・ネテソ古廟、

 王立博物館の

 職員玄関に

 一行はたどり着いた。


「さて。

 中に入らねばなりませんが、

 ご覧の通り閉まっています。


 蹴破りなさい。

 護送車両のフロントガラスのように」


「姫殿下、

 よろしいのですか?」


「非常時ゆえ、

 キラナニカパパイの一族たる

 このリウメロエが許しましょう」


 フレイヤの問いに、

 リウメロエが答える。


「わかりました。

 ――Über Alles!」


 プロイセン拳法!

 奥義炸裂!


 CRAASH!


 鉄製のドアはひしゃげ!

 内側へと吹き飛ぶ!


 BEEEEEP!


 直後、

 けたたましく警報が鳴り出す!


「え」


「うろたえる必要はありません、

 すずりちゃん。


 さ、行きますよ、

 ルナアイナニ」


 リウメロエは

 ルナアイナニの手を引いて、

 毅然として歩いていく。


「入場料が浮いたわね♡」


 ブリジットは

 かわいらしく笑って言い、

 姉弟の後を追う。


 フレイヤとすずりも、

 続いて館内に侵入する。


「……以前、

 ちょっとした催しに招かれて、

 ここに来たことが

 ありましてね。


 ……確か、

 ここが警備室なはずです。

 すずりちゃん、ドアを」


「承知いたしました。

 ――神聖不可侵!」


 帝国拳法!

 奥義炸裂!


 警備室のドアはひしゃげ!

 内側へと吹き飛ぶ!


「さあ、

 警報のスイッチを

 見つけてお切りなさい」


「「わかりました、姫殿下」」


 王女の命に、

 すずりと

 フレイヤが

 声を合わせて答える。


「それにしても、

 リウメロエはずいぶん

 不法侵入に手慣れているのね。


 私、

 ちょっと親近感を

 覚えちゃうかも♡」


「無駄口を

 叩く間があるなら

 手を動かしなさい」


 ブリジットに

 言葉を返すと、


 リウメロエ自身も

 スイッチを

 探しにかかる。


 その服のすそを、

 ルナアイナニが

 軽くひっぱる。


「リウメロエ、

 なんだか ぼくたちは

 わるいことを

 しているように

 おもえます。


 いいのですか?」


「ええ、

 ルナアイナニ。


 無作法であるのは

 承知しています。


 けれど、

 今日は仕方ないの。


 我らが近臣を殺した

 賊徒どもに報いを

 受けさせるため、


 我らも

 荒々しく振る舞わねば

 ならないのです。


 さあ、

 クザッツの王たる

 ルナアイナニ陛下。


 ルナアイナニ陛下も

 警報のスイッチを

 お探しあそばせ」


「?


 ぼくは

 おうさまに

 なったのですか?」


「正確にはまだですね。


 けれど、

 ベワマゲイ伯父は

 罪を捏造して

 私たちを陥れた悪人です。


 であれば放伐し、

 ルナアイナニが

 新しき王となって


 クザッツを

 治めるほかは

 ありません」


「……わかりました、

 リウメロエ。


 ぼく、

 がんばります」


 しばらくして。


「あれ?

 警報止まった?」


「ルナアイナニ陛下が、

 机の下のスイッチを

 見つけてくださいました♡」


 リウメロエは弟を抱き上げ、

 ほほにキスをする。


「リウメロエ!

 ひとまえでは

 はずかしいからやめてって

 いったでしょう!」


「申し訳ありません、

 陛下♡」


 ルナアイナニは、

 姉の腕のなかで

 手足をばたつかせて

 暴れる。


「あ、

 なんか会話の内容が

 わかる気がする」


「クザッツ語力が

 上がったのね」


「ともあれ、これで


 『通報を受けた

  警備会社社員に

  遭って一悶着』


 ということは

 なくなった。


 地理情報については、

 遺跡の構造を書いた資料を

 探すとして、


 武器は

 どこにあるものだろう。


 姫殿下のお考えを

 うかがっても

 よろしいか?」


「この警備室か、

 あるいは外の用務員室に

 猟銃があるでしょう。


 密林の中の施設ですから、

 ときたま侵入する

 虎などへの対策に、

 弾といっしょに

 備えられているはずです。


 ブリジットとやらと

 いっしょに、

 見つけておいでなさい、

 警視」


「承知いたしました、

 姫殿下」


「リウメロエは、

 私の名前を呼んでくれるのね、

 リウメロエ♡」


「疾く。

 不敬の徒を罰するには、

 今は忙しすぎますから」


「ほら、

 行くぞブリッジ」

「はぁい♡」


「姫殿下、

 私はどうしたら良いでしょう?


 資料を探すにしても、

 私のクザッツ語力ですと

 役立たずですし、


 脚立運びくらいしか……」


「そなたは展示室へ」


 リウメロエは、

 すずりに鍵を手渡しながら言った。


「展示品の刀剣類には、

 今なお

 実用に耐えるものも

 あるでしょう。


 文化財が傷つくのは

 心苦しいですが、

 正義のためです。


 好きなものを

 見繕って参りなさい、

 すずりちゃん」


     †


「うおおおおお!?」


 展示室で、

 すずりは

 我を忘れて叫ぶ。


 飾られたその刀が、

 尋常ならざる

 業物だと

 わかったからだ。


 能書きを

 読むまでもなく、

 一目見ただけで。


 管理者用のカギを使って

 ガラスケースを開き、

 震える手で刀を握る。


「うおおおおお!?


 ……これはヤバい……

 重要文化財じゃん……!」


 剣道三倍段!


 すずりの戦闘力が

 著しく上昇!


 すずりは

 よく錬られた所作で

 空を斬る。


 刃の鋭さは、

 少しも

 損なわれてはいない。


「けど、

 なんでこんなのが

 クザッツの

 遺跡近くの博物館に……?」


 すずりは

 展示品の

 説明書きを見る。


 刀の銘は〝最強いやつよ


 17世紀末に

 クザッツへ漂着した、

 身分の高い

 武士の遺品であるという。


「げぇっ、

 最強……!?」


 すずりの知識によれば、

 鋼鍛はがねかじの最強いやつよ

 古伯耆派の刀工だ。


 平安中期の刀工ゆえ、

 現存作は多くない。


 江戸時代まで残った

 在銘の作は数本。


 そして、

 所有者が海難に遭って

 日本刀剣史より

 失逸せるものは

 ただ一つ。


 大蛇切最強。


 作刀中、

 鍛冶場に大蛇が来襲。


 最強は

 熱く焼けた刀で、


 大蛇が

 顎を開いた瞬間に

 刺突。


 喉を貫き

 胴を刺し貫き、

 火傷を

 負わせつつ刺殺。


 同時に

 大蛇の血肉によって

 焼き入れを行った

 という、


 蛇殺しの

 伝説を持つ名刀だ。


「ぎゃああああ!?」


 重要文化財級の古刀。


 贋作であろうはずもない霊威!


 それらにあてられて、


 すずりは

 狂喜とも恐怖とも

 つかぬ激情に叫んだ。





 もし、重要文化財の刀しか身を守るすべがなかったとしたら、それを使って生き延びることができるでしょうか?


自分は入手困難な超強力回復アイテムを抱え落ちしやすいタイプなので、

「これを売ったら売却益がじゃぶじゃぶ……」とか考えてしまって死にそうな気がします。

技量の問題は棚に上げたうえでも。


本日もご愛読くださりありがとうございます。

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