ゴールデン・アイズ
「え、ちょっと待ってフレイヤ!
冤罪を実罪にする必要なくない!?
普通に、
クザッツの外まで
逃がしてもらう助けとかで……」
「私も、そなた――」
リウメロエがすずりを、
同意するように振り返る。
「申し遅れましてすみません、
姫殿下。
白谷すずりと申します……」
空気を読んだすずりは自己紹介。
よく錬られた美しき所作で礼をする。
「すずりちゃん♡
って呼んであげて、
リウメロエ」
「……私も、
すずりちゃんと
同じことを聞きたく思います。
何故、警視は
私に大逆を為せと申すのですか?」
「不名誉だからです、姫殿下。
〝出向先で
クーデター容疑をかけられたあげく逃亡〟
それでは、
命が助かっても、
組織人として終わりです。
それは
避けねばならない。
ゆえに王権をもって
灰色の容疑を真白く晴らし、
堂々と
凱旋帰国させて
いただきたい。
クザッツ新王の
危機を救った英雄として」
「ねえフレイヤ、
もうキャリアを気にする状況じゃ
ないんじゃないかしら?
私やダナといっしょに、
のんびり
ルームシェアしましょうよ」
「その提案は楽しそうだが、
私は生き方を変えられないんだよ、
ブリッジ。
――それに、
無礼だが必要なので
申させていただくが、
クーデター容疑で
連行されていた姫殿下に、
私たちを
国外逃亡させる力があるかは
少々疑わしい。
そのあたり、
正確なところを
仰せ願いたく思います」
「ええ、
警視の言うとおりです。
私とルナアイナニ殿下は、
近臣を殺されて後に連行されました」
リウメロエは
弟に手で合図して近寄らせ、
抱き上げる。
「国内に頼れる者が
いないではありませんが、
ここからは距離があります。
この森の中まで助けに来た者は
異国人のそなたらのみ、
という事実が
私たちの実情を象徴しています」
「それじゃあ決まりね。
銃で暴君の圧政を打破しましょう……♡」
「ブリッジは楽しそうだね……
私には、
徒歩での山越えが嫌だから
トンネルを掘ろう
って話に聞こえるけれど……」
「そう悲観したものでもないさ、
すずりちゃん。
現王ベワマゲイは
十分な権力を持っている。
にもかかわらず、
自らの息子二人を殺して
上からのクーデターを行う
暴挙に出た。
そんな荒療治をせねば
ならないほど、
権力基盤に
問題があるわけだ。
そこを突けばいい」
「警視の申す通りですね。
今年は
540年に一度の
『カパパイ・カラアイナア』
が催されます。
その儀式のために、
王――僭王は側近と
『カパパイ・ネテソ古廟』
に入るはず。
状況から推定するに、
私たちをこの森に連行したのは、
儀式の生贄とするためでしょう。
逆に僭王を殺して生贄とすれば、
権威は地に落ち、
新王ルナアイナニ陛下の
聖なる威光は
ゆるぎないものとなる。
やりましょう!
まことの王を戴くために!」
「姫殿下、
急にテンション上がり過ぎで
あらせられませんか……?」
「失礼、
すずりちゃん。
……警視の当初の提案には
驚きましたが、
よく考えてみれば、
私の夢を叶える
千載一遇の機会であると
気づいたのです」
「リウメロエは
そんなに王位が欲しいの?
やはり王族は潜在的に暴君ね。
クザッツ人民は
革命を起こして、
民主主義的な共和国を
作るべきだわ」
「まさか。
私はルナアイナニが
君臨するのを見たい。
ルナアイナニの統治に
浴したい。
うるわしき
ルナアイナニの治める
うるわしき
クザッツで
ルナアイナニと
暮らしていくのが
私の夢なのですから」
「リウメロエは姉バカなのね♡
暴君であるよりも」
「ロイヤルブラコン……?」
「まあ
名誉回復を
行ってくださる方なら、
どなたが即位されようと
外人の私が
容喙すべきではないが……
ともあれ動き出そう。
目的が決まった以上、
ひっくり返った車の横で
政治的談義を続けるよりも
有意義なことがあるはずだ」
†
(……何がなんだか
わからないけど
絶対ヤバイ……!)
揺らめく松明の灯りに
照らされる地下遺跡。
石造りの祭壇。
金の皿に載った
まがまがしき供物。
生首と果てた王子二人。
生前の
軽薄な笑顔との落差。
ダナは
眼前のおぞましき光景に
打ちのめされ、
しばし呆然とする。
(……とりあえず戻るか。
穴から出られなくても、
ここよりはマシなはず。
それに、
もしかしたら、
ジミーが
助けに来てくれる
かもしれないし)
ダナは能う限り慎重に、
音を立てぬよう後ずさる。
それでも、
恐怖から過敏になった聴覚は、
自らの心音さえ
大きすぎるように
感じさせる。
そして、
別種の物音も
聞こえてくる。
静寂を心がけて行動する
ダナ自身は、
決して
立てるはずもない音が。
「「「「「Shhhhh!」」」」」
「ひ! ぅ……!」
漆黒のコブラ! 多数!
ダナと同じ縦穴から
這い込んできたものか!?
「Shh!」
(うっわわわわ!)
コブラの一匹が毒吐き!
ダナ跳躍回避!
穴の先へ!
「Shh!」
別のコブラが毒吐き!
ダナは跳躍回避!
結果、
穴より飛び出す!
「あっ!? わ……!」
ダナは宙でもがく!
石造りの大広間へ!
CRASH!
石の床に着地!
衝撃が
痛みとなって走る!
しかし、
さしたる高さでは
なかったために、
骨折など
重傷を負うことは
避けられた。
「……おや……客人であるか……?」
「「「「「Shhhhhhhhhhh!!」」」」」
ベワマゲイが
ダナを見てつぶやく。
同時に、
足下に侍るコブラたちが
ダナをにらむ!
「ひっ……!」
コブラと、
コブラの王の瞳は
金色にあやしく輝いた。
拝啓 読者諸賢をはじめとする関係各位
平素よりの『デカパイギャル軍団~』ご愛読、まことにありがとうございます。
さて、このたび完結への道筋が大方つきましたので、報告させていただきます。
残り数日も、何卒ご高覧のほどをよろしくお願いいたします。
ご自愛くださいませ。
敬具




