新生! 王子とデカパイギャル軍団!
「わ、ブリッジ。
戻ってきたんだね」
ブリジットの姿を見て、
すずりは残心を終え、
声をかける。
「すずりちゃんもブリッジも、
無事で何よりだ」
「すずりちゃん! フレイヤ~♡
また二人に会えてうれしいわ」
「……ところでブリッジ、
どうやって拘束を?」
ジャングルを猛進し、
突撃射撃を行ったブリジット。
その細い手足には、
鎖の切れた手錠さえ
ついていなかった。
「不良品だったみたい♡
一度転んで、
私がマジ切れしたら壊れちゃった」
「ツイてるね」
「……ああ、まったくだ。
ダナは?
いっしょじゃないのか」
「私たち、
別々の方向に逃げたから……
そう聞くってことは、
フレイヤも知らないのね。
すずりちゃんは
ダナ見てない?」
「私も見かけてないや」
「では、
後で探すとしよう。
……まずは両殿下の安否確認だな。
我々の戦力では、
他の手段はなかったとはいえ、
少々、
いや、わりとかなり――
手荒な救出作戦だったからな」
†
「――リウメロエ姫殿下。
そしてルナアイナニ殿下。
突然のお声がけ、失礼奉る。
ですが緊急事態ですので、
ご寛恕のほどを。
私はフレイヤ・ゲヴァルドラッヘ。
大逆の濡れ衣を着せられるまでは、
インターポールからの出向として、
警視の位にありました。
私たちは
両殿下を救出に参りました。
意識がおありならば、
どうかお返事をたまわりたい」
護送車の天井だった場所に、
うずくまる王女リウメロエ。
王子ルナアイナニを
かばうように覆いかぶさる
その背中に、
身をかがめたフレイヤが
クザッツ語で話しかける。
「……ぴぇ、はい。……ぅ」
「……救出、と申しましたか」
まずルナアイナニが
気力をふりしぼった涙声で答え、
リウメロエが続いて応じる。
「……そなたの
クザッツ語はあやまりです。
御料車を横転させて、
フロントガラスをたたき割ることを
〝救出〟とは言いません」
リウメロエは身を起こし、
弟をかばい続けたまま、
堂々とのたまう。
「不敬は謝罪いたします。
しかし、
冤罪で両殿下を連行することや、
それを看過することと比べても、
なお重き罪であるでしょうか?」
「!」
リウメロエの目が動く。
クーデター容疑の真実に
気づいていることの驚きか。
あるいは
図星を突かれたためか。
「ね、すずりちゃん。
何話してるかわかる?」
「私のクザッツ語力じゃ無理。
でも、
嫌味を言い合ってるっぽくない?」
「私もそう思う♡」
「……私も
英語くらいわかります。
キラナニカパパイ家を
侮ってはなりませんよ、
異国人ども」
「わあ良かった。
話が速いわ。
あのねプリンセス、
私たち、
あなたの親戚の王子さま二人を
殺したりなんてしてないのよ。
だから友達になりましょう?」
「めちゃくちゃフレンドリーだね……
でも、
ブリッジはそういう子だよなあ」
「……救出の手荒さも、
彼女たちの無遠慮も、
まとめて
謝罪させていただきたい、姫殿下。
ですがご理解のほどを。
我々は、
決してあなた方を
害するつもりはありません」
「そなたらの
直截な口のききようは
気になりません。
……しかし、
ルナアイナニ殿下を
傷つけたことは許さぬ!
害するつもりがない、
などどよくも――」
「リウメロエ、め。」
激昂してまくしたてる姉に、
ルナアイナニは穏やかに言う。
「このものは、
ぼくたちを
たすけにきてくれたのでしょう?
いいですか、
リウメロエ。
なにかをしてもらったら、
れいをいうものです」
普段の口調を真似して、
ルナアイナニは姉を言い諭す。
「――ありがとう。
えらいです」
そして手を伸ばし、
膝をつくフレイヤの頭をなでる。
「わぁ♡
王子さま、とってもいい子ね」
「ちいさい子に撫でられながら
不動の知人を眺めるのって
なんかシュール……」
「……ルナアイナニ。
けれど、
あんなに泣いていたのに。
こわかったでしょう?
どこか、
ケガをしているのでは
ありませんか?
リウメロエにお見せなさい、
ルナアイナニ」
勝手なコメントをする
二人に取り合わず、
リウメロエは
ルナアイナニに呼びかける。
弟のちいさな身体を抱き上げ、
全身を見て確かめる。
「ぼくはへいきです。
リウメロエ」
「でも、ルナアイナニ。
……ルナアイナニ殿下は、
あんなに
御心気を乱されたのに……!」
「ぼくはへいきです、
リウメロエ。
リウメロエがこわくても、
ぼくがいます」
「ああ! ルナアイナニ!
ルナアイナニ殿下は、
なんと心優しきお方でしょう!
ルナアイナニ!
ああルナアイナニ……!」
リウメロエは
最愛の弟を抱きしめる。
涙が出そうな思いだった。
ルナアイナニは
今もちいさい。
しかし
日ごとに大きくなっている。
こわい目に遭った直後でも、
他者を思いやることができるように
なっているのだった。
「……ルナアイナニ殿下の、
聖なる思いやりを
無駄にせぬために、
私は、
そなたらの謝罪を
受け入れましょう」
「ありがたき幸せです、
姫殿下」
「助けられといて
めちゃくちゃ上から目線ね、
プリンセスったら」
「ブリッジ!
そういうこと
思ってても言わないでよ。
せっかく、
いい感じに話が
まとまりそうなのに。
実際えらいんだから、
ちょっとぐらいいいじゃんよ」
「……私は、
自らの思うままにふるまいます。
そなたらもそうなさい。
不敬が過ぎるようなら、
罰を下して教えますから」
「ふうん。
それじゃよろしくね、
リウメロエ、
ルナアイナニ♡
私はブリジット・ブロンデア」
ブリジットは言って、
二人に笑いかける。
「?」
英語はわからぬながら、
名前を呼ばれた
ルナアイナニは、
クザッツ上流階級伝統の
組み手挨拶を返した。
「かわいいダンスね~♡」
「あのなブリッジ、それは――」
「愚か者は
放っておきましょう。
それで、
フレイヤ警視。
そなたらの要求は何ですか」
「はっ、私としては、
姫殿下にクーデターを御完遂いただき、
御即位あそばされたく思います」
いつもありがとうございます。




