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闇の中へ



 闇の中を、ダナは落ちていく。


 CRASH! 着地した。


「いっつ!」


 ダナは言った。


 日常において痛みを訴えるのと、

 さして変わらぬ語調で。


 腐葉土と木々の枝葉が、

 厚く降り積もっており、

 穴の底はやわらかい。


 ダナはそこに

 胸の高さまで埋もれている形だ。


 落下距離からすれば

 信じがたいほどに、

 着地の衝撃は小さかった。


「……びっくりした。

 まさか、コブラから逃げたら

 穴に落ちるとは……」


 逃げるとき、

 ダナの頭には

 コブラへの恐怖しかなかった。


 そのため、

 草に隠された足など

 何ら確かめずに跳躍した。


 結果、縦穴に落ち、

 ジャングルから

 不意に消失することとなったのだ。


「おーい、ジミー!

 なんか穴に落ちちゃった。

 さっきのロープを垂らしてくんない!?」


 遥か上方の点となった、

 縦穴の入り口に向けてダナは声を張る。


 穴の中で反響し、

 声は奇妙に聞こえた。


 しばらく待つ。


 返事はない。


 ロープの垂れてくる気配もない。


「おーい、ジミー!」


 ダナは再び声を張る。


 返事はない。


 三度、

 そしてさらに声を張ってみる。


 それでも、

 何の音沙汰もなかった。


「ジミー……!

 クソ、こりゃだめっぽいな……」


 ダナは縦穴の側面を殴る。


 その振動も、

 誰かへのメッセージとなることはなかった。


 さて、どうすべきだろうか?


 ダナは自身に問いかける。


(1、救助を待つ。


 2、自力で登ってみる。


 3、この穴が他所に通じていないか調べる。


 まあこんなところだよな……)


 穴の中は暗い。


 上から漏れ出ずる外の光のため、

 まったくの暗闇というわけではない。


 しかし、

 人間の目には

 ほとんどそれと変わらぬ暗さだ。


「スマホのライト、

 は、ないんだったな……」


 ダナの持ち物は何もないに等しい。


 ホテルで拘束されたとき、

 財布やスマートフォンなども

 没収されたらしかった。


「どんなもんかね、この穴……

 お?」


 壁をなぞっていたダナの手が、

 ふと空を切る。


 横穴につながっているらしい。


「まあ、

 助けが来たら声ぐらいかけるだろうし、

 ちょっとだけ入ってみよう」


 ダナは枝葉と腐葉土に埋もれた身を

 ひっぱりだし、横穴へ。


 手をゆらゆらさせて

 探りを入れながら、

 闇の中を進んでいく。




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