銃はすべてを解決する
「うわーっ!
ちくしょーッ!」
「Gya-Shhhh! Gya――!?」
BAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAANG!
フルオート射撃!
アサルトライフル弾多数命中!
銃弾がイワンコブラの鱗を! 骨肉を!
穿ち!
こそぎ!
吹きとばす!
「Sh、Shh……」
腐臭を上げる体液を撒き散らし!
怪物はその場に倒れた!
そして、
もはやピクリとも動かない。
両手のコブラともども。
「た、助かった……!?」
ダナはそう思いかける。
否。
そう都合よく、
銃を持った助けが
無人のジャングルに
現れることなどありえない。
この密林の中で
銃を持った人間がいるとすれば、
それは
あの親衛隊員たちに他ならない。
逃げたダナとブリジットを追って
彼らは密林へ分け入り、
虜囚の代わりに怪物を発見。
身を守るため、
あるいは根源的な恐怖のために
反射的に攻撃した。
そんなところだろう。
「に、逃げなきゃ……」
邪悪な怪物が死んだとしても、
ダナが追われる身であることに
変わりはなかった。
ダナは腹ばいになって進み、
怪物の死体から距離を取る。
立ち上がって歩くことも考えたが、
今は丈高い草がダナの姿を隠している。
ひょっとすると、
ダナがここにいることは
まだ気づかれてはいないかもしれない。
そう考えると、
みすみす姿を晒してしまう気には
なれなかった。
立って走ったところで、
足錠の鎖のために
さしたる速さは出ないのだし。
「……行かないでくれ、ダナ」
「えっ!? はい」
後方から不意にかけられた声は、
投降を呼びかける
親衛隊員のものではなかった。
反射的に、
ダナは応じてしまう。
そしてその場に立ち上がり、
声の方へ振り返る。
「いや、行ってくれてもいい。
君のしたいようにしてくれ、ダナ」
探検家風のリュックサックを背負い、
年代物のアサルトライフルを携えた男。
ジミーが、
どことなくすまなそうに立っていた。
「ジミー!?
なんでこんなところに……」
「話すと長い。
君たちとホテルで別れた後、
ヤバそうな奴らがいっぱい来たんだ。
通報する間もなく、
俺は警察にホテルの外へ追い出された。
それから、
君らの無事を知るニュースでもないかと
スマホをいじっていたら、
王子殺しで捕まった
って言うじゃないか。
しかも今日中に死刑だって!」
「あー、
やっぱそんな感じになってたんだ……」
「俺は君たちの無実を説きに
警察へ行ったさ。
でも取り付く島もない。
仕方がないから、
銃を密売人から買って、
噂だよりにやってきた
って言う訳さ。
気休めぐらいのつもりだったが、
まさか本当に
君を助けられるなんて!」
「うん、
助けてくれてありがとう、ジミー」
「君が無事で良かった。
……それから、ダナ。
ホテルでのことを謝らせてくれるか?
俺は薬物におびえないタフガイを気取りたくて、
ついあんなことを言ってしまった。
ごめん」
「……そう言われちゃうと、
私はジミーが心配になってくるな。
あのとき、
みんなからわりといい打撃もらってたっぽいけど、
大丈夫だった?」
「ああ、この通りさ
……ところで、他の三人はどうしたんだ?」
「わかんない。
ちょっと見張りに隙が出来たらしく、
ケンカの強い二人が抵抗を始めてね。
私とブリッジはそれぞれ違う方向に逃げて、
追手を分散させようとしてたら、
今のモンスターが出てきて……
あれ何だったんだろう?
ほんとに大家野郎だったのかな……
てか地球の生き物っぽくなかったし……」
「俺にもわからん。
けど、体験したことが全てさ。
とりあえず彼女らを探さないか?」
「だね。
あんなモンスターがいるとなると、
追手に見つからなくても危ないし……」
二人は歩き出す。
歩幅を鎖で制限されたダナは、
ジミーに大きく遅れる。
「ねえジミー、
何か手錠を壊せそうなモノ持ってない?
すげえ動きづらいんだけど」
「おっと、そうだよな。
よし、銃でふっ飛ばそう」
「いや、それはやめとこうよ。
弾が跳ねて危ないもの。
そのリュックの中に、
使えそうなものが入ってないかな」
登山用のロープとセットになった、
鋼鉄製のハーケン。
それを鎖の輪の中に打ち込み、
輪の形を歪ませる。
歪に広がった輪に
複数のハーケンをまとめて打ち込み、
さらなる負荷をかける。
しばらく作業を続け、
ついに金属疲労で鎖が破断する。
「やった!
ありがとうジミー!」
「HAHA、お安い御用さ、ダナ。
さあ、つぎは足の鎖だ」
同様の作業を経て、
ダナはついに自由になる!
「うおお……!
手足が自由に動かせるって
すばらしいね……!」
「ああ、良かった。
しかし結構な時間を喰ってしまった。
音も遠くまで聞こえたことだろう。
急ごう。
ブロンデアはどっちへ行ったんだ?」
「え、えーと、
ブリッジはあのときああ行って、
私はこう逃げたわけだから、
……待って私まだ考えてる……
方面的にはあっちらへん?
その後ブリッジがどこに行ったかはわからないけど」
「よし、
とりあえずそっちへ行ってみよう」
†
「……練度が足らんな」
「おかげさまで助かったけどね」
親衛隊員ら全滅!
熱帯の木々の下、
フレイヤとすずりは残心する。
「では、二人を探しに行くとしよう。
異論はあるか、すずりちゃん?」
「……待ってフレイヤ。
誰か来るみたい」
ささやくように言って、
すずりは歩いてきた方を指す。
二人は、
ジャングルの茂みに這い込んだ。
いつもありがとうございます。




