ソーシャルハックに気をつけろ!
「Hi、ブリッジ。ちょっと聞いて、えらいこっちゃだぜ、もう」
アパートに帰宅したダナ・ダグラソンは、丁重に戸締り。
そして、床に寝転ぶルームメイトのブリジット・ブロンデアの金髪をかき上げて耳を出し、ささやく。
「当てちゃった、ジャックポット!
溜めてる家賃払ってもかなりのお金が残るよ!」
「わあ♡ おめでとう、ダナ。
私も、あなたのクレジットカードで限度額まで買い物したところなの。
本当にすばらしいタイミングね!」
「何してんのお前――!?」
ダナは叫ぶ。
現代の建築基準を満たせなくなった老朽アパートは、音エネルギーに揺れる。
「今年のお洋服を買ったり、バカンスの予定を立てたり。
ダナ、あなたのぶんもね♡」
「ありがと、ブリッジ」
「どういたしまして」
「いやそうじゃなくてさあ! マジで何してくれやがんの!?」
ダナはジーンズのポケットからスマホを取り出し、明細を確かめにかかる。
ロック解除がうまくいかない。
臨時収入の希望から、経済的打撃への急降下爆撃。
精神的ショックが指に現れていた。
「ごめん、なさい。私が悪かったのね。全面的に」
潤むブルーの瞳を上目遣いにし、床に座ったブリジットは、震える声をしぼり出す。
「……でも、あなただっていけないのよ? ダナ。
せっかくの休日に、私を一人にして外出してしまうのだもの。
私、さびしくて耐えられなかった。それで、あなたのPCとパスワード管理アプリをついハックしてしまったの」
「浮気の言いわけとかならまだわかんだけどなあ……いや、むしろありがちか?
メールチェックとかのためのソーシャルハックと考えると……」
「そしたらダナが、惨死すべきファック野郎ジミーの誕生日とイニシャルの組み合わせを、パスワードに使っているのに気づいてしまったじゃない?
私、もういっぱいいっぱいになっちゃって――」
「わ、わかった! もういい! もういいから、ジミーのことは忘れとけ!」
「……許して、くれるの? ダナ」
「いいよ。……良くないけど、致命的じゃあないからね」
ブリジットの使った合計金額と、滞納した家賃の総額。
それらを差し引いた後も、ダナの得た当選金は、わずかばかり残っている。
「与太話はともあれ、ブリッジと休日を過ごしたかったのは私も一緒だよ。
ちょっと遅いけど、公園まで散歩に行こう。
そこで深夜営業のケバブかなんかを喰って、あぶく銭使い切っちまおうぜ」
ダナはブリジットに向けて手を差し出す。
ぱっと顔をほころばせて、ブリジットはダナの手を取った。
完結および毎日更新を目標にしたいなあと思います




